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062.久しぶりに和食を食べた勇者の絶叫

 

「私も師匠と同じものを要求します! すぐにこれと変えてください! コック殿!」


 勇者クズノキ君は血走った眼をして八郎ちゃんの襟ぐりを掴みました。


 やめてあげてください! このまま見ると、勇者なのに犯罪者にしか見えません!


「そうは言っても勇者殿。この料理は規則なのでござる」

「規則?」


 この虫料理の数々が規則って何ですか?


「実は勇者保護法というのがあってな。貴族たるもの勇者が来たら、この米大夫の精進料理でもてなすというのがしきたりなのだ」


 レイラさんは骨付き肉に豪快にかぶりつきながら答えました。


 いや、この料理のどこがもてなしになるんでしょうか? これは絶対に罰ゲームでしょ!


「今まで和食というものは百足をかき揚げにしたり、得体のしれない白い液体を固めたもので豆腐のように見せかけることしかできないと聞かされていました」


 その得体のしれない液体は聞かなかったことにしておきます。っていうか、ライスワームと同じことなんでしょうか! 正直、この世界の和食はひどいと思うんですけどね!


「しかし、そこにある親子丼は何ですか!」


 この米は虫を炊いたものですけどね!


「私はこの世界に来てから4,5年経ちます。これまで私は行く先々でいただくこの精進料理に我慢してきました」

「なのに、この世界には親子丼を作れるほどの技術があったのですか!」

「これはそこのオークから教えられたものでござる」

「やはり師匠でしたか! さすがです。こんな美味しそうな親子丼を何も見ずにイメージだけで思い浮かべるのですから! 素晴らしい!」

「近い近い」


 そんな血走った目で近寄られたら、怖いですよ。


「おっと失礼。ところで、勇者保護法の第一条は何だったか覚えているか?」

「「「まったく」」」


 いや、絶対覚えているでしょ! なのに、どうしてみなさん素知らぬ顔をしているんですか!


「勇者は力が強いが、心は弱い。そのため、甘やかさなければいけないのだ!」

「まぁ、それは知っている。だが、これは200年来の伝統だ。そんなにオヤコドンが食べたかったらこのご馳走を食べてからにしろ!」

「何だと? こうなったら、お前と戦ってやる! 一度くらい貴様とは戦いたかったからな!」

「レディにそんなことを言うのは失礼ではないか! まぁ、稽古をつけるという名目なら、ぶちのめしても構わんだろう! さぁ、いくらでもかかってこい!」


 いきなり戦闘ですか! せっかく人が親子丼を食べている途中なのに……。騒がしいですね。


「食事中にそんなことをしてはいけません!」

「そういえばそうでした。稽古は食後にしよう。自動殺戮機械オートキリングマシーン

「そうだな。オーク殿に止められたらしょうがない。この骨付き肉を食べ切ったら、お前を地平線のかなたに吹き飛ばしてやる!」


 ******


 あの後、自動殺戮機械オートキリングマシーンと勇者クズノキとの稽古という名の戦いが始まりました。結果はみなさんのご想像の通り自動殺戮機械オートキリングマシーンの勝利でした。完全勝利でしたね。


 しかし、あんなにボロボロになって笑っていられるなんてどこか壊れているんじゃないでしょうかね。僕には真似ができませんよ。こういう人じゃないと魔王軍の大隊長と戦えないのでしょうかね?


「なんですか! この数多の宝石が輝くような料理の数々は!」


 今、なんかどこかで聞いたことがあるようなセリフが聞こえた気がするのですが、まぁ、こう言いたくなるのも仕方がありませんよね。


 何しろ、本物のご馳走が目の前にあるんですからね。


 肉じゃが、生姜焼き、唐揚げ、天ぷら、などなど。少なくとも、そこに虫はいないように思われます。正真正銘の和食に見えます。


「これは拙者がオークから聞いたものを作ったのでござる。お主にはどうしても精進料理を食べてもらいたかったが、お嬢に言われた以上しょうがあるまい。さぁ、とくと召し上がるのでござる!」

「うまーーーーーーーーーーーーい!」


 怖いです。こんなに大声で叫ぶのも分かりますが、少しひきました。なんかこの喜び方は不気味です。


「あぁ、なんてことだ。たかが肉じゃががこんなにおいしいなんて! おお! これは生姜焼き! あぁ、みそ汁も百足やマンドレイクが無いのを飲むのは何年ぶりだろうか。染みる! 心の奥底に染みてくる!」


 みそ汁に百足とマンドレイク? 食べる人を殺す気なんでしょうか? こんな料理を思いついた人の正気を疑います。


「そういえば、これを食べたお主にどうしてもやってもらいたいことがあるのでござる」

「何でしょうか?」


 八郎ちゃんとクズノキ君が何やら怪しい話し合いをしています。


「師匠!」

「何ですか? 急に!」

「師匠のその脚を一本分けてください!」

「な、な、な、なぜ僕の右足が必要なのですか? そもそも、あなたの脚は教会に行けば、いつでもどこでも再生可能でしょうが!」


 話が急です! なんで僕の脚を狙うんですか!


「私が師匠の脚を義足に求めるなんて畏れ多い。これは豚カツにしたいがためなのです」

「義足よりももっとひどいこと言っているのが分かっているのですか!?」


 豚カツにする方が畏れ多いでしょ!


「食は何よりも大事なのです! だから、師匠! 僕の血肉とな」カキーーーーン!

「なんてことをしたのでござる! 勇者を吹き飛ばすなど違法行為でござるよ!」


 あぁ、ついやってしまった。手が勝手に動いてしまったんだ。僕は悪くない。そう。これは正当防衛なんだ。だから、悪くない。


「僕は魔物です! だから、そんな法律なんて関係ありません。あと、これはあくまで正当防衛ですよ!」

「オーク殿の言うとおりだ。そんな法律など関係ない」

「一応、マザーにはテルしておきますよ」

「いやーー! それだけはやめてくれーー!」


 法律よりもお母さんが怖いってなんかおかしいですね! そんなにあなたのお母さんは怖いんですか!


次回、063.シロクマが屋敷にやって来た!

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