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063.シロクマが屋敷にやって来た!

 

 どうもオークです。


 久しぶりに自分の小屋でゆっくりと眠ることができました。


 どうやら、僕がクズノキ君をうっかりお空の彼方へ吹き飛ばしたことの証拠隠滅にレイラさんが駆り出されてしまったらしく、メイドと一緒に懸命に彼の行方を捜しているそうです。


 なんか僕が屋敷で勇者を吹き飛ばしたのは大問題だったらしいのです。


 だから、僕はこうして小屋で大人しくゴロゴロしています。


 まぁ、夜中に起きる紛争が無くなって良かったんですけどね。


 ただ、最近、王都から文官や近衛兵、しまいには勇者教会の司祭までやってきて「クズノキ様はどこだ?」だの「そこにオークがいるのは分かっている。さっさとこちらに引き渡せ」だの色々と物騒なことになっています。


 森は哀れな同胞たちはほとんど狩り尽くされてしまったため、身代わりがいないし、どうすればいいんでしょうね。


 やけに門の向こうが騒がしいのでつい目が覚めました。


 どうせ客人の目的はいつもの「オークを出せ」か「勇者はどこだ?」のどちらかでしょうね。


 ここに来る客人って大体おかしな人ばかりですからね。


 勇者に、謎の生命体Kに、ただの骨、さらには髑髏の仮面をつけたいかにも怪しい集団がやってきて、「オークを追い出せ」という始末。


 もう嫌です。いますぐおうちにかえりたいです。


「じゃから言っておろう! あちしは自動殺戮機械オートキリングマシーンに会いたいのじゃ!」


 この背筋が凍るような痛々しい言葉の羅列はいったい何でしょう!


 まさか、あのネタキャラがまた来たわけじゃないですよね? 絶対来てないよね! うん。絶対に来ていないはず!


 心の中で葛藤をしながら、門の方に近寄ると、そこには案の定、シロクマが立っていたのです。


 え? なんで? 声はまるっきりあのネタキャラなのに!


「なぜうぬらはあちしを中にいれぬ! あちしは勇者教会の聖女序列七位じゃぞ!」

「すみません。ここには勅命の手紙を持っていない人は中に入れないことになっているんです」

「いったいいつからそうなったのじゃ!」

「一週間前からです」


 その頃からなんか偉い人がたくさん来たからね! そんな感じで来客を絞ることにしたんだ。知らなかった。


「そうか。その頃はあちしもまだ北の雪原でこやつと共に戦いに明け暮れておったからのう。まさか、そんなに年月が立っておったとわ……。あぁ、あのオーク、次あったら八つ裂きにしてくれる!」


 ねぇ、さっきからシロクマが変なこと喋っているんですけど! なんでシロクマになっちゃったんですか!


 それに、こやつとは誰でしょう? 


 どこにも彼女の連れはいません。ましてや、愛しのハニー(偽)もいませんからね。クマになっちゃったから頭も少しおかしくなっちゃったのかな?


「ところで、いつになったら帰ってくれるの? いい加減、あんたの声が気持ち悪くて吐き気がするんだけど!」と、心を読む少女はいかにも気分が悪そうな表情をしています。

「あちしの声はむしろ優雅なハープのような声色をしているはずじゃ! って、あちしの目の前で吐こうとするんじゃない!」

「ところで、なんでここに来たのかしら?」


 メイド長はシロクマに不思議そうな顔をしてそう尋ねました。


「おぉ! うぬは王宮の先々「なんて言おうとしたのかしら?」——ヒーーーーッ!」


 一体なんて言おうとしたのでしょう? あのメイド長が王宮の先々……代の何かだというところまでは聞こえたのですが、いったい何を言おうとしたのか分かりません。くそーっ! あともう少しであの謎のメイド長の秘密が暴けるところなのに!


「もう一度聞くわ? あなたは何をしに来たの?」

「そ、それは、あやつにどうしても倒してほしいオー「お引き取りください」なぜじゃ!」

「だって、お嬢はオークをこよなく愛しているからな。むしろ、てめぇを困らせているオークなんてお嬢にとって保護対象だよ」


 まずい。僕がここに居るのがバレたら、まずいことになる。


 どこか遠くへ飛ばしたとしても化け物じみた謎の生命力によって僕を殺すためにここに来るに決まっています! それは困ります! とっても困ります!


「そういえば、ここにオークがいるという噂を聞いたが、それはまことか?」

「当家ではかわいらしい小動物以外は飼っておりません」


 これが最近、うじゃうじゃ来る謎の集団を追い払うための常套句なのです。


 ついでに、ビアンカさん。今日も守っていただきありがとうございます。お礼に“ピーピーピー”しますよ!


 ところで、どうして彼女がそれを言う担当なんでしょうか? ほかの人も僕を守ってよ!


 え? 僕が小動物なわけがないから? 僕はとっても愛らしい小動物ですよ!


「オークが小動物のはずがあるまい!」

「ここでぎゃあぎゃあ喚いてもらっても困るわね。シロクマが門にへばりついているなんて噂になったら、またマダムに叱られるわ」


 いや、あなたたち、謎の生命体は一晩そのままにしていたじゃないですか。


「じゃあ、入って頂戴。言っとくけど、ここには何もないわよ」

「そうか。なら、ピュリーヒ! 久しぶりにあちしの背中から降りろ! いい加減、だらしない姿をするのはやめろ!」


 彼女がそう言うと、なんとシロクマが立ち上がると、あのネタキャラが現れたのです!


 え! こんなことがあっていいんですか! シロクマがそこまでやる気がないなんて! 本当にあなたはこのシロクマと北の雪原で戦っていたのですか?


 ——って、何? シロクマが涎を垂らしてこっちを見ているんですけど! 


 いやぁ、だらしないにも程がありますよ。いい加減、そんなだらしない姿をするのはやめてくださいよ。


 え? なんかこっちに近づいてるんですけど! 僕は美味しくありませんよ! ほら、そこに麗しい金色の毛並みをしたうさぎちゃんたちがつぶらな瞳をして君を待っているよ!


「ピギャーーーーーーーーッ!」

「なんじゃ! さっきの野太い豚の鳴き声は! これは絶対オークじゃろ! って、ピュリーヒ! なぜそっちに行く! 待て! 待つのじゃ!」

「さっきから言ってますが、小動物しかいませんよ」


 ビアンカさーん! さすが、あなたは僕の女神さまです。この災難が通り過ぎたら、僕は何でもしますよ!


「じゃあ、何じゃあの大きな二足歩行する豚は?」

「そ、それは……」


 そこは言い淀まないで! ビアンカさん! 僕を守って!


「あれはオークじゃ! そう! これは勇者教会の聖女として見過ごせぬ! 成敗してくれる!」

「ピ、ピ、ピギャーーーーーーーーッ!」


 あぁ、神さま……。どうして僕だけこんな目に合わなくちゃいけないんですか!


ちなみに、ピュリーヒとは初代勇者の側についていた伝説の聖女の名前です。


ほら、あのシロクマ、一応、メスなんで。


次回、064.理不尽を目の当たりにする王女様

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