041.超簡単! 自動殺戮機械の作り方
「すみません。話したいことがあります」
珍しく片言メイドさんが僕の小屋に来ました。
くどくど言いますが、いつの間にか解体屋のお爺さんからぶんどってしまったんですよ。別に彼からこんな小屋をぶんどるつもりなんて無かったんですよー!
さて、気を取り直して話に戻りましょう。
「何のことでしょうか? ひょっとして、一瞬、あのお兄さんと結託したことが癪に触ったとか?」
「確かにあれはどうしようもないトラッシュですが、レディのバッドな癖に付き合うミーたちがたったそれくらいのことでアングリーしません」
「けど、あのとき、門の前にあの人を待ち構えていたメイドさん、全員武装していたよね?」
「気のせいです」
「それを気のせいで済ませたら、町中に武装した人がはびこる世界になってしまいますよ」
「カントリーサイドではよくあるのでは? ほら、いつ盗賊がアピアーしてもおかしくはないので」
「そうだ! ここは異世界だった!」
「さっきからアナザーワールド、アナザーワールドと言っていますが、ユーはブレイバーなのですか? それにしてはどこからどうみてもオークにしか見えないなのですが……。——そうでした。あなたは自分のことをヒューマンだと思っているフーリッシュなピッグでした」
「その一言だけで僕を言い表さないで!」
「そんなことばかり言っているので、もうこんなに話し込んでしまったじゃないですか。ミーはユーにレディについて最低限知っておいてもらいたいことがあって来たのです」
知っておいてもらいたいこと?
あの人はオークに目が無いとんでもない変態兵器さんです。その一言だけで解決する話じゃないんですか?
「何ですか? ひょっとして、あの人の対処法ですか?」
「それがあったらぜひともティーチしてほしいです」
「あのお嬢様のそばにいたあなたでも知らないことを僕が知っているわけないでしょうが!」
「いや。これまでたくさんのオークをルックしてきました。どのオークもキルされてきたのに、ユーだけはアライブしている。それもワンイヤーオーバー。これはすごいこと。ベリーグッド」
「お世辞でも照れますねー」
「そんなことよりもテルしますからティーを用意してください。——しなかったらレディを一時的に夜中に解き放ちますよ」
「ラジャー」
何でお茶を用意しなくちゃいけないのでしょうか?
まぁ、しなかったら、この世で最も恐ろしい死に方が待っているようなので、頑張りますけどね!
******
「ぬるい」
「生まれてからずっと森暮らしの僕が紅茶の淹れ方なんて知っているわけないでしょ!」
「まぁこんなこと言うためにわざわざこんなハウスにカムしたわけではないので、テルしましょう」
「何ですか? さっきから話したいことがある、話したいことがあるって。ひょっとして、お嬢様のある「アーユーキディンミー?」——すみません。大人しくします」
「まず、レディがどうしてあそこまでのパワーを持っているか気になりませんか?」
「それってアンドルセン家っていう例の恐ろしい一家に生まれたからでしょ?」
「それだけではないからテルしようと思っているのですよ。レディがなぜパワフルなのか。そして、なぜオークに付きまとうのか」
「それは気になります」
「ベリーニア。離れて」
「ソーリー」
片言さんはコホンと咳をしてから語りだしました。
「レディがボーンする前に遡ります」
「そこまで行っちゃうの!」
「そうです。そこまでいかないとレディのパワーは分かりません」
「いいですよ。今日ばかりは尺なんて気にしませんよ」
だって、これを知れば、彼女の弱点が理解できるかもしれませんからね!
