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031.メイドとオークの鬼ごっこ(注:鬼はメイドで、オークは逃げる方です)

 

 かれこれ半日ほど鬼ごっこが続いています。未だに多種多様なメイドさんたちが僕に襲い掛かってきます。


 いつの間にか森の中はそこら中罠だらけで、いくら息を潜めてもメイドさんたちに見つかりますし、少しでも長くいると「おらー! さっさとお縄にかかりやがれ! ゴミ豚!」と言いながら手には大剣を持つ赤髪のメイドさんが追いかけてくる始末。──あれ? なんか赤髪の人とよく会いますね。


 そんなことよりも、僕がいったいどんなことをしたって言うんですか! どうしてメイドさんたちが僕を追いかけてくるんでしょうか?!


 僕には「分かりませんよ」


 うん? なんだか僕の台詞が誰かに取られた気がします。


「まぁ、そりゃ心を読んでいるからね」

「ぴぎゃ!」


 振り向くとそこには紫色のおかっぱ髪の女の子がいました。見た目はどこにでもいる少女ですが、メイド服を着ていますねー。と言うことは例のあの集団の一人ですね。警戒しないと。


「そんな鳴き声って本当にするんだ。お嬢様がまるで人間のようなオークだっていうから「ワッ!」って叫ぶんじゃないかなって思ったんだけどなぁ」


 別に悲鳴が「ぴぎゃ!」でもいいじゃないですか。どうしてそんなことを言われなくちゃいけないんでしょうかね? まぁ、そんな言葉は無視。無視。


「逃げるなんてひどいじゃない」

「ただでさえ武装していて、心を読むような怖い人が僕の肩に乗っかっていたら避けるに決まっているじゃないですか!」

「武装していないよ。ほれ!」


 彼女はメイド服のありとあらゆるポケットからたくさんの武器を次々と捨てていきました。


「それは武装していないとは言いません」

「今は武装していないでしょ?」

「今はね!」


 こういうとき、まだ隠している武器があるような気がしますが、まぁ、そんなこと考えるのもしんどいので考えるのはやめておきます。


「さて、とにかく比較的話が出来そうだから、ちょっと愚痴に付き合ってよ。この辺にはあまりあたしの仲間はいないからさ」

「そう言って時間稼ぎするんでしょ?」

「じゃあ、どうして今更、わたしたちがあなたを捕まえに来たか知らなくてもいいの? どうせもうすぐ死ぬから最後に聞いておきたかったんじゃないかって思ったんだけど」

「そこ! どうして僕が死ぬ前提で話すんですか!」

「じゃあ、お嬢様の攻撃を受けても生きていられると思っているの?」

「──いえ、無理です」

「だよねー。だから、教えてあげるよ。冥途の土産に」


 彼女は屈託のない笑みを僕に向けました。


「そんな物騒なこと言わないでください!」

「メイドと冥途で二重にかかっているのはツッコまないんだ!」

「そんな余裕僕にはありませんよ!」


 僕をツッコミ担当だと決めつけるのはやめてくれませんかね!


「じゃあ、教えてあげる。昨日、お嬢様が珍しく夕方にもなっていないのに屋敷に帰ってきたの」

「ちょっと待ってください。普段からずっとあの森にあの人はいるんですか?」

「そうだよ。なんか最近、あんたと会わないから十時間近く森にいるけどね。──まぁ、最近そうだったからこんなに早く帰ってくるなんて不思議だったんだけどね」

「それで、お嬢様は鎧を脱ぎ捨てるなり部屋に籠っちゃったの」

「早く言ってくださいよ。時間稼ぎはいけませんよ」


 なんか情報を小出しされるとイライラしません?

 それに、そろそろ動かないと赤い髪の大剣担いだ女性が現れるので早くして欲しいんですよね。


「人に武器を捨てさせたくせにあんたは脅すんだ。いい度胸しているね」

「これは生きるか死ぬかの問題なんです」

「オークに生きる資格なんてないと思うけど」

「それはいいんですよ!」

「夕食も取らずにずっと部屋に籠っているものだから部屋を開けるとお嬢様はベッドの上でこうつぶやいていたの」

「サキュバスが、サキュバスが、サキュバスが、サキュバスが、サキュバスが、サキュバスが、サキュバスが、サキュバスが、サキュバスが、サキュ「そんなに言わなくても大丈夫ですから」──これが2時間も続いて聞かされ続けたんだけど」

「それはお気の毒様です」

「とにかくサキュバスに心を奪われたと思ったお嬢様はすっかり心が折れてご飯を食べないものだから、こちらが迎えに行くことになったんだよ」

「僕のところに来たとき、まだ日の出からそんなに経っていないと思うんですけど!」

「そんなのいいじゃん。わたしたちとしては一日七食食べないと生きていけないお嬢様がご飯を食べないのが心配でしょうがないんだから」

「過保護か!」

「だから、とにかく早く捕まってよ」


 そのジト目はいいのですが、台詞がダメですよ! 心が一つも揺り動かされませんよ! 


