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009.竜騎士vsオークwith大隊長(笑)


「そういえば、そこにいるスケルトンはいったい誰なのか?」


 空飛ぶ黒い大蜥蜴にまたがった女騎士さんは不思議そうに大隊長(笑)を見つめています。


「スケルトンではない! 吾輩は吸血鬼だ!」

「いや、僕はスケルトンの方が似合っていると思いますけどね。──ほら、見た目的に」

「それはいくら何でも許されないぞ! おい、オーク! 吾輩のオーラからも吸血鬼であることは明白だろう? なのに、なぜ分からないのだ!」

「すみません。オーラなんてそんなの知りませんよ。──そんなことよりもあの人達をなんとしてでも退けなければなりませんね」

「──オーラを知らないのに、この強さはなぜなんだ?」

「それより今の状況をどうすればいいのか考えてくれませんかね?」


 さっきからオーラ、オーラって何ですか?

 それを知らなかったら、悪いんですか?

 そんなことよりも、今の状況をどうにかするべきでしょ。


「──ま、まぁ、吾輩からしたら、最悪の状態を目の当たりにしているぞ。『黒龍』と『自動殺戮機械オートキリングマシーン』が手を組むなんて……。いくらなんでもあり得ないぞ」

「さっきから言っているその『自動殺戮機械オートキリングマシーン』って何なんですか? ──って、なんですか? 槍?」


 僕が隣の人と話し合っていると、いきなり何かが僕たちの間に降ってきたのです。


 ──槍、ですね。

 なんだか禍々しいものが感じられるのですが……。


「お、乙女の秘密は聞かぬのが、男というものだぞ! オーク殿」

「乙女の秘密を聞かないって、これはあくまで純粋な興味ですよ。『自動殺戮機械オートキリングマシーン』様! ──って、なんでこんなにどんどん槍が降ってくるの?!」

「貴様、火に油を注ぐな!」


 どうしてあなたがそんなに焦るんですか?

 大隊長(笑)の癖に。


 ──あっ、そうですか。魔王軍のネタ枠だから弱いんですよねー。

だから、そんなに焦っているのですか。納得しました。


「そんなこと言われても、気になるものは気になるじゃないですか。──それに、あなたが最初に言いだしたのですよ」


「あぁ、もう羨ましい! ま、まさか、オーク殿がそこのほぼ骨しかないスケルトンとできていただなんて……。本当に残念だ。──だから、わたしは見向きもされないのだな」

「僕に男色の気なんてありますか! それに、この人は僕のストーカーですよ!」


 いやぁ、男色の気があるという誤解を解くために言っておきますが、僕は女性が好きですよ。

 ただ、ちょっと怖くて近寄れないだけです。


 それにしても、ほぼ骨だけって……。なんてかわいそうな人なんでしょうか。


「な、何を言うか?! 吾輩にもそのような特殊な趣味など持ち合わせてはおらぬ! それに、お前!」

「なんですか? ストーカー1号?」


 まずは彼女のスケルトン発言について何らかの批判はないのですか?

 ──無いのですね。


 ──ところで、ストーカー1号とかなんとか言っているけど何なの? とお思いの方がいることでしょう。


 これはそのままの意味ですよ。


 僕には少なくとも5人のストーカーがいます。


 まぁ、一部は人と数えるべきなのか知りませんが、今日は尺の都合上彼らの紹介は割愛します。


 ちなみに今日言えることとすれば、今空を飛んでいるお二方はその中に入りますよ。


「吾輩は断じてストーカー1号とかそのようなものではない! 吾輩は魔王軍第7だい「もういいですから」──話は最後まで聞け!!」


 はぁ、何言っているんですか。どうして僕があなたの話を聞かなくちゃいけないんですかね?

 まぁ、あなたがこんなオークのストーカーだということがばれたら、恥ずかし以外の何物でもありませんからね。

 ──ただし、僕からすれば迷惑以外の何物でもありませんがね……。


「──あぁ、あのスケルトンがうらやまけしからん! ──そうだ! あの忌々しい骨をこの槍で一思いに突き刺せばオーク殿の関心がわたしの方に向くのでは? ぐふふふ、楽しみだ」

「──ねぇ、この人、未だにあなたのことをスケルトンとか骨とか言っちゃっていますよ」

「だから、吾輩は由緒正しき吸血鬼の一族ロストブラッド家が当主であり、まお「だから、もういいですからそのくだり」──話は最後まで聞け! ──って、なんだ? 槍がだんだんこっちの方に向かってきているような気がするのだが?」

「いいじゃないですか。それは彼女の愛ですよ。──それもあなたへの」

「それは違う! あれは明らかに親の敵に向ける目だ! ──上を見ろ!」

「上って? ──あぁ、そういうことですか」

「$%&”$#&”%””#$」


 もはや彼女に言語能力が失われたのでしょうか?

