067.魔王軍第7大隊出陣!
どうもオークです。今、哀れな骨が率いる第七大隊が愚かにも屋敷を取り囲んでいます。
そして、「一時間待て!」と言ったところで終わったんですよね。
これはレミオラさんから聞いたことなのですが、あれはどうも魔王軍の規定により、宣戦布告から一時間たってから戦闘行為を始めることにするらしいんですよね。
ほら、いきなりだまし討ちとかしたら、いろんなところで諍いが生まれるじゃないですか。たぶん、それを防ぐためらしいんですよね。
あれ? そう考えると、勇者と魔王軍どっちが正しいのかよくわからなくなってきましたよね。
勇者なんて絶対アポなし突撃訪問ですからね。ほんと、アポを取ってから来てほしいですよね。
さて、気を取り直して門の外を見るのですが、どうも取り囲んでいる人数が少ないんですよね。あれ? これって包囲しているっていうのかな? 不思議でしょうがありません。
「なんか少なくないですか?」
「第七大隊は事務職がメインですからね。各大隊との橋渡しに様々な王国との折衝、諜報も行っています」
「それって大隊って言っていいの!?」
それって裏方の業務じゃないんでしょうか?
「それは魔王様が決められたことなので、私にはわかりません」
レミオラさんはレレミナちゃんの方を見てこう言いました。
「まぁ、第七大隊があるから私の妹もこうしてのんきに人間ごっこに興じることができるのですがね」
「えー! お姉ちゃんだって、オークさんと仲良く話しているじゃない!」
「あくまで仕事です! 第一、私は豚は好きじゃないんです!」
「オーノー!」
「ユーがそう言うとなんかアングリーしますね」
「あなたのその喋り方は分かりにくくなるからやめてください!」
腹が立つをアングリーしますって言い換えますかね? 僕はそんな分かりにくい言葉遣いはしませんからね!
「とにかく、あの並びは一応油断してはいけません」
「一応なんだ」
「あの並びは魔王軍に伝わる由緒正しい陣形なんです。等間隔に等しい魔力を持った兵士を配置することによって作る結界の役割を果たしているんですよ」
「結界って何ですか!」
あんなすっかすっかの円陣のどこが結界になるんですか!
「ほら、スクラムを組むってあるじゃないですか。一人だと防ぎきれなくとも、みんなで束になれば対応できるって言うアレですよ」
「けれど、あんなすっかすかなスクラム見たことありませんよ!」
「とにかく、あの一人でも切り離せたらあの結界は壊れるんだろ?」
「けれど、それが問題なのです」
「は? 見るからに弱っちい奴らが横に並んでいるだけじゃねぇのか?」
「だから、束になると強い攻撃もみんなで等分して攻撃を分かち合うことができるんですよ」
レミオラさんは続けてこう言いました。
「ただし、強い一撃があれば、あれは簡単に打ち崩せます。第一、第七大隊はぶっちゃけ弱いですからね」
「じゃあ、わたしが出ればいいのだな」
「まぁ、そうなりますね」
なんか過剰戦力のような気がするのですが、早くあの骨には消えて欲しいので、出来る限り早く終わらせてくれるのなら、彼らの断末魔を我慢して聞くことにしましょう。
「こうなったら、わたしも出るよ!」
れれみなちゃん! いくらなんでもそれはひどいんじゃないかな? 過剰戦力が二人になったら、もっと断末魔がひどくなるじゃないですか!
「あぁ? お前は魔王軍の大隊長だろ? お前はおとなしくして地べたに這いつくばっておけばいいのだ」
「私はオークさんに少しでもいいところを見せたいの。それに、あんたは私が出ると良いところが見せられないって思っちゃう感じなの?」
「そ、そ、そんなことは思っていないぞ」
これはまずい。いくらなんでも無理矢理駆り出されたと思われる彼らの断末魔は聞きたくありません。——あれ?
「いや、よく考えたら、強すぎる一撃だけじゃなくてもいいじゃないですか。みんな仲良く攻撃すればいいでしょ」
「「「それだ!」」」
なんかみなさんが急に目を輝かせて僕に近づいてきました。これって誰だって思いつくんじゃないですか? 思いつかないのはちょっとおかしいですよ。あっ、ちょっと、近すぎません。あと、僕の“ピー”を虐めないで! 誰ですか! そんな手癖の悪い人は!
「どうしてそんなことが思いついたんですか? そうでしたね。あなたはずる賢いオークでしたね」
「レミオラさん、その言い方はひどいですよ!」
「じゃあ、メイドのみんなでやるわよ。配置を決めるわよ」
「「「ラジャー!」」」
メイド長の号令の下、メイドさんたちは話し合いを始めました。僕はレミオラさんに聞きたいことがあったので、彼女を呼び止めました。
「ところで、どうしてレミオラさんは味方するんですか?」
「だって、私はあくまで魔王様の部下ですから。あんな男などすぐにでも蹴落とせます」
「なんか上司に冷たくない?」
「あれは名ばかりの上司なんですよ」
「なんかひどくない?!」
——骨君。あなたってそんなに人望がないんですね。心中お察しします。
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アンドルセン家別邸の周りを囲む第7大隊のみなさんは少し退屈そうにしていました。
「あぁ。退屈だな」
一匹のコボルトが欠伸をすると、その右隣にいたゴブリンが頷きました。
「ホントだな。まぁ、おいらたちはこうして陣形を組むことしかできねぇよ」
「そうだな。第七大隊の一割しか並んでいないもんな。それも下っ端。しかも、よりによってオークを使わない。いくら、オークに目がない化け物がいるとはいえ、ほんと、大隊長も酷いことをするよな」
「さっきから気になっていたんだけどさ」
「何?」
「メイドがおいらたちの前にいるのはどういうことなのかな?」
「確かに俺の目の前にメイドが一人いるんだけど」
「なんかいやな予感がするのは気のせいかな?」
「そ、そうじゃないと思う」
彼らの目の前にいるメイドが時計を確認すると、彼らの方に向かって歩き出しました。
「ねぇねぇ、お嬢さん。ここは、危険だからちょっと遠くに行ってくれない?」
ゴブリンがそう言うと、そのメイドはいきなり短剣を取り出して、彼らに斬りかかりました。
「うぎゃー!」
——な、なんで、円陣が効かないんだよ!
メイドさんに斬られた哀れなコボルトとゴブリンはそう思いながら、意識を失ったのでした。
次回、068.大隊長に起こった悲劇