「伯爵カップルは既に3人のチルドレンに恵まれていました。しかし、彼らにはガールが一人もできなかったのです」
「それがこの話のどこに関係があるのですか?」
「これからテルするのでしばらくシャラップ」
「すみません」
「そんなとき、王都一の占い師と知られるおばば様にいったいいつになったらガールができるのかアスクしたのですよ」
「へぇ。そんな人がいたんですか。ところでその人はいったい何人目で生まれると言ったのですか?」
「セブン」
「マジ?」
「マジ」
「それでお二人はどうしたの」
「チャイルドを作りました」
「説明がシンプルだ!」
「そして、彼らにはさらに4人のチルドレンに恵まれました。ただし、いずれもボーイズでした」
「その占い師どう考えても役立たずでしょ!」
「今ではアンドルセン家別邸に隠居暮らししていますからあながちただのおばばではないと思いますよ」
「え! あのおばあさんが占い師なの?!」
あの杖に乗っていた小さなおばあさんが凄腕の占い師? ありえない。
「そうです」
「なんでここにいるの? 予言が失敗しているじゃない!」
「それは彼女が再度の占いで「ナイン!」と言ったのが見事に的中したからです」
「そんなの意味ないじゃん! 絶対適当に言っているよ! そのばあさん! っていうか9人も子供作ったわけ?」
「ライト。特にお母様はガールを大層欲しがったようで。あの時ほど奥様が鬼気迫る表情を見せたことは無いとメイド長からも言われたくらいです。前騎士団長を務めた旦那様ですらたじたじになるほど怖かったそうです」
「あの推定年齢70代後半の方が?!」
「いぇす」
ひょっとすると、彼女の強さの秘密はそのお母さんにあるのかもしれませんね。恐ろしや。恐ろしや。
「さて、話に戻ります。アーユーオーライ?」
「ヤー」
「さて、話に戻ります」
「お母さまは生まれた一人娘に大層感動なさって、ベビーのレディに貞操教育をから仕込んでいたのです。それもホリブルなものです」
「幼いころからやっていいの? それ」
そんなことしちゃったらいろいろまずいでしょ?
「メンに触られたら斬れ。オークに近づかれたら粉々にしろ。それのどこが卑猥に聞こえるのですか?」
「それって貞操教育じゃなくて殺し屋を作るための洗脳じゃん!」
「さて、トークにカムバックします」
「聞き流すな!」
カムバックとは何ですか? カムバックとは?
普通、トークに使いませんよ! その言葉!
「お母さまの貞操教育の結果、見事に自動殺戮機械と謳われるレディになったわけです。ちゃん。ちゃん」
「それ、ちゃんちゃんしていいの?!」
「まぁ、そうですね。少なくともハッピーエンドではないですね。そのエデュケーションのおかげでメンと体が触れるだけでセクハラ扱いして斬りかかりますし、メンが近づくだけで砲丸を投げますからね」
「それってやっていいことなの?」
「まぁ、そのおかげでこのキングダムは対外的に強くなったのでオッケーでしょ」
「全然オッケーじゃない!」
「そのパワーはこのキングダムにウィンをもたらすようになりました。レディの存在によって他国は次第に我が国との戦う気力が失せました。人類すべての国で和平が成立し、お嬢様を中心に物事が考えられるようになりました。これが“レイラ協約”です」
「なんか急に教科書を読んでいる感じで言っているけど、それってあのお嬢様が危険っていうことだよね」
「まあ、そうかもしれませんね」
「それで片付けないで!」
「まぁ、ユーならアライブできますよ」
根拠を示してくれ! 根拠を!
親指立てられてもまったく信頼できない!
「ところで、あの貞操教育で気になるところがあったのですが」
「ワット?」
「彼女はオークに近づかれたら粉々にしろという洗脳を受けたのですよね?」
「貞操教育ですが何か?」
「それなのに、どうしてあの人はオークに執着しているのですか?」
「それは家庭教師のおかげです」
「家庭教師?」
「家庭教師の一人が“豚女の集い”という得体のしれない連中だったらしくその言葉を聞いてレディはオークに憧れを抱いたそうなのです」
「それ、あんたらの人選ミスだよ!」
「とにかくネバーギ「不安しかありませんよ!」
「お願いします」
「嫌ですよ」
「何でもしますから」
「すみません。それでも無理です」
「しょうがありませんね」
すると、彼女は突然メイド服を脱ぎだしたのです。キャー!
「ちょ、ちょっといきなりやめてくださいよ! これって実は全年齢対象の話なので……、あれ?」
なんと彼女はメイド服の下に鎖帷子を着ていたのです。それも武器を多く仕込んでいたのです。
こんな彼女から“ピー”はまったく感じられません。むしろ、殺意しか感じません。
「当然、実力行使でしょ?」
「いやー!」
その後、僕は美人メイドと仲良く命を懸けた鬼ごっこを繰り広げるのでした。
まったく、めでたしじゃない!
次回、042.不肖オーク、誠に勝手ながらメイドさんたちをお手伝い致します!




