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045.嫌いなアイツがやって来た!

 

「ねぇねぇ」


 また、不思議系ロリメイドさんが現れましたね。


 正直、彼女には(精神的に)ひどい目にあってきたのでいい思い出はありません。


「君は暇なのかな? それとも、僕が好きなの?」

「好きなわけないじゃん。暇なの」

「じゃあ、僕が薪を割るのを邪魔しないでそこら辺で遊んでくださいよ!」

「遊んだら、ババアに怒られる」


 僕は咄嗟に彼女の口を塞ぎました。


 こら! そこの君! 変質者を見るような目をするんじゃない! 僕の身を守るためにこれはやらなくちゃいけないことなんです!


「そんなこと人前で言っちゃダメでしょ! ひょっとすると、誰か聞いているかもしれませんからね」

「今、メイド長なら眠っているから大丈夫」

「今、朝の十一時だよね! どうしてメイド長が寝ているの?!」

「そういえば、十一時って朝なの? 私は昼だと思ってきたんだけど?」

「そんなの人それぞれでしょうが!」

「彼女は月に一回一日中寝ることによって睡眠をとっているの」

「そんな生き物、僕は知りませんよ!」


 月に一度しか寝ていないのに、(他称)七十代後半の女性が年相応の姿をしていないのはどういうことなんですか! もうあの人が人間ではない何かとしか思えませんよ。


 え? あの人がエルフ? あんなにし、——ゲフン。エルフならもっと耳が長いですよ! 耳が長くないエルフはエルフじゃないでしょうが!


「あの人、「メイドたるもの休日は無い」って言ってたんだけど、最近、働き方改革があってそれでどうしても月に一日は休みを取らなくちゃいけなくなったんだよ。やることもないからあの人はしょうがなく寝ているわけなんだよ」

「年中無休が本当にできる人間なんて僕は知りませんよ! 本当にあの人は人間なんですか?」

「じゃあ、あのお嬢様は何なの?」

「人の形をした化け物です」

「じゃあ、言っとく「待ってくださいよ!」——何?」

「誘導尋問はダメですよ。これは僕の本心ではなく、あくまで彼女を客観的にとらえただけなのです!」

「そう言っとくね」

「ダメだー!」


 どうしてこんなに人の言っていることを理解してくれないんでしょうか! 


「とにかく、最近、凄腕の新人が来たから暇なんだよね」

「まぁ、彼女は素晴らしい女性ですからね」

「へぇ、サキュバスなんだ。その人」


 えっ!


「読まないでって言われても読んじゃうんだよね。まぁ、別に関係ないよ。魔王軍の密偵くらいならどこにもいるからね」

「そうなんですか。それはそれでダメだと思ってしまうんですけどね!」


 ——敵まで招いていたらいつかとんでもない目にあいますよ! って言いたいところですが、ここの人はそんな人もメイドにしてしまうか、奴隷にしちゃうのでしょうね!


「あっ! 忘れてた。客人が来たからアンタを呼びに来たんだ」

「客人? そんな人がいるわけ、——その人って、オカマでしたか? それとも、黒髪の男の子? はたまた終末期ですか?」

「最後の終末期は知らないけど、全部あっていないよ。図体の小さい髭もじゃのおじさんだからね」

「——彼は友達ではありません」


 そんな気持ち悪い人、僕は知りません。


「あの人は友達って言ってたけど?」

「あんな奴は友達じゃないんですよ。だって、あの人に僕を売ろうとしたんですよ!」

「それなのに、今、ここで優雅に暮らしているじゃん」

「そ、それはしょうがないじゃないですか。あの変態兵器が僕を甘やかすんです!」


 ほら、あんな豪勢な食事を出されたら、食べたくなるじゃないですか!


 それに、僕は優雅に過ごせていませんよ!


 優雅に過ごせているのなら、夜も快眠できているでしょうね!


