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059.お留守番中のオーク

 

 どうも、オークです。


 つい先日のことなんですけど、哀れな同胞君たちがバケモノたちに滅ぼされると聞いた後、僕はなぜか部屋から追い出されたました。──たぶん、これで合っていると思います。うん。合っていると思う。


 まぁ、僕はオークですし、そんなオークに討伐作戦の内容を聞かれたくないから追い出すのは至極当然のことだと思いますが、もっと話を聞かせてくれてもよかったんじゃなかったのかなって思うんですよね。


 なんでそう思うかって?


 だって、今、屋敷に閉じ込められているんですよ。


 なんでそうなったのかと申しますと、昨日、いつも通り美味しいご飯をもらいに哀れな豚である僕はのこのこと女騎士様の屋敷(まのそうくつ)に足を踏み入れてしまったのですよ。


 そして、ご飯を食べるところまではよかったのですよ。異世界に来て初めて寿司を食べれましたしね。やけに豪勢だなって思いながら、マグロやエビを重点的に食べていったわけですよ。


 その食後にお茶を飲みましたね。なぜか洋間でコック(見た目は少女)が抹茶を点てていましたが、そんなことおかまいなしにごくりと飲み干したところまでは覚えているんですよ。


 そのときから僕の記憶がないんですよ。


 そして、気づいたら、僕は屋敷に閉じ込められていたというわけですよ。


 屋敷の中には誰一人いませんし、外に出ようものなら、電撃ビリビリが待っていますからね。


 ──僕は畑を荒らしに来た猪なのか! ってツッコみたくなるのですが、何もすることなくただただ広い屋敷を歩き回っています。


 ホントやることねぇ!


 例えば、厨房に入ると、冷蔵庫みたいなものがありました。僕はあふれ出てくる涎を啜り、その扉を開けのでした。


「開け! 扉!」


 えぇ、その冷蔵庫の中身を食べようと思って開けましたよ。だって、こういうときは正直に言っておかないと、後々嫌な目に合いますからね。


 あと、さっきの「開け! 扉!」は合言葉なんだよ。ほら、アラブの盗賊たちだって、洞窟を開ける際に合言葉を言っていたじゃないか。


 しかし、その中身は空だったんですよ。すっからかん。


 別に、僕が夜な夜な厨房に忍び込んで食べつくしたわけではありませんよ。


 そもそも、正しい合言葉を言わないと開けてくれない仕組みになっているんですよ。それを教えられたのが、今日、僕の枕元に置かれていた手紙だったわけです。いったい誰がこんないたずらをしたんでしょうね!


 八割方どうでもいい情報ばかりでしたが、とにかくいろんなことし放題だ! って思って、屋敷を駆け回ってみたものの何度も何度も肩透かしを食らわされた気分ですよ!


 冷蔵庫は空だし。


 初めてまともな湯船で極楽気分を味わおうと思ったら、その浴室はなぜか毒まみれだし。まさか、キング君の体液を量産しているのですか? そんなことしたら、この世界がレイラさんのモノになってしまいますよ! 


 あと、本を読もうとしたって本自体がほとんど読ませてくれないし。ほんと、なんで本が読む人を選ぶんでしょうね。普通、逆だと思うんですけど。


 まぁ、そんなわけで何もすることなくのうのうとぼーっと過ごしているわけです。


 ほんと、やることねぇな。


 ところで、僕の哀れな同胞たちはどんな目に合っているのでしょうか?


 少なくとも、あの作戦には過剰戦力が投入されていることは間違いありません。


 オカマに女騎士にメイド100人以上、ロリコックにお爺さんにマダムですか。聞いた限りでは女騎士以外戦力外のように感じるのですが、油断なりませんからね。むしろ、彼らの身を案じてしまいます。


 それに「オークを倒すのは女性の嗜みですわ」なんておっしゃられる人もいますからね。


 あぁ、怖い。怖い。


 あれ? よく考えたら、おばあさまがいませんね。どこにいるんでしょう。


 一番戦力外の方だと思うんですけど、屋敷を見回しても見当たらないんですよね。


 まぁ、今の僕には関係ないか。


 あぁ、退屈だなぁ。まぁ、久しぶりに心休まるって思えばいいんですよね。


 ほら、最近、ずっとバケモノたちに追い回されたり、躾けられたり、とにかくひどい目にあわされてきましたからね。


 うん。こんなラッキーな日を無駄に使ってはいけませんね。


 だけど、何もやることが無いんだよな。


 あぁ、どうしようかな?


