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065.王女様、はじめての○○

 

「こ、これは何なのじゃ?」


 いやぁ、あなたの側でゴロゴロしているシロクマも十分怪しいでしょ。


 いえいえ、彼女の言うことも分かりますよ。うっかり、シロクマがゴロゴロしているのに目が入ってしまい、そんなことを言ってしまいました。


 なぜのら、いつもの応接間に迎えられてそこにいるのはレイラさんに、久しぶりに見た筋肉ムキムキおじいちゃん、マダム、八郎ちゃん、そして、いかついメイド服を着たオカマ集団にメイド長。


 ここはどこのファミリーですか!? 相変わらず、個性的な人ばかりですが、なぜか今日に限っては威圧感が恐ろしいです。いったい何が待っているのでしょうか?


「さっきなんてことを考えているのかしら?」


 金髪ドリルのオカマその1が僕をじっと見つめます。あんまり見ないでくださいよ。ほら、あなたのご主人様が怖い目をしていますからね。


「いえ、何も考えておりませんよ」

「そんなことよりもうぬらは何をしておるのじゃ! あちしをここに連れてきて、大勢で寄ってたかってあちしを取り囲んで何をする気なのじゃ!」

「決まっているじゃない。あなたの話を聞きたいなーって」


 メイド長はハイライトのない目でじーっとネタキャラさんを見つめています。


「それは当然、そこのオークを今すぐあちしの目の前で殺せということじゃ」

「ビンス」

「何でしょうかねー? お嬢様ー」


 黒髪のメイド服を着たオカマさんが答えました。さっきから思っていたんだけど、なんでメイド服着てるの? 執事服じゃダメなのかな? 


「そこにいる蠅を追い出せ」

「かしこまりまし「なぜあちしをつまみ出そうとするのじゃ! あちしは王女じゃぞ! それに勇者教会の聖女でもあるのじゃぞ!」

「はぁ……。あなたはまだ分かっていないのね」


 メイド長は溜息を漏らしました。


「いったい何のことじゃ?」


 メイド長はあきれ顔で簡潔に答えました。


「この屋敷ではお嬢様が法であり、お嬢様がこの屋敷の王なのよ」

「は? 何を言っておる! うぬらの王はあちしの父君ではないか!」

「あんな凡庸な王などお嬢の足元にも及ばんのう。今すぐ斬り捨ててやりたいものじゃ」


 いつもとは違って、最初から本気を見せているおじいさんがネタキャラを睨みつけました。


「けっ! 宦官風情が何を言っておる」


 そんなことなんであなたが知っているんですか! って、あなたも王宮絡みの人だったんですか!


「じいやはわたしの師匠だぞ。お前はいったい何様だ?」


 無表情のレイラさんは立ち上がり、ネタキャラに近づきました。すると、ネタキャラは後ずさりしました。そして、壁に追い詰められました。


「だ、だ、だから、王女様であり、聖女様であるのじゃぞ!」


 すると、レイラさんは首を傾げました。


「そういえば、お前のようなやつ王宮に呼ばれた際に一度も見たこと無いぞ? あのときは愚かな王からの頼みだったから渋々答えたが、よく考えたら見たこともないのだから断ればよかったんだ」

「嘘つけ! あちしはお前の顔などよく知っておるぞ!」


 あのー、それってただテレビに出てくる有名人を見て「俺、あいつのマブダチなんだよ」って言っているのと同じだからね! なんか今までのことを考えると、このネタキャラはそんな人のような気がしてきた。


「すまない。それはたぶん、この世で最も最悪なやつのイメージが強すぎたんだ」


 一体それは何ですか? まさか、あの生命体が王宮に入り込んだとかじゃないでしょうね!


「それはあちしの汚らわしい姉のことか?」

「まぁな」


 また、知らない人が出てきました。汚らわしい姉とか今度どっかで現れるやつじゃないですか! それにいつにも増してレイラさんの顔が苦々しい! これ以上危険な人が増えても困るだけなんですけど?


「あやつなど関係ない。とにかくあちしの命令に従い、そこのオークを殺すのじゃ!」

「ちょっとお嬢様」

「何だ?」

「この子を貸してほしいのだけど。ほら、本当はオーク君と話したかったのでしょ?」

「そうだが……。いいのか?」

「なぜあちしを蔑ろにして事を進めようとするのじゃ!」


 そうですよ! なんで僕を置いて、一人抜け出そうとしているんですか!


「あらあら? まだか分かっていないのかしら? あなたはここでは国民。ひょっとすると、そこのオーク君以下なのかもしれないのよ?」

「なぜじゃ!」

「決まっているじゃない。ここのお嬢様はどんな人?」

「ま、まさか、そこの下賤なオークの肩を持つのか?」

「まぁ、詳しくはもっと私の部屋で話さないかしら? いいものがあるわよ?」


 メイド長が手拍子を三回ほどすると、オカマメイドさんたちが立ち上がりました。


「うぬら、乱暴につかむんじゃない! おい! 離さぬか! ピュリーヒ!  そこでぼーっとしないでさっさとあちしを守るのじゃー!」


 彼女(?)たちはシロクマを置いて、ネタキャラをどこかへ運んでいきました。


「まさか、あの部屋って……」

「それっていつ見たの? あれはキーラちゃんにバレるとかなりまずいことになるから伏せていたのだけど?」

「あっ、気にしないでください」

「お一人様追加よ!」


 え? なんで僕まで連れていこうとしているんですか? って、今、誰かどさくさに紛れて僕の“ドカン”を触ったな! いくらなんでもこれはひどいぞ!


「おい! 待て! まだオーク殿との話は終わっていないぞ!」


 そうです! 僕はこの人と話さないといけないことがあったのでした。


「だって、それは明日でも話せるでしょ? わたしはこの子の性根を叩きなおさないといけないの」


 メイド長は続けてこう言いました。


「それに、お母様に報告してもいいのかしら?」

「そ、それだけはやめてくれー!」


 なんで僕が連れていかれるのを止めないんですか!


 ******


 はぁ、ひどかった。ひどすぎましたよ。もう心が折れそうです。


 それに、王女様とは普段はいがみ合っておりましたが、この日ばかりはさすがに心が通ったそうです。


 いつにも増して僕に愛しのハニー(偽)に対する愚痴をしてきて、最後に「きょ、今日のところはひとまず引き上げることにするのじゃ!」と、言い残して彼女は去っていきました。


 え? 何があったかって? 


 それはご想像にお任せします。だって、僕も同じようにひどい目にあって死にそうですから。


 あぁ、これからレイラさんに呼ばれているんだよな。ちょっと、森に逃げ出したくなりました。


 あと、ネタキャラさん! シロクマ置いていっちゃってますよ! いったいどうするんですか!


次回、066.唐突な宣戦布告

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