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061.次の来客はどんな人?

 

 どうもオークです。


 今、レレミナちゃんのメイド服姿を心のハードディスクに刻み込んでいるところです。


 いやぁ、メイド服姿って前世ではあんまり興味はありませんでしたし、むしろなんかそういうのを着ている人を見るのが恥ずかしくなるのです。そういえば、あのときなぜそう思ったのでしょう? 今思うと、不思議でしょうがありません。


 まぁ、今はレレミナちゃんのポージングの一つ一つを刻み込んでいます。


「いいよ。次は上目遣いをお願いします」

「こんな感じでいいの?」


 ひゃっほー! 素晴らしい! これは実に素晴らしいです。——あの人さえいなければ……。


「お、オーク殿。わたしもメイド服を着たのだがどうだろうか」

「あぁ、良いと思いますよ」

「なんだ! その特に興味ないとでも言いたいその目! なかなかそそるものがあるのだが、さすがに今は褒められたいんだぞ! 特にそこのサキュバス臭い女を褒めてなぜわたしを褒めないんだ!」

「あなたには恐怖しか感じないので」

「何だって!」


 まぁ、馬子にも衣裳とはこのことか、と思ったりするのですが、そんなこと言ってしまったらますますこの人の怒りの火に油を注ぐだけなのでやめておきます。


 さて、今、この屋敷には僕、レレミナちゃん、そこで恥ずかしげにたたずむ天敵その1、そして、年増の天敵その2さんがいます。どうやら、僕の同胞たちは頑張っているそうですね。もっとがんばれ! そして、僕を森に帰してくれたまえ!


「今、何を考えていたのかしら?」

「何でもありませんよ。メイド長様」

「じゃあ、あなたも着てみる? フリルのついたかわいいやつを用意しておいたから」


 メイド長は大きめなメイド服を僕に見せました。


「すみません。僕のメイド服姿を見て誰が得するんですか?」

「わたしは見たいぞ! 絶対に見たい!」

「私もオークさんとペアルックしたい!」


 メイド服のペアルックってあって良いんですか?! 僕には絶対にできませんよ。


「僕は絶対に着ませんからね!」

「わたしも精神衛生上きついものがあるからできれば着てほしくないなぁって思っていたの」

「じゃあ、なんで提案したんですか!」

「仲間外れにされてしょんぼりしているように見えたから」

「僕はそんなこと思ってもいませんよ!」

「師匠!」


 うん? なんだこの声は?


「師匠じゃないですか! こんなところで何をしていたんですか?」

「いや、僕はあなたみたいな筋肉ムキムキの日焼けした男なんて知りませんよ」


 そもそも、そんな変態化の話に出てきた事ありましたっけ?


「それは失礼しました。しかし、これは師匠がいない間、必死に鍛錬に鍛錬を重ねた成果なのです。どうですか? この大胸筋!」

「うん、すごいんじゃない?」

「そうですか! ありがとうございます」

「で、何しに来たのだ? クズノキ。わたしは今、オークさんと重大な話をしていたのだぞ」


 メイド服を着せることが重大な話? なんてことを言うんですか! それよりもそこの筋肉を追い出してくださいよ!


「それは魔王との戦いに敗れ、傷ついていた私こと勇者ケンマは再び師匠に修行をつけてもらおうと東奔西走していた」


 勇者クズノキはクズノキケンマくんだったのですね。知りませんでした。


「そんなある日、王宮に立ち寄ると、なんと化け物屋敷にいると聞いたのだ」

「わたしの屋敷は化け物屋敷ではないぞ」


 いや、化け物だらけでしょ。ここってたくさん化け物がいるでしょ?


「とにかく師匠! 修行をつけさせてください!」

「とりあえず、ご飯が食べたいので待ってください」


 だって、朝から何も食べていないからね!


「ごめんね。私、ご飯が作れないの。だから、八郎ちゃんが帰ってくるまで待っていてね」

「それはメイドとしてどうかしていると思う!」

「それに、食料が無いのにどうやって食事を作れば良いのかしら?」


 そうだった!


 ******


 レレミナちゃんは「親にメイドになったのを伝えに行く!」と言って足早に去って行きました。


 ところでその親は人間でしょうか? 少なくとも人間の村で暮らしているみたいなので、そうなのでしょうね。


 それから、暇になった僕はメイド服のお嬢様とメイド長、そして、逆さ吊りになったクズノキ君と談笑をしながら、メイドさんたちの帰りを待っていました。


 しばらくして、メイドさんたちが帰ってきました。メイド服は血で紅く染まっていました。いったいオークを何匹殺したら、そんな色になるんですか?