「じゃあ、積み木でもする?」

「積み木? そんなものここにはありませんよ。せいぜい拷問器具しかありませんでしたよ」

「じゃあ、SMごっこ」

「何ですか! そのいかにも危険なごっこ遊びは!」

「しばき合い悶え合うごっこの略だよ!」

「それって、SMのまんまじゃないですか!」

「双方向であることも忘れずに」

「そんな情報入りませんよ! って、さっきから誰が喋っているんですか?」

「わたしだよ!」


 僕は目を疑いました。そう。今まで会えなかったあの人。そう愛しい人。


「レレミナちゃーーん」


 レレミナちゃんと聞いて、ほとんどの人は首を傾げているかもしれないので、説明しますと、彼女はサキュバスで魔王軍の第三大隊大隊長をしています。ついでに、あのレミオラさんの妹さんです。──説明終わり!


「なんか近い。近い。」

「感動の再会なのに、どうして離れてしまうのですか!」

「いやぁ、いきなり、我を忘れて襲いかかってきたと思っちゃって」


 なんと! 今までのレレミナちゃんはスキンシップの多かったはずなのに! なぜ襲いかかったって言うんですか! 絶対、あのお姉さまのせいだ! むっつりお姉さんのせいなんだ!


「ところで、どうしてこんなところに居たの? あちこちしらみつぶしに探していたのに」

「あぁ、それは黒い得体のしれない大群に襲われたのですよ」

「ゴキブリ?」

「メイドさんですよ! メイドさん! なんでゴキブリだと勘違いしちゃうんですか!」

「だって、黒い得体のしれない大群って言われたものだから」

「そうだった!」


 いやぁ、ついうっかり言ってしまいましたよ。だって、黒い得体のしれない大群って間違っていないでしょ? つい危険な方々に攫われたって言いたくなってしまったのですよ?


「あれ? ところで、どうしてここに来たんですか?」

「なんかオークさんの臭いがプンプンするメイドさんを森で見つけて、あとをついていったらここに辿り着いたの。そしたら、アンドルセン家の屋敷だから驚いちゃったの」

「まぁ、魔王軍の中でも危険な奴らだって知られているんですから驚きますよね」

「だって、お姉ちゃんが今、働いているところなんだよ。それなのにオークさんがここにいることを隠すなんてひどい! あんまりだよ! オークさんもそう思わない?」

「え、えぇ……」

「でしょ? なんで隠したんだろう?」


 ──それは僕を独り占めしたかったんですよ。そう言おうとして、止めました。


 もし、そんなこと言ったらレミオラさんの目が怖いです。絶対に死んだ目をして僕を見るに決まっていますよ! だから、言えません。だって、僕は人を怒らせないかわいい生き物だからね! うん。かわいい豚さんだもの! 人の悪いことなんて言えないよ!


「まぁ、なんか事情でもあったんじゃないですか?」

「うん。そうだね。じゃあ、何かする? オークさんも暇でしょ?」

「じゃあ、SMごっこでもしますか!」

「うん。そうしよう!」

「じゃあ、遊び道具を持ってきますね」

「お願いしまーす」


 こうなったら、あそこにあった拷問器具の中で比較的殺傷性の低いものを選んでしばき悶え合うことにしましょ……。


 ──あれ? これは幻かな? 


 だって、まだ朝の八時だよ。なんでここにレイラさんがいるの?


 哀れな同胞君たちはどうしたの? もう仕事終わっちゃったの?


 うん。これは夢なんだ。


 そもそも、レレミナちゃんがここに居るのがおかしいんだ。


 だって、こんなビリビリ電撃地獄をどうやって潜り抜けてきたんだ? おかしいことじゃないか。


 それに、哀れな同胞君たちもそんなに弱くないはず!


 そう。これは夢なんだ。


「オーク殿。そこにいるサキュバスは何だ?」

「え? 気のせいでしょ?」

「そこにいるサキュバスは何だと聞いているんだぁぁぁぁ!」


 そんなに揺さぶらないでくださいよ。夢が醒めちゃいますから。──って、夢じゃねぇ!


次回、060.サキュバスが、サキュバスが……

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