「いやですね。──それと武器を捨てたはずじゃないのですか?」

「親から敵の前で武器は捨てちゃいけないって教えられたからね」

「それはすごい教育だ!」

「それって皮肉アイロニー?」

「えぇ、皮肉アイロニーですとも!」


 ******


 誰だよ。夜になったら、誰も森を歩き回らないって言ったの!


 夜が来ても彼女たちの追跡は終わらないじゃないですか。


 どうしてくれるんですか! 僕はしんどくてしんどくてしょうがありません。


 ほら、朝から何も食べていませんからね。


 メイドさんたちは食事休憩をしているらしく、サンドウィッチを食べているメイドさんと鉢合わせになったこともあります。


 あのときほど人が食べているのが恨めしいと思ったことはありません。


 おなかが空いたので、食べ物を呼び出そうにもその魔力をたどってメイドさんたちが来ますからね。


 僕一人に対してどうしてそんなに過剰な戦力を投入しているんですか!


 意味が分かりません!


 それはそうとして、僕は今悩んでいることがあります。


 勿論、追いかけられていることにも悩んでいますが、それではありません。


 目の前にゴールデンうさぎちゃんがいるんですよ。


 あの金色に輝く毛皮。愛らしい耳に、つぶらな瞳。そして何よりも丸くて柔らかそうなお尻。


 想像するだけで涎が出そうです。


 ──いや、これは罠かもしれません。


 僕がゴールデンうさぎちゃんのことをこよなく愛する素晴らしい紳士であることは僕のことを知っている人なら、常識中の常識です。彼女たちがこの情報を使わないわけがありません。


 しかし、僕はとてもおなかが空いています。早く食べないと危ないです。死にそうなくらいです。


 いやいや、肉を食うのは十日後だったじゃないか! 十年も続けたルーティーンを崩すなんてとんでもない!


 それでもおなかが空いています。


 やばい。早く食べたい。


 けれど、罠だったらどうしよう。


 …………。


 決めました。


 罠でも構いません。僕はそれ以上におなかが空いているんです!


「うさぎちゅぁぁぁぁー、「プス」」


 ドシーン!


 あれ? 体が動かない?


 どういうことなんでしょうか?


 痺れ毒? いや、僕の皮膚は分厚いはずじゃ……。


 ******


「ようやくスリープしましたか」


 青髪のメイドさんは気絶したオークを見て溜息を漏らしました。


「本当にすごかったよ。今までで一番の敵だったじゃない?」


 紫色のおかっぱの髪型をした少女はじっとオークを見ています。


「殺すという任務だったら間違いなく失敗していたよねー」


 吹き矢を持っていた緑色でツインテールの少女は眠たいのか欠伸を漏らします。


「そんなこと言わないで早くキャリーしなさい。ポイズンの効力も長くはキープしませんからね」


「はいはい」

「あいあいさー」


 オークを協力して持ち上げた二人は不思議そうにオークを見つめてこう話しかけました。


「しかし、こんなオークをよく恋人にしたいと思うよねー。臆病者じゃない」

「それこそ、オークを恋人にしたいっていうこと自体が理解できないけど」


 青髪のメイドは彼女たちの雑談に注意しました。


「レディのフェイバリットにいちいち口を出すのはやめなさい!」

「「はいはい」」


 彼女たちは彼女たちの背丈の何倍もあるオークを運んでいきました。


 彼女たちを見送った青髪のメイドは一人緑色に輝く月を見上げてこう呟きました。


「レディ。今すぐリータンしますからウェイトしていてくださいね」


とりあえず、これにて1章完結です。

100%ノリと勢いで書いてきたので、予想通りぐちゃぐちゃな文章になりました。反省しています。猛省しています。


それに近頃、擬音語も減りましたしね。反省しているので、2章では多分、擬音語は増えます。──ただし、あまり期待してくださいね。


詳しい反省などは21時ごろに投稿したはずの活動報告のほうでねちねちと書いておきますので興味がある方はご覧ください。普通は一章の最後を投稿してから活動報告で後書きするべきでしょうが、寝てしまうので投稿しておきました。


さて、お気づきの方がおられるかもしれませんが、ついでに登場人物紹介をこの話の次に投稿しております。次回予告はそこでしているので、見ていただければ幸いです。──いや、活動報告見たらいつ次回投稿されるのか分かるんですけど、とにかくどちらも見ていただけるとありがたいです。


長々と後書き申し訳ありませんでした。

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