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054.哀れなオークたちが語りあうところに至るまで

 

 そういえば、オークとはどんな姿をしていると思いますか?


 この世界の場合は一応、茶色やピンク、黒などそこら辺にいる豚や猪のような色合いをしています。


 少なくとも、赤色とか青色、ましてや緑色のオークなんて僕は見たことありません。


 さらに、この巨体。


 たぶん僕の五倍くらいあります。人で換算すると大人十人分ですね。そんなオーク、僕は今日この日初めて見ました。


 ただ、少し疑問に思うことがあります。


 それは目隠しされていることです。


 なぜ目隠ししているのでしょう?


 ひょっとしてこれは一種のプレイなのでしょうか?


 ダメですよ。そんなことしていたら……。


「な、な、な、なんだ。このオークは!」


 ほら、隣にいる変態が喜んでしまうじゃないですか。


 ……って、僕に抱きつくんですか?!


 普通、大きなオークの方に駆け寄るんじゃないんですか?


「涎を垂らして僕に抱きつこうとしないでくださーーい!」

「だ、だ、だって、考えてもみろ! この巨体。これほどまで大きなオークはオークロードどころではない! これほどの大きなオークはロマンなのだ!」

「へー、そうなんですか」


 しかし、この変態が目隠しに反応しなくてよかったです。まだそこまでいってなくて安心しました。


 それならそれで、さっさとあっちの方に行ってくださいよ。


「さらに、この緑色。こんな色をしたオークなど伝説にしか出てこないぞ!」

「伝説? なんですか? それ?」


 すると、さっきまでレイラさんの背中に乗っていた彼女が口を開きました。


「この緑色の体は魔素が溢れていることの証なの。オークにとってはまったく違う色をしているから不吉以外の何物でもないのだけど、この色はきっと強いオークになるわ」

「へー、そうなんですね」


 それなら、この人を早く引き剥がしてくれませんかね。——あっ、今、耳噛んできた! こら! やめなさい!


「そうだ! いっそのこと、この子に運んでもらわない? たぶん、早く着くわ」

「いいな。それ」

「ま、まさか、あれにしがみつけ、と言うのですか?」

「「そうだけど(が)?」」


 これはまずいことになりましたね。さっさと帰りましょう。


「僕はゆっくり帰るので、みなさんで楽しく帰っ……。あれ?」


 なんか首根っこを掴まれている気がするのですが、まさか首を絞めるつもりじゃないですよね?


「オーク殿もこれほど大きなオークの上に乗れる貴重な体験をしなければいけないぞ! そう! これは楽しいことなのだ」


 レイラさんは僕の首根っこを掴み、パパビーナさんを背負ったまま、片手でゆったりと動くオーク(緑)の体毛を掴みました。


「ピギャーーーーーーーー!」


 どうしてこんなことに巻き込まれないといけないんですか!


 ******


 はぁー。ようやく変な乗り物から降りることができました。


 まさか、こんな目に合うとは思いませんでした。吐きそうです。マジで死ぬところだった。


 あの二人は弱り果てた僕をこの見た目はいかついオーク(緑)の隣に置いて、そそくさと屋敷へ入って行きました。


 どうせ危険人物が職場放棄して二週間経ったから、おやつも携帯食しかないのに……。本当にあの人たちはどこか抜けているところがありますね。


 さて、僕は彼に話しかけたくてうずうずしています。


 これまで会ったオークは意味不明な言動をするおかしな生き物だったのに、このオークはかなり大人しいのか僕に攻撃しようとしません。


 まるで奇跡を見ているようです。


 あっ! 今は女性がいないからか!  


 ようやく納得しました。


 まぁ、そんな悲しい事実を思い出したとしても、一度くらいオークと会話してみたかったんですよ。


 ほら、僕は小さい頃、オークの村で暮らしていたんですが、記憶が無いんですね。


 ドングリクッキーとか命に関わる重大な情報以外は覚えているんですけどねー。


 なぜでしょう?


 まぁ、そんなこと気にせず、彼に話しかけてみま……。


 あぁ、危なかった。


 え? なにが危なかったかって?


 決まっているじゃないですか。


 このオークの向こう側に危険生物がいるんですよ!


 包丁でジャグリングする危険生物が!


 どうやら、このオークをなんかお嬢様の贈り物だと勘違いしているんですよね。


 まぁ、こんなオークが動くとは思いませんよね。


 今見ると、このオークってほんと大人しいんですよね。


 ただし、ゆったりしているように見えて急に走り出すんですよね。なんかそういうオークって怖いですね。


 ほら、どんな行動をするのか読めないんですよね。僕の周りにいる変態たちなんてまさにそうですね。


 みなさん、いつも変なところで出てきて僕を襲いにくるんですよね。


 さて、たぶん、危険人物も去ったでしょう。


 このオークとはなんだか気が合いそうですからね。


 さぁ、話しましょう!


 シュッ!


 咄嗟に白刃取りをしてしまいましたが、——これは包丁ですね。


 ——あれ? この包丁……。まさか!


「これはこれは、オークではないでござるか。よもやこんなところにいたとは……。拙者も迂闊でござっ……」


 ——あれ? 止まりましたね。どうして動かないんでしょうか?


「もしやこれもオークでござるか!」


 えっ! これがオークだと気づいたの?


「いやぁー。まさか緑色のオークがここまで成長するとは。驚いたでござる。たしか、緑色のオークは珍味として王都では高く取引されているはずでござる!」


 あれ? なんか急にこのオークの皮膚が潤ってきたんですけど!


「これは僥倖。よもや珍しいオークが二匹もここに集まるとは!」


 これって、まさか! いつものパターンですよね! 絶対そうですよね!


「ブギギギャーーーーーーーーーー!!!」


 あれ? まさか! 僕が逃げ出す前にこっちが動くんですか?


 ねぇ! まだ僕、君にしがみついているままなんだけど!


「ブギギギャーーーーーーーーーー!!!」


 なんで僕ごと逃げ出そうとするんですかーー!


「待つのでござる!」


 しがみつくのも地獄。降りるのも地獄。もう! なんでこんなことになるんでしょうね!


「誰かたすけてーー!!」


次回、055.哀れなオークたちの語らい 

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