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080.突然現れた貴婦人

 

 あれから僕はおじいさんにお世話されています。


 ただし、彼の世話はかなり乱暴なものでした。


 まず、雄鶏が鳴く前に叩き起こし、寝ぼけ眼の僕に薪を割らせます。


 そして、薪を割り終わったら、おにぎりという名の虫団子を渡されます。


 まぁ、食べてみたら、米の味はするんですよ。


 けれど、ライスワームが生きているところを見せられたら、食べたくなくなりません?


 まぁ、食べるものが虫団子しかないからしょうがなく食べます。地下牢の中では蜘蛛を食べていましたしね。芋虫くらいでへこたれてはいけませんよね。


 そして、四六時中彼の雑用仕事に付き合わされます。ほんと、辛い! 誰か変わってよ!


 さて、そんなかわいそうな僕には不満があります。


 それは女性と会えないことです!


 なんか小さいこと言っているかもしれませんが、それは本当ですよ。


 僕が人より少しだけ桃色で、少しだけ鼻が丸いだけのかわいらしい生き物なのに、この屋敷の主様は僕のことをどこかの"ピー"か何かだと思い込んでいるんですよ。だから、僕の近くにはメイドさんが来ません。


 最初は、この屋敷にはメイドが存在しないのではないかと思ったら、普通にいるんですよ。ただ、僕と100メートルほど距離を取っているんですよ! 僕はそんなに汚らわしい存在なのですか!


 まったく、ひどい話です。僕は一度もそんな疚しいことはしていないのに! 


 あぁ、どうして神さまは僕にこんな不幸を与えたのでしょうか! これほどオークでいることが辛いとは思いませんでしたよ!


 そんな僕が今日、久しぶりに、女性と出会いました。


 ──えっ? 女性を見るなり襲いかかるとでも思いましたか? 残念ですね。僕にも襲える人と襲えない人の区別はつきますよ。


 目の前にいる銀髪の貴婦人はまさに、その襲えない人、──いや、襲ってはいけない人です。


 彼女はレイラさんとどこか似ているような気がしなくもないのですが、どこか貫禄が違います。


 くれぐれも小皺とは言ってはいけません。メイド長なら、許してくれるのですが、あの人は絶対に許しません。


 それに、あのオークを虐めることしか能のない変態さんとは見た目はほぼ同じですが、次元が違います。


 たぶん、襲いかかったら、100%死にます。殺されます。あのじじいにバラバラにされてしまいます。


 あっ! 近づいてきた。


 さて、逃げるとしましょうか。


「──って、どうして人の背中を抓るんですか!」

「私の前で腰布一枚で庭を駆け回っているのがおかしいのですわ」

「オークだからですよ! それに、僕は腰布しかありませんよ! あと、痛いからやめてください!」


 背中を抓られることがこんなにも痛いだなんて思いもしませんでした。


 案外、背中には脂肪がついていないからかもしれません。お腹周りにはつけられるのに、背中にはつけられないなんて不思議なものですね。


「あの服があるじゃない。あの後、私が買い取ってあげたのよ」

「いえ、あんな成金趣味のスーツなんて着たいとは思いませんよ。──あれ? 今、買い取ったとか言いませんでした?」


 すると、彼女は突然、扇子を取り出して笑みを浮かべながら、自己紹介をしました。


「初めまして。私はエレスティアナ・ミリアーレ・アンドルセンですわ。あなたの飼い主の母とでも言っておきましょうか?」

「僕はあの人のペットじゃありません!」


 この国の人はオークを見たら、誰かのペットだという固定観念でもあるんでしょうか!


 あぁ、野良のオークはこの世から抹殺されたのでしょうか!


 ひょっとすると、あの森のかわいらしい彼らが最後の希少な野良オークだったのかもしれませんね。


「まぁ、あの子が生き物をかわいがらないことは理解できるわ。あの子はどれくらいの力だったら、人を殺さないのか未だに理解できていないのよ」

「それってかなりヤバいじゃないですか!」


 バケモノにはまず躾が大事でしょうが! どうして、それを教えなかったのですか!


「あの子に手加減を教えるのは私の仕事じゃないもの。私はあの子が姉のようにはならないように教え込んでいただけなの」

「姉?」


 なんかイヤな予感がします。とてつもなくイヤな予感がします。


「あの子からすれば、伯母にあたるわ。彼女はオークが好きすぎて、一人でオークのいる危険な森に出かけたの。そしたら、案の定、襲われ「もういいです。これ以上、聞きたくありません!」

「とにかく、絶対にオークには近寄らないって教えこんでいたはずなのに、どうしてかしら?」

「それはたぶん、家庭教師がヤバかったんですよ」

「あぁ、あの怪しい眼鏡のことかしら? あれなら、20年前に解雇していたはずだわ」

「5歳くらいでよくあんな恐ろしい嗜好が身についてしまうんですか!」


 その家庭教師が怖いわ! 5歳児にいったい何を教えてんの!


「えっ! あれが原因で、あの子が人には興味を示さなくなったの?!」

「いや、気づけよ! 少なくとも、ミカエラさんは覚えていましたよ」

「申し訳ないけど、ミカエラって誰のことかしら?」

「聖言語を多用する意味の分からない女性ですよ。そんなことも知らないんですか!」

「ここにはメイドが1000人以上いるからいちいち覚えていられないわ」

「あっ、そうですか」


 そりゃ、覚えられませんね。


 けれど、あなたの娘さんとかなり親しかったと思いますよ? どうして覚えていないんですか?


「あっ、そうだ。あなたにあの子の話を聞きたかったの。もう10日も見てきて、この子は女の子には手を出せないなって分かったから、別に私の部屋に入ってもかまわないわ」

「ちょっと、それはあんまりじゃないですか!」

「なら、一回くらい襲ったの?」

「──いえ、何もやっていません」

「オークにしては、ちょっとおかしいんじゃない?」

「年中“ピー”しか能のないあいつらと同じにしないでください!」


次回も明後日更新します。

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