「ただいまリターンしました。レディ」


 その中でもなぜか一番血塗れだった片言さんがそう言いました。


「うむ。よくやった。——ところで、八郎はどこだ?」

「八郎なら、たぶん、今頃オークイーターと今後のオーク肉の出荷について話し合っているものだと思われますが?」


 出荷!? 出荷って何ですか! まさか、彼らはもうあの世に逝ってしまうのですか! あんまりです! 


「まぁ、出来る限り早く帰って来いと伝えておけ。オーク殿が腹を空かせているからな」

「じゃあ、お嬢様が作ってはいかがでしょうか? 幸い森で食料をある程度確保しましたよ」

「お母さまからそれはダメと言われたのだ。わたしが台所に立つと何もかも破壊してしまうから切りたくなったらオークを斬りなさいと教えられているから無理だ」


 いったいどうしたら、刃物を持つだけで何もかも破壊してしまうんでしょうね。


 あと、お母さん。その教えはダメでしょ。あなたの教えによっていったいどれほどの犠牲があったのか分かっているんですか?


「ところで、なぜ勇者はドングリの木に逆さに吊るされているのですか?」


 ビアンカさんがかわいらしく首を傾げます。


 こらこら! レイラさん! どうして僕をそんなに睨みつけるんですか! やめなさい!


「あぁ、それでしたら、僕が彼に課したんですよ。修行をつけろつけろとうるさいものですから忍耐の修行だと言って逆さ吊りにしたんですよ」

「それってただのトーチャーでは?」


 バレてましたか。まぁ、僕には関係ありませんよ。だって……。


「これは素晴らしいです。ものすごくいいです。血の流れを上手くコントロールすれば、怪我をしても問題ないですからね」


 やられている本人が喜んでいますからね。ところで、どうしたらそんな発想に至るのでしょうか? そのポジティブさを教えて欲しいものです。


「オーク!」


 こ、この声は!


「オーク。今日こそはお前の腿肉を奪いとってやるでござる!」


 また、あなたですか。いつまで経っても懲りないですね。僕を見るなり包丁を投げようとするのですから。


 あと、体が血で紅くなってるからもっと怖くなっています。あぁ、怖い!


 しかし、そんな八郎ちゃんをメイド長が羽交い締めにしました。


「はいはい。さっさとご飯を作って頂戴。あと、今日は勇者様も来ているから勇者様の分も作らなくちゃいけないよ」

「そうは言ってもこれは拙者の使命なのでござる! ——待つでござる。勇者がいるだと? それは腕が鳴るでござる。オーク! お前も食べたいでござるか?」


 フッ。このロリコックの笑みを浮かべるときは大体僕の期待が裏切られるんですよ。だから、僕は当然断ります。


「師匠も食べてはどうですか? 美味しいですよ」


 吊るされている勇者クズノキ君はそう答えました。


 えっ? そうなの? うーん。どうしようか? 困ったものだな。


「別に僕はいいです」


 何より彼女の笑みが怖いですからね。それに、もし美味しい物が出されていたら、そのときは彼を言いくるめて貰えば良いですしね。


「そうか。それは残念でござる。では行って参る」


 どんな料理が待っているんでしょうね。なんか楽しみです。


 ******


 一足先に勇者クズノキくんの料理が出来上がってクズノキ君は逆さ吊りの訓練をやめて、食事を始めました。


「こ、これは……」


 僕は怪しい料理の数々を見て、恐怖のあまりふるえました。


「あぁ、これはキングコブラの蒲焼です。で、これは百足のかき揚げです。どれも美味しいですよ」


 バリバリボリボリと音を立てながら、クズノキくんは僕に得体の知れない料理を僕に差し出すのでした。


「いえ、結構です」

「これがオークの分でござる」

「はぁ……」


 まさか、そこのかわいそうな子が食べているような物ですか? 僕は普通の人ですからそんなものは食べたくありません!


「これは親子丼ではないですか!」

「最初、親子と言われてなんなのかさっぱりでござったが、詳しく聞いてみたらこんな発想は無かったでござる。いやぁ、素晴らしいですな」


 そうですかぁ。そのあなたが持っている包丁を見なかったら、素直に喜べるんですけどね。じゃあ、いただくとしますか。


 うん? なんか隣のコブラを口に咥えているかわいそうな子がこっちを見てます。なぜでしょう?


「なんで師匠はそんな羨ましいものを食べているんですか!」


 え? なんで? 君は美味しそうにコブラの蒲焼でも食べていなさい。


次回、062.久しぶりに和食を食べた勇者の絶叫

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