044.いつの間にかメイドになっていた例のあの人
「ど、ど、どうしてあなたがいるのですか?」
「あなたの監視に決まっているでしょ?」
そこにいたのはみなさんお馴染みサキュバスさんです。
なんということでしょうか。これほどまでメイド姿が似合っているとは……。素晴らしいです。素晴らしすぎます。
「じゃあ、その魅惑的なメイド服は?」
「これはあまりにも不服なことですが、ここのメイドになったのですよ」
「省略しすぎです!」
「あなたを監視していると、不思議な女性と会いました。彼女は『貴女がメイドになってくれるのなら至近距離で監視してもいいわよー』と言っていました」
「それって、あの人ですか?」
「あの人では分かりませんが?」
「ちょっと、小皺が目立つ女性ですけど自称28歳の方ですが」
「あぁ、その人です。あの人は正直、身の危険を感じました。一応、十キロくらい距離を空けて監視をしていたのですが、気づいたら、その人が後ろに立っていたわけです」
そう考えると、彼女はいったい何者なのでしょうか?
十キロ先まで把握するなんて人間の所業じゃありませんよ!
「ところで、いつからここに居るのですか?」
「あなたが豚小屋でいやらしい教育を受けて三日たったころに働き始めましたが、それが何か?」
「あれはいやらしいの要素なんてまったくなく、ただの拷問ですよ」
「拷問にしては少し喜んでいたような気がするのですが? ほら、涎を垂らして「そんなことは決してありません!」
まったく、僕のことを変態呼ばわりするのはやめて欲しいですね。僕の精神衛生上害にしかなりませんよ!
「はぁ……。とりあえず、後日、うちのバカ大隊長がここに来ますのでよろしく伝えるように言われたので、さようなら」
「いや、あのゴミなんて関係ありません。久しぶりに僕と話しましょうよ」
「言っておきますが、彼はあなたのことを友達だと思っていますよ? それなのに、友達じゃない? そんなこと彼が知ったら悲しみますよ?」
えー! どうしてですか! あいつよりもむしろあなたに僕は会いたかったのですよ!
「その顔は何ですか? おちょくっているのですか?」
「気のせいです。そんなことより今日はよく晴れていますし、うさぎ狩りでもしませんか?」
ほら、あそこに親を親とも思わない憎たらしくも、実に愛らしいうさぎちゃんがいるじゃないですか。あなたも食べたのでしょう?
「うさぎ狩りとは……。やはり、あなたは弱いものを虐げる暴力的なオークなのですね」
「なんでうさぎ狩りでそんなこと言われなくちゃいけないんですか!」
「とにかく帰らせてください。正直、メイドとして雇われた割に仕事は無いのですが、あなたがめんどくさいので帰らせてください」
「ねぇ、仕事が無いってどういうこと?」
彼女は「しまった!」と言いそうな表情をしてから、そそくさと僕の元から立ち去ろうとしましたが、甘いですね。
僕ががっしり彼女をホールドしました。そして、僕はダンディな声で彼女の耳元で囁きました。
「仕事が無いってどういうことなんですか?」
決まった。これで彼女は僕に惚れました。絶対に惚れました。
「気持ち悪いので、離れてください」
「すみません。離れますから教えてくださいませ」
うーん。どうしてでしょうか?
あの女騎士さんなら、間違いなく喜びのあまり発狂してしまうのに……。
「この屋敷は20人くらいメイドがいたらやりくりできるんですよ。ただでさえ、食事はあのコックがすべてを取り仕切っているので、我々は掃除、洗濯以外は基本的にすることが無いんですよ」
「なんだって! だから、キーラさんは毎日、僕を拷問しに来れたんだ!」
暇だったら、僕を虐めることも余裕だよね! ほんと腹が立ちます!
「そうですね。いい加減、離してください。気持ち悪いです」
「僕は貴女がいなくなったら、死んでしまいます」
「その顔を止めて!」
ここのメイドさんって嫌なときは顔で示すんですね!
ちゃんと言葉で言ってくれないと分かりませんよ!
「話すことなんてありますか? 特にないでしょ?」
「ありますよ! そもそも、僕の願いを無視してあの人とあんなことをした夢なんて見せて、僕は許しませんよ!」
「オーク殿」
ん? なんか怪しい声がしましたね。気のせいでしょうか?
「いろいろ、夢の話については気になるが、このメイドは最近、私に色々教えてくれるんだよ。オークの手籠めの仕方とか、オークの好みとか、オークが好きな女騎士の特徴とか、いろんなことを教えてくれるんだ。だから、あんまり、付きまとってやるな」
やっぱりあなたですか!
「オークの好みとかオークの好きな女騎士の特徴とか僕は知りませんよ! そもそも、あなた、そんなフェイクニュースを彼女に言わないでくださいよ!」
すると、僕のホールドから離れてしまったサキュバスさんは女騎士様の方へ駆け寄ってこう囁いたのです。
「お嬢様。このオークは最近、ドジをするか弱い女性が好みだそうです。ドジをすれば、こやつは勝手に襲いかかってきますよ」
「そうか。ありがとう。なら、遠慮なく!」
突然、女騎士様は僕に向かって突進してきたのです。
「うぎゃー!」
これはドジでも何でもないし、か弱い女性に見えませんよ!
次回、045.嫌いなアイツがやって来た!