「まぁ、とにかく一度会ってみたら? じゃないと、サキュバスのことばらすよ」

「行きましょう!」

「言っておくけど、あのサキュバス、レズだからあんたのことまったく興味ないよ」

「それは初耳ですよ!」


 ******


 これは何ですか? デジャブですか? デジャブにしても気持ち悪すぎます。


 小さいおじさんが門にへばりついて頬ずりしています。ヤバい。ヤバすぎる。


 異世界の変態は門に自分の臭いをマーキングするのが好きなんですね。一つ勉強しました。


「おい、オーク! オーク! オーク! お前の友達のクインブルだぞー! いい加減、こっちに来いよ!」

「いい加減、セイしたでしょう? リトル。ここにはオークはいません」

「そんなわけがない。王国二番目の占い師がここに居るって言ったんだ!」


 王国二番目の方ってすごいですね。見事的中していますよ。


 ここにいる一番目の人と今すぐ入れ替えて欲しいくらいです。


 あと、あの人はリトルではなく、リトルメンですからね!


 くれぐれもあのような髭だらけのおじさんを子供のように呼ぶのはやめてあげてください!


「しょうがない。オーク! トークしてあげなさい」

「え!」

「出た方がいい! 今、片言は怒っている」

「あのう。片言っていうのはさすがにマズ「カムヒア! ナウ!」——アイアイサー!」


 僕は片言さんに言われるがままにあの蝉のように門に纏わりつく謎の生き物と相対するのでした。


「ふしゅー!」


 普通、人からは聞こえてはいけない排気音が聞こえたので、少し退却しました。


「なんか変な息吐いていますけど、大丈夫なんでしょうか?」

「アンドルセン家の変態を一人吹き飛ばしたあなたならドンウォーリーです」


 その目はなんですか。ちょっと怖いです。


「はい。オーク、行きます」


 怯えてしまった僕は深呼吸を八回してからこの謎の生き物に声をかけるのでした。


「いい加減、そこにへばりつくのはやめた方がいいぞ。クインブル氏」

「なぁなぁなぁなぁ。オークよー。てめぇ、いいご身分だなぁ!」


 いきなりやっかみですか。この人は分かっていないようですね。ここがいかに地獄であるのかをみっちり教えないといけないようですね。


「いいご身分とはどこにあるのでしょうか? 生憎、僕からすれば、戦じょ「天国」ですよ」


 天国? そんな甘いこと言っていられる人がこの世にいるとは思えないんですけどね?


 どういうことなんでしょ……「やぁ、オーク殿。ちょっと嫌な予感がしたから来たのだが、戦場と言おうとしたのはうそだよな?」


 これって今、緊急事態ですよね。


 目の前には門にへばりつく狂人と化した特殊生命体K。


 後ろから僕にへばりついてくるのはかの自動殺戮機械。


 こんな事態、いったい誰が想像できましたか!


「うそじゃ「うそだよな?」——うそじゃ「うそだと言ってくれないのか?」——うそです」

「さすが、オーク殿だ。さぁ、今日はベルヌ腐海で釣れた極上のマグロを用意したのだが、食べてくれるよな?」

「食べますが、なにか?」


 腐海という言葉が少し気になりますが、極上のマグロですか。気になりますねー。


「ではさっさと行こうではないか!」


 というわけで狂人K、さらばだ。——あれ? なんか、涎を垂らしていますが何でしょうか? 僕は美味しくありませんよ。 


「レイラ様ー!」

「ギャー!」


 たしかにそう叫びたくなる気持ちは分かりますが、あなたも僕に似たようなことをしていますよ?


「レイラ様、レイラ様、レイラ様、レイラ様、レイラ様、「放水銃放てー!」ゴババババ」


 メイドさんたちは慌てて謎の生き物に向かって放水銃を放つのでした。


「さぁ、レイラ様。今のうちにイスケープしておいてください。あのトラッシュは後で処理しておきますので」


「分かった」と、彼女は青ざめた顔で答えてから、僕に向かってこう言いました。


「た、頼む。すまないが、オーク殿。先に屋敷に行っておいてくれないか?」

「分かりましたが、あなたはどこへ?」

「ちょっとお花摘みに」

「あなたがそんな冗談を……。マジ?」

「マジだが?」

「なんかすみませんでした」


 ほら、お花を摘みに行くって大体ジョークじゃないですか?


 そんな台詞を実際に口にする人なんて生まれてはじめて見ましたよ。


あの後、彼女は特殊生命体との遭遇により昼食までどこかにこもっていたとか。


次回、046.不屈の男

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