 いつの間にか彼女は槍を降らせる装置になっていました。

 それになんか目つきが怖いですね。

 むしろ執念を感じます。


 いや、見たところ僕たちに投げつけるほどのたくさんの槍を持っているような気がしますが、いったいどこに隠し持っているのでしょうか?


 ──はっ、まさか、あの有名な4次元「なんか、不穏なことを考えている気がするのだが?」


「1号。うるさいので、黙ってください」

「吾輩にはちゃんとクオーツェルという立派な名前がある!」

「すみません。僕は今の今まで知りませんでした」

「嘘つけ!」


 別に嘘じゃありませんよ。


 その、──クオークさんでしたっけ?


 その人はたしか、治療不可能な心の病(笑)を抱えた悲しい人じゃないですか。

 普通は時間が癒してくれるはずなのですが、二百年以上も生きているくせに未だに治っていないんですからね。


 ──あぁ、本当にかわいそうな人。


「なんだ。その目は! いい加減、やめろ!」


 その目とは何でしょう?

 僕はあくまで向こうの小鳥を眺めていただけですよ。そこに偶然あなたが割り込んできただけでしょう?


 それに、今まで黙っていた彼(黒龍と呼ばれていましたね。なんか通り名でしょうか?)が何かしようとしていますね。


「そんなことしている場合じゃありませんよ。──いよいよ、彼の方も何かしかけてくるようですよ」

「さっきから何を言っているんだ? オーク。──な、何だ!」

『BUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!』


 ──なんですか!

 いきなりこのブレスは!

 山火事を起こす気ですか? 山火事を!!


 普段ならとっくに山火事を頻発させていたはずのあなたが、槍を降らせる機械が槍を降らせているのをおとなしく黙ってみているので、ちょっと褒めてあげようと思っていたのに!


「──って、1号――――――!!!」


 僕は空に向かって大ジャンプしてなんとか避けきれたのですが、1号がブレスの餌食になりました。


 別に悲しくはないのですが……。──いて言うなら、盾が一枚減ってちょっとショックです。

 そういえば、吸血鬼って燃えたらどうなるんでしょう?

 ちょっと気になりますね。


 けれど、そんなことも思っていられないようですね。


「──さて、邪魔者はいなくなった! さぁ、オーク殿! 一緒に愛の巣へ帰ろうではないか!!」


 空の上にいる変態さんが僕を狙っていますからね。


「すみません。何を言っているのかまったく分かりません」

「なかなか辛辣~! ──まぁ、いい。オーク殿がそういうのなら、“ボボッ(火が付く音)”! オーク殿を協力して生け捕りにしようではないか!」

『GYAOOOOOOO!』


 一瞬、僕の背筋が凍りました。


「すみません。彼の名前は“ボボッ”だったのですか?」


 いきなり、何聞いているんだと思ったそこのあなた。


 確かに僕は最初、──僕が彼女を拒絶する旨を言ったらくねくねするのをやめてほしい! と、言おうとしていました。

 しかし、それ以上にどうしても気になったことがあったんですよ。


 彼になんてひどい名前を付けたんですか!


 いくらなんでも“ボボッ”なんてひどいじゃないですか!

 僕がそんなあだ名を付けられたなら、引きこもりのニートになってしまいますよ。


 ところで、彼は果たして“ボボッ”の意味を理解して喜んでいるのでしょうか?


 ──僕にはまったく分かりません。


「いや、わたしが友誼ゆうぎの証に渡した名だ。いい名だろ? “ボボッ”?」


 ──さすがにそれはないでしょ~。


 ただし、ここで“ボボッ”の本当の意味を言うと、彼とあの変態人間兵器の間にあった脆い友誼が崩壊して、怪獣大戦争が勃発してしまいますので控えることにしましょう。


 本当にさすがに名前にそれはないでしょ。

 迷子の子猫ちゃん(深読みしないでください。そのままの意味です)に“ピー、ピ、ピッ”って名前を付けるくらい同じかんじですよ。


 ──分かりにくい?


 そこがこの話の醍醐味ですよ。


「──さて、これからどうしましょうか? さすがに一人でこの手遅れなバカでどうしようもない変態を処理しきれませんし」

「今なんといった! 今!」

『GYAOOOOOOO!』


 どうして、あなたたちはそんなに怒っているのでしょうか?

