075.王様と豚の二人っきりのお話
どうも、オークです。
先ほど、聖水サウナという名のただの大きな蒸籠にぶち込まれていました。
しかし、薬草と聖水と言う名のただの劇薬と一緒に人をぶち込むなんて、いったい何考えているんでしょうね。少しハーブの効いた蒸し豚でも作ろうと思ったのでしょうか。
ただ、すっかり臭いがしなくなったのはありがたいです。あの地下牢にいたものですから、かなり汚い身体になっていたのでありがたいです。
しかし、蒸し豚にされかけたことは未だに根に持っています。ねぇ、イケメン騎士さん!
「さっきから何睨みつけているんですか」
「別に何にもありませんよ」
「では、改めて玉座の間へお入りください」
いかにも王様がいますよっていう感じの扉が開くと、そこにはトランプの王様がいました。
そう。トランプのKに描かれている世界でも有名な王様です。
モデルはどなたか存じ上げませんが、王様といえばたぶんこんな感じだよねって思うあの王様です。
その典型的な王様が目の前にいるのです。もう吹き出しそうでヤバいです。正直まずいです。
「お主が自動殺戮機械のペットか」
「どうしてみなさん、僕のことをペットって言うんですか! ただの居候ですよ!」
「いやいや、オークを養うなどどう考えても、ペットにしか思わんわい」
「──すみません。いくら何でもそれはひどくありませんか!? 僕は人間です!」
「いや、どこからどう見ても豚にしか見えないのだが……」
「てめぇ!」
僕が王様に殴りかかろうとすると、イケメン騎士が僕のお腹周りにしがみつきました。
「いい加減にしてください! 不敬罪で処刑されてもいいんですか?」
「やれるもんなら、やってみろ! こう見えても俺は強いんだ! だから、放してください」
「陛下! 処刑人はププ、──失礼。赤薔薇の騎士団長に頼みましょうか?」
ププってなんですか! いったい何を言いかけたんですか! あと、あのツインテールは呼ぶな! あいつはヤバイ! マジで殺してくるからやめてくれ!
「首をバッサリ斬れるものがいいじゃろうな。あのオーク大好き変態女騎士には到底任せられん」
「勝手に人の首を斬る話をするな!」
「おお、そうじゃった。余はこのオークに聞きたいことがあったのじゃ! ミハエル。わしとこのオークを二人きりにしてくれ」
「よろしいのですか? オークに殺されはしませんか?」
なんか人をバケモノかなんかのように思っていませんか? 僕は逃げることはしても、人は余程のことがない限り痛めつけませんよ!
「なに、ビアンカから聞いた話によれば、このオークは度胸がないらしく、襲いかからぬそうだ。どっからどう見ても、女っ気のない独身中年悪徳貴族にしか見えんそうじゃ」
「やめろ! 人を女っ気がないとか、独身中年悪徳貴族とか言うな! あと、なんでビアンカさんが出てくるんですか!」
「いや、どこからどう見ても悪徳貴族にしか見えませんがね。ほら、このまるまると太ったこの体」
「──さすがに、これ以上言うのはやめてあげた方がいいぞい。なんだかそのオークがかわいそうになってきた」
「こら! 僕の話を無視するんじゃない!」
「失礼しました。では、ごゆっくり。くれぐれも過ちは犯さぬように」
彼はそう言って扉を閉めました。
「「するわけないでしょ(じゃろ)!!」」
あのイケメン騎士はいったい何を考えているんだ? どう考えても、この組み合わせは吐き気しか出ないでしょうが!
「では、お主に聞きたいことがある」
「そんなことより早く森に解放してください」
「どうやったら、あの馬鹿を止められるのじゃ?」
「僕がそんなこと知ってるわけがないでしょうが!」
「なぜじゃ! お主なら、あのバケモノを止められると思ったのに! なぜ余の質問に答えられぬ!」
「強いていうなら、僕がオークだからでしょうか? あの人はオークと母親の言うことしか聞けないただの変態ですよ」
すると、王様は震えながら、答えました。
「それは分かっておるのじゃ! 分かっておるが、あのバケモノの理不尽な強さが無視できぬのじゃ!」
「──まぁ、そうですね。あの強さは誰にも制御できません。とっとと諦めてください」
「なぜそうつれないことを言うのじゃ! 答えてくれ!」
「揺すっても何も思いつきませんよ!」
ほんと、人を何だと思っているんでしょうか? 豚はおだてたら、木に登るらしいですが、僕はそんなことされても木には登りませんよ。
僕が王様に揺すられていると、突然、玉座の間の扉が開かれました。
そこにはドレス姿のビアンカさんがいました。たしか、イケメン騎士が王の間を守っていたような気がしたのですが、彼はどこに行ったのでしょうか?
「陛下!」
「これはこれはビアンカさんじゃないですか! なんですか? そのドレス姿は? 最高じゃないですか! メイド服じゃなくてもあなたの美しさは素晴らしいですね。何があったんですか?」
「地下牢に入っても、そのしつこさは変わらないようですね。邪魔なんであっちでお絵かきでもしておいてください!」
ほんと、つれないな。
僕はしょうがなく、彼女の言うとおりに玉座の間の壁を爪で引っ掻いてお絵描きを始めるのでした。
「どうした? 余の耳よ。何があったのじゃ?」
「陛下、自動殺戮機械が来ます」
えっ!?
「なぜじゃ! ここにオークがいることはバレておらぬはずじゃ!」
「嗅覚で感じたそうです」
嗅覚? あの人って犬かなんかだったんですか!
「何じゃ! そのバカげた話は!」
「もう来ます!」
すると、突然、ミサイルのような何かが僕にぶつかってきました。
「オーク殿! 会いたかったぞ」
どうやら、ミサイルのレイラさんのようです。
相変わらず人を何だと思っているのでしょうか? 僕があなたの攻撃を受け止められるわけがないじゃないでしょうが! あっ、意識が遠のいていく……。
「あれ? オーク殿? オーク殿----!」
そんなに泣きわめくなら、ぶつからないでくださいよ!
次回も明後日に投稿します。




