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078.引きこもり王女の嘆き

 

「あら? わらわの可愛い妹であるミリアじゃない。どうしたのじゃ? 普段は『あちしはオークの肉の臭いが臭くて入らんわ!』とかなんとか言ってたけどどうしてここに来たのじゃ?」


 あなたって可愛い妹とか言うんですね。けれど、目がまったく笑ってませんよ。どうしてですか? 一部分を除いたらかなり似ているのに……。すみません。嘘つきました。顔しか似ていませんでした。


「やはり、うぬのせいか! そのオークは厚顔無恥、邪智暴虐のオークの中のオークじゃ! うぬのような人の皮を被ったバケモノには分からぬであろうが、このオークはとにかく最低なのじゃ!」


 彼女はローストオークの側にあった包丁を取って呪詛を唱えていました。


「だから、殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」


 よくそんな物騒な言葉を言い続けられますね。そんなに、僕に恨みがあると言うのですか?!


 あと、騎士のみなさんに止められていますけどこのネタキャラってそんなに危険だったのですか!


「それはやめていただけないだろうか?」

「けっ! 自動殺戮機械オートキリングマシーン。うぬにも言いたいことがあった」

「な、なんだろうか? こ、こ、心当たりがないな」


 いや、心当たりがあるのがバレバレじゃないですか! 


「お主は騎士のくせになぜオークを匿う?」

「そ、そ、それはだな。わたしはこのオーク殿と永遠の愛を誓ったのだ」


 すると、近衛騎士の方々が笑い始めました。えっ、なんでそんなにケラケラ笑うの? オークと愛を誓うのは悪いことじゃないの!?


「なぜ笑う! それに、オーク殿! わたしから距離を取るな!」

「だって、あなたの口がオーク肉で臭いし、それにちょっと怖いんです。ねぇ、なんでじりじり近づくの?」

「なーに、心配はいらない。ちょっと抱きしめるだけだ。おい! ビアンカ! 離せ! なぜわたしをきつく締め上げるのだ!」

「お母様からもし、晩餐会で奇怪な行動に出たら止めるよう言われているのです! それに、ここは王宮です! これ以上、あなたの名を傷つけてはいけません!」


 ビアンカさん、今日もお勤めご苦労様です。後で、みっちり労ってあげましょう。


「おぅー」


 いきなり、誰かが僕を斬ろうとしていたので、僕は咄嗟に避けました。


 そこには、騎士様に止められていたはずのネタキャラさんがいました。


「どうして解放されちゃっているんですか! 騎士のみなさんももっとこの危険人物を止めてくださいよ!」

「カカカカカ。あたしに従わぬ騎士などいないわ! あちしが笑顔で『放してくださいませ』と言ったら、素直に放してくれたぞ?」

「え。えーっと、そ、そ、それはたしかローストオーク用のナイフですよね。なぜそれを片手に持っているのですか」

「えい!」

「ピギャ!」

「さい!」

「ピギャ!!」

「とーりゃさ!」

「ピ、ピギャ!!!」


 あっ、いま、お腹の薄皮が裂けた! うわっ! もし、あの圧縮機レイラさんにもう一度締め付けられたら、色々ヤバいことになるじゃないですか!


「っていうか、なんでそんなに切れ味がいいんですか!」

「これはオークの肉を削ぐためのもの。たとえ、うぬが硬くても簡単に削げるのじゃ!」

「ピギャーー!!」

「こら、逃げるな!」

「おい! 近衛騎士!」

「なんでしょうか?」


 さっきまでオーク肉を楽しんでいた騎士のみなさんがなぜか片膝をついてネタキャラの方を向きました。


「あちしを手伝え! ここでオークを討つのじゃ!」

「ご冗談でしょ」


 おい! ネタキャラ! 騎士など従わせて当然とか言ってたけど、できてねぇじゃないか! それで、よく逆らわないものはいないとか言えたよね! しかも、騎士に笑われるって何? ひょっとして、騎士の中でもネタキャラなの?


「なぜ手伝わぬ!」

「駄目よ」

「母様」


 母様? いったい何? あっ、よく見たら、騎士の中に貴婦人がいました。この二人と、特に恐ろしい殺人鬼様と瓜二つに見えます。いったいどういうことなのでしょうか?


「この子はそこの女騎士さんのペットなの」

「ペットじゃないですよ!」


 この貴婦人、大きな勘違いしていますね。後で、しっかりと教え込んであげましょうか?


「わたしたちは永遠の愛を誓った仲なのだ。王妃様でもそれは許せぬ」

「そこ、間違っていますよ! まず永遠の愛なんて誓っていませんからね!」


 僕とレイラさんが言い争っていると、王妃様が戸惑いながら、僕たちの方を見つめていました。


 貴婦人の邪魔をするのも申し訳ないので、僕はビアンカさんにレイラさんを止めてもらうことにしました。


「なぜまた止まるんだ! 離せ!」

「今は王妃様のお話の時間ですよ」


 すると、レイラさんは目の前にいる貴婦人が何者なのかを思い出したのか、急に大人しくなりました。


 場が静かになったことを確認した王妃様は語り始めました。


「この晩餐会の間、そこのオークがどんな生き物なのかこの目で確認させていただきました」


 えっ! そのためだけに王妃様をこんな脂っこい臭いが漂う場所に呼んだの! 


「とにかく、私が見る限りではこのオークはオークの皮を被った臆病者に見えます」

「おっしゃる通りです」


 やっぱり、この王妃様よく分かっていただける。


 これからはあなたのところに居候したいくらいですよ!


 えっ、なんか距離取られたんですけど。あと、レイラさん。そんなに睨みつけても何も出てきませんよ。


「嘘じゃ! このオークはあちしを何度も吹き飛ばし、痛めつけ、散々被ってきたのじゃぞ!」

「そんな風聞の悪いこと言わないで下さいよ!」

「オーク殿。さっきそこの小さいのが言っていたことについて詳しく聞きたいのだが……」

「ピギ!」


 いやいや、吹き飛ばすのどこに色気とか感じるんですか? もう怖いからやめてくださいよ!


「とにかく、七日! 七日の間にこのオークが無害であることを証明できたら、このオークを処刑することはやめましょう! それでよろしいですね。レイラ」

「今、それどころじゃないんで後にしてくれませんか? この殺人王女をとっちめなければいけないのだ!」

「とにかく、今は頷いてくれませんかね? じゃないと、この豚は死にますよ!」

「僕は豚じゃない!」


 すると、レイラさんを除く全員が笑い始めました。


「なんでみんなして笑うんだ!」


 騎士や貴婦人、それにビアンカさんまで! いったいどうしてみんなわらっちゃうんですか!


 もつ。いい! 森の中に帰る!


「待ってくれ! オーク殿!」

「放してくださ、スピー!」


 あれ、なんだか。意識が遠のいていく……。どうしてなんだ?!


「それで、ビアンカ。こういうことでよろしいですね」

「えぇ、それで構いません。このバカにもきつく言い聞かせておきます」

「バカとはなんだ! バカとは! って、オーク殿! 大丈夫か! おい! しっかりしてくれ!」


 僕はレイラ様に揺すられながら、気絶してしまいました。


次回も明後日更新です。

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