092.例のアレ
昨日は寝落ちしていません。ただ、眠たかったから早めに寝ました。
そのため、いつにも増して寝起きは良いのですが、案の定、遅れました。
どうも、オークです。
レミオラさんに猛獣がいる部屋に閉じ込められてしまいました。
あの後、狭い部屋の中で鬼ごっこした末、あえなく捕まってしまい、アレをされました。
しかし、アレとはみなさんが期待するようなものではありませんでした。
ただ、透明な液体を顔に塗られて、「こうすれば、万が一、会った時も大丈夫だな」と勝手に満足されました。
これのどこがアレなんですか! ただの美容液とか保湿クリームを塗っただけじゃないんですか!
勝手に満足して恍惚の笑みを浮かべる猛獣さんを見たからなのか知りませんが、みなさんのようにどこか勘違いを起こしていた本邸のメイドさんたちがいきなり部屋の中に入ってきて、僕を縛り上げました。
「お嬢様が“ピー”するのを見られる機会は無いと思っていたので、オークで我慢しようと思っていたのですが、やはり、こういうのは見たくなかったので縛り上げました」
と、一人のメイドさんが涙を流しながら、ご丁寧に部屋を覗いていたことを説明してくれました。
いやいや、それなら、僕の顔に怪しい液体を塗っているところから止めてくださいよ! あのとき、本当に襲われるんじゃないかって思っていたんですよ!
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次の日。
僕は片言メイドのミカエラさんにメイクしてもらっていました。
犬さんの散歩をしないといけませんからね。
昨日、外を歩いたものですから犬さんが庭では満足しないようなのです。
ここの庭もとっても広くて迷子になりそうですが、犬さんはそれ以上に広い場所が好きなのでしょうか?
僕も人のいる街を堂々と歩けるこの好機を見逃したくはありません。
そういうことで、彼女の部屋の前で土下座して頼み込むこと二時間、ようやく彼女にメイクしてもらうことになったのです。
しかし、どうしてなのか分かりませんが、まったくスライムがつかないのです。
このまま、スライムがつかなかったら、僕は人になれないじゃないですか!
「うーむ。まったくスライムがつきませんね。何か怪しいリキッドでもフェイスにペイントしましたか?」
「そういえば、昨日、お嬢様に変な透明な液体を塗られました」
すると、突然、ミカエラさんが立ち上がって、後片付けを始めました。
「ちょっと待ってください! 僕を人にしてくれるんじゃなかったのですか!」
「いえ、ミーはあくまであなたのフェイスにピクチャーをドローしていただけです。どうやっても、ピッグはヒューマンにはなれませんよ」
「えっ! そんな……。じゃあ、誰が犬さんの散歩に付き合うんですか!」
「他の者に任せます」
「待ってー! 僕、かぼちゃ料理以外の屋台の食べ物が食べたかったんだ!」
「このフェスティバルの間はパンプキンをユーズしたフードでないと屋台に出せない決まりになっていますよ」
「誰がそんなことを決めたんだ!」
そんなわけで僕は外に出られなくなってしまったのです。
まったくひどいものです。僕は檻の中の豚ですか?
まさか、僕とデートができないのであれば、僕も外に出さなければいいと思ったのでしょうか?
だから、レイラさんは僕の顔にメイクができないようにしたのか!
ひどい! ひどすぎますよ!
「そうだな。この屋敷のお嬢様は実にひどい女だ。あれはもはや人ではない」
「そうですよ! あんなのが人であっていいはずがありません。たぶん、人の皮を被ったゴリラかなんかですよ」
「そうだな。なにしろ、お前をこうして屋敷の中に置いておくのだからな。それのどこが正しいことなのか?」
「ちょっと待ってください。あなたは誰、ぴぎゃぁぁぁああ!」
どうしてこんなところに骸骨の仮装をした人がいるんですか!
今は某国の仮装祭ではなく、異世界の収穫祭ですよ!
次回も明後日更新予定です。




