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068.大隊長に起こった悲劇

 

 まったく自分の案とは言え、こうもすんなりうまく行ってしまうとは思いませんでした。


 ほら、みんなで痛みを分かち合う結界だから一斉にそれなりに大きなダメージを受けたら、一か所に大きな攻撃を受けると脆くなるのと同じようなことが起こるでしょ? どうしてそこまで考えなかったのでしょうね。


 レミオラさんに聞いたところ、魔王軍はあんまり人間の領域に攻め入ったことはないそうです。だから、戦争をしてその都度戦術を磨くようなことはないのでしょう。


 さて、今、レイラさんとレレミナちゃんが競い合ってあの愚かな骨を探しているところです。


 彼の防御壁は完全に崩壊しましたからね。簡単に見つけることができるでしょう。


 ただ、彼に無理矢理連れてこられた方々には本当に申し訳ないと思っています。恨むなら、あなた方の愚かな上司を恨んでください。


「オーク殿! 捕まえてきたぞ!」

「あなたの手柄のように言わないでよ! 私の方が先に見つけたんだから!」

「だが、縄にかけたのはわたしだぞ?」

「それは私が縄を持っていなかっただけだよ!」


 いや、どうしてそこで言い争うのでしょうか? 二人仲良く捕まえたって言えばいいのにね。


「さぁ、オーク殿! 褒めてくれ!」

「あぁ、よくやりましたね」

「言っとくけど、私が見つけたんだよ!」

「レレミナちゃんもよく頑張りました」


 僕はそう言って、彼女の頭を撫でました。


「えへへ」

「なんかわたしとこのサキュバスと扱いが違うような気がするのだが……」


 レイラさんがいつものように怖い目で僕を見つめています。


「——気のせいです」

「本当か?」

「本当ですよ」


 だから、あんまり近寄らないでくださいよ。いつか殺されるんじゃないかってひやひやしているんですよ。


「そんなことよりも早くこの子に訊かなくていいの? どうしてここに攻め入ったのか? って」


 メイド長が作戦を忘れているレイラさんに話しかけました。


「それはそうだ。いくらオーク殿が強くてスカウトされているとは言え、どうしてわたしの家に奇襲をかけたのだろう?」

「クククッ。そんなことを吾輩が口にするわけがなかろう。斬るならば、斬れ!」

「なんかいつもよりも饒舌だね。なんか秘策でもあるの?」

「そんなことよりもレレミナ! お前がなぜそこの自動殺戮機械オートキリングマシーンと手を組んだのだ! これは魔王様への裏切りだぞ?!」


 たしかに、レレミナちゃんはどうしてレイラさんと一緒になって骨を捕まえに行ったのでしょう? 気になります。


「魔王ちゃんはここにはちょっかいかけちゃダメ! 絶対にダメ! って言ってたよ? あんたの方が魔王ちゃんを裏切ったんじゃないの?」

「そ、そんなこと、あるわけなかろう! 吾輩は魔王様を思ってそこのオークを献上しようと思ったのだ!」


 ねぇ、なんか動揺していません? 絶対に悪いことしたなぁって思ってませんか?


「とにかく、お前を捕まえた以上、王国騎士として斬らぬわけにはいかない」


 レイラさんは腰につけていた剣を抜きました。


「えっ。ちょっと待ってください。斬るの? マジで斬るの?」

「斬るに決まってるだろう? なぜそこで狼狽る? さっき斬るならば斬れ、と言っただろ?」

「そ、そ、それは言葉の綾であってだな。斬るのはよしてくれないか? ほら、『ケリティック講和』の際に幹部を捕まえた際は人質交換するアレがあっただろ? 吾輩には人質を用意することができるぞ!」


 ケリティック講和? なんかまた変な単語が出てきましたね。僕には関係なさそうだったので特に何も聞きませんでした。


「ねぇ、どうしてあんたが魔王ちゃんのコレクションを勝手にどうこうできるの?」

「そ、それはだな。レレミナ。吾輩には力があるのだよ。ほら、お前たちがサボっている事務仕事をしているんだ!」

「とにかく斬るからな」

「やめてー!」


 そう喚く骨をレイラさんは容赦なく斬り捨てました。


 すると、骨の身体はあっという間に崩れて魔石だけが残りました。


 これってまさか!


「オーク殿、これはどういうことなんだ?」

「また身代わりゴーレムですか」

「身代わりだと? それはわたしをコケにしているのか?」

「骨って臆病者だったはずなのに、なんで今日は饒舌だったんだろうって思っていたらそういうことだったんだね」


 レレミナちゃんもなかなか冷たいことを言いますね。一応、同僚なんでしょ? まぁ、僕も似たようなことを思っていたのですがね。


 僕は近くで冷たい目で骨が魔石になるのを見ていたレミオラさんにこう尋ねました。


「今まで本当に僕の前ではこれを使っていなかったのですか?」

「はい。一応」

「これ見たら信じられないんですけど!」

「お嬢! 捕虜を一匹捕まえたぜ!」


 空から怖い声が聞こえてきたと思ったら、キーラさんが左脚にゴブリンを吊るした空飛ぶ黒蜥蜴に跨って現れました。


「その子から聞いた方が早いわね。何か知ってることでもある?」

「命は助けてくれるんですよね?」


 吊るされたゴブリンは恐る恐る尋ねました。


「まぁ」


 レイラさんは短く答えます。


 吊るされたゴブリンはさらりと答えました。


「たしか、大隊長なら、とっくの昔に逃げていましたよ?」

「「「はぁ?」」」

「うん。逃げましたよ。たぶん、口上を述べたらすぐ逃げていきましたよ。そこの黒龍と女騎士さんが怖いって言って逃げましたよ」

「——あれは本当に大隊長なのか?」


 レイラさんは溜息交じりに呟きました。


「えぇ、一応」

「敵ながら少し心配するわ」

「まぁ、あいつがいてもいなくても勇者には勝てるから大丈夫!」

「それはそれでなんか夢のないようなことを言わないでくださいよ!」


 まぁ、そういう物騒なことをズバズバ言えてしまうところもかわいいから許しちゃうんだけどね。だから、そんな目で見ないでくださいよ。また、遠くに飛ばされたら今度こそ死んじゃいますよ!


 あれ? 黒蜥蜴がなんか魔石に興味を示しています。なぜでしょう?


「何? これはお前の祖父の魔石だと? なら、ご褒美だ。やろう」


 キーラさんは飛び降りて魔石を持ち上げて、黒蜥蜴に渡しました。


「GYAOOO!」

「え? ちょっと待ってくださいよ。あっしは解いてくれないんですか?!」

「まぁ、気が向いたら解いてやる」

「そんなのないですよー!」


 左脚にゴブリンを吊るしたまま黒蜥蜴君は魔石を持って帰っていきました。


「あのー。魔石を渡しちゃっていいんですか? たしか、あれがないとあの人は外に出ないんじゃありませんでしたっけ?」


 僕はレミオラさんに小さな声でそう尋ねました。


「少しくらい頭を冷やせばいいんですよ」


 レイラさんはそう言い捨てると、少し呆けているレイラさんの方を見てこう続けました。


「それに、あの人たちをどうこうできますか?」

「不可能です」


次回、069.謎のツインテール女騎士に捕まったんですけど!

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