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083.新たな密偵(メイド)

 

 どうも、オークです。


 余命宣告受けているオークです。


 気づいたら、残り4日でした。


 お兄様方を飛ばした後、思い出しました。


 おじいさんのお世話があまりにも嫌で忘れたかったんだと思います。だから、つい忘れちゃったのでしょう。


 あぁ、死ぬのは嫌だな。せめて、“ピー”とか“ズドーン”とかしたかったものです。


 さて、お兄様方を飛ばした後、僕はあの変態お嬢様Rさんに襲われそうになりましたが、メイドさんたちに助けてもらい、なんとか逃げ切ることに成功しました。


 ふーぅ。なんとか生き延びることができました。


 余命宣告は嫌ですが、余命宣告よりも前に死ぬのはもっと嫌です。もっとも、老衰で死にたい僕からすれば、どちらも嫌なんですけどね!


 そう思いながら歩いていると、僕は懐かしいあの人とすれ違いました。


 どうしましょう? これは声をかけるべきなのでしょうか? 仕事中だと言われても困りますしね。


 できれば、抱きついて頬擦りしたいものですが、セクハラと言われたら、心が折れますし。


 あぁ、急に話しかけたくなくなりました。


「あなたは下賤な豚ではないですか」


 なんとレミオラさんの方から話しかけてくれました。


 これは嬉しいものですね。


 いつもなら、居ないものとして扱われるのに、今日は話しかけてくれるなんて。やっぱり死期が近づいているのでしょうかね。


「どうもあなたの豚です! さぁ、何を致しましょう? “ピー”ですか? “カラカラン”ですか? それとも“カランコロン”ですか?」

「さっきから卑猥なことしか言ってませんし、頬擦りしないでください。セクハラでお嬢様に訴えますよ」

「すみません! それだけは! それだけはおやめください!」


 あの変態様にそのことがバレたら、手加減のない頬擦りをされて僕の首がギロチンで飛ばされるよりも先に再起不能になってしまいますよ!


「まぁ、いいでしょう。まさか、こんなことになるとは思ってもいませんでしたが、話したいことがあるのでこちらに来てください」

「それは僕たちの今後についてでしょうか?」

「あなたの思っている事とは大分かけ離れていると思いますが、そのことについてです」


 かけ離れている? それって期待しちゃっていいのでしょうか? いいんでしょうね! じゃあ、僕の方から行きますよ!


「きゃー! こないで! オーク退散!」

「サキュバスのあなたがオーク退散なんて言っていいんですか!」

「いや、オークは女の敵ですよ。言っても問題はありませんよ」

「そ、そんな!」

「さて、こちらにどうぞ。一応、紹介しておきたい者がいるので」


 彼女に促されるまま、僕はある一室に入りました。


 そこには犬耳メイドが涎を垂らしながら、夢の中に旅立っていました。


 そういえば、前にもとある勇者がケモ耳の少女たちを連れていましたね。この世界では案外ポピュラーな存在なのでしょうか? まぁ、あの屋敷では見たことないんですけどね! 少しは需要とかも考えた方がいいですよ! メイド長さん!


「こら! 起きなさい!」

「わふーん!」


 鳴き声が犬だ! 見た目は人なのに、犬だ!


「彼女は犬です。あなたの側付きになりました」

「えーっと、それは犬耳とかじゃなくて」

「はじめまして。犬です。オーク様!」


 こらこら! 舐めない! 頬擦りしない! 目覚めてはいけない何かが目覚めてしまうかもしれないじゃないですか!


「って、犬って名前はいくらなんでも安直すぎませんか?! 名前が人みたいな人がいるわけないじゃないですか! そもそも、もっといい名前を考えませんか?」

「はい、犬です。名前も犬ですよ」


 こんなことがあっていいのでしょうか! まさか自分から犬と名乗るだなんて……。


 堪えろ! 愛でたくなる気持ちを抑えろ!


「お手」

「わふーん」

「おかわり」

「わふーん」

「ちん「さすがにそれはやめてください」

「僕はいったい何をしていたんだ!」


 彼女があまりにも犬っぽくてついやってしまいました。よく考えたら、彼女の耳と尻尾以外ただの人じゃないですか! いくら、余命が少ないとはいえ、悲しいものです。


「彼女の名前が犬な訳がないじゃないですか。彼女にも名前はありましたよ。ただ、彼女の頭がその、なんで言いましょうか、弱いんですよ。だなら、名前を忘れたんです」

「名前を忘れるなんて記憶喪失ぐらいでしょ!」

「彼女は幼い頃から名前が覚えられなくて、しょうがなく親御さんが犬って呼んだそうです。そしたら、彼女はいつしか自分の名前が犬だと思い込んだのです」

「そんなことがあってたまるか!」


 ポチとかハナだったら犬と同じ二文字だし、簡単に覚えられるでしょうが!


「ちなみに、この子は魔王軍の密偵の一人です」

「こんなに頭が弱くて密偵できるの?!」

「主にサポート要員として働いています。彼女は頭は弱いですが、犬としての本能はあるらしく、嗅覚、聴覚に優れているんですよ」

「へー、そーなんだ!」


 たぶん、それ捕縛に向いているんじゃないでしょうか? 監視にはどう考えても、向いていませんよ。


「で、この子がしばらくあなたの側付きになりました」

「本当にこの子が僕のお世話をするんですか? 逆でしょ! 普通!」

「まぁ、そうかもしれませんが、気にしないでください。彼女は警戒心は犬並みなので、あなたが襲おうとしたら、噛み付きますよ」

「そんな地雷を残り少ない人生で踏むわけないでしょうが!」

「じゃあ、どうして私には抱きつこうとするのですか?」

「そ、そ、それはオークの本能です」


 だから、そのしかめっ面はやめて!


 ほら、そこのワンちゃんのように頬擦りしてもらってもいいんですよ!


次回も明後日更新予定です。

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