 僕には分らないなぁ(棒)。


「さて、これからどうしましょうか?」

「違う!」

『GYAOU!』

「処理しきれませんし?」

「もっと前!」

『GYAOU!』


 あれ?


「いや、気づいているでしょ。二人とも」


 どうして、そんなに僕にしつこく聞いてくるのでしょうか。

 気持ち悪いです。


 知っているくせに、何度も何度も聞いてくるんですから。


 まったくウザいっていうのはこういう人たちのことなんですね。


「いやぁ、聞き間違えだったらどうしようかと思っただけだ。──なぁ、“ボボッ”?」

『GYAOU!』


 さっきから『GYAOU!』しか言ってませんね、彼。

 喋れないのは分かりますが、バリエーションを増やしてくれませんかね? バリエーション。


 別に僕が楽したいから彼の台詞をそう言っているわけではありませんよ。

 嘘じゃありません。


 しかし、本当に困りましたね。いったいどうす「おい、オーク! 久しぶりだなぁ! 元気にしてたか? 約束の洞穴にいなかったから探したぞ!」


 ………………。


 ──はっ、忘れていました! 今日は月に1回の友人との親睦会でした!


「しかし、オークこれはいったいどういうことだ? 山火事寸前だし、本当にここ大丈夫か? これなら、本当に王都の近くの山に移った方がいいんじゃないのか? ──はっ、あんなところにドラゴンがいる!」

『GYAOU!?』


 おぉ、友よ。ドラゴンをそんな目では見てはいけません。


 食料として食べたいのならまだ分かります。


 ──まぁ、一度だけ偶然・・、彼の同種の死体が転がっていたので、食べたことがありますが、食えたもんじゃないですよ。ゴムを焼いたような感じの味がしましたよ。


 そんなことよりも、──クインブル氏。その目はとても恐ろしくてたまりません。


 まるで彼に何かイケナイことをしようとしている変質者の目にしか見えませんよ。


「なんでこんなところにドラゴンがいるんだよ!? ひょっとして、俺へのおみやげか? なかなか気が利くじゃねぇか。ドラゴンはどこを使ってもいい装備が作れるからな。肉はそのまま食えるし、血はポーションに、牙は剣に、鱗は盾に……。──あぁ、どんな装備を作ろうかな?」

『GYAOU?!』

「空を飛んでいるドラゴンがお土産なわけないでしょ。──それに、そのドラゴンがひいているのでこれ以上はやめてください」


 頭が小鳥並みのかわいそうな頭脳をしている彼にさえ、僕の友人のすばらし(い恐ろし)さを理解するのですから。


 本当にさすが、僕の友人です。


 ──言っておきますが、()の中身に関して指摘しないでくださいね。

 僕はあくまで彼のことを褒め称えているのですよ。


 こいつはどうしようもない変人じゃないのか、ですって?


 いやだなぁ……。彼と一緒にいると、いろいろ面白いことがあるんですよ。

 この理不尽な世界の中で一つの楽しみと言ってもいいでしょう。


 ただし、月に1度で十分です。毎日はごめんです。


「そりゃそうだな。──じゃあ、二人で退治しようか!」

『GYAOU!?』

「そうしましょう……と言いたいところですが、彼はあの女騎士様の友人でして……。 あれ? 女騎士様? どうしました? さっきから黙ってばかりですが……。──それにクインブル氏。あなたもどうしてわなわな震えているのですか?」

「──お嬢さん!!!」

「ひっ!」


 どういうことでしょうか!

 僕の友人が血相を変えて、喜んでいるのに対して彼女はとても引いています。

 まるで、僕と彼女の関係のようですね。


 ──勿論、僕が彼女で、彼女が僕の友人の立ち位置ですけど。

 分かりにくかったら申し訳ありませんね。


「いやぁ、まさかここでまた会えるとは……。──いやはや、オークと友達でよかった」


 彼はいったん、心を落ち着かせてから意を決してこう叫んだのです。


「お嬢さん、わしと結婚してくださーい!」


 ほう、ここで早速プロポーズといきますか。

 なかなか積極的ですね。


 さて、彼女の方は……。

 なんかひくひくしていますが、これはどういうことでしょう?


「いやぁぁぁ――――――――!」

『GYAOU?!』


 突然、彼らは空を飛んで去っていきました。

 ──いや、彼女の方が逃げたのですかね?

 ドラゴンの方は少し不服そうでしたしね。


 まぁ、今日も彼女から逃げきれてよかったです。


 それにしても、──なんか相当、嫌われていますね、友よ。


 あれ?


 おーい!


 どうしたんですか?


 目を覚ましてくださーい!


 …………。


 ──まさか、立ったまま死んでいる?!


次回、010.オークとドワーフ

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