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003.ストーカー女騎士さんとぼく(オーク)の出会い(2)

 

 突然ですが、今、僕は女騎士さんに腕を組まれています。


 まるで、恋人のようです。


 アハハ、ウレシイナ。


「むぅ。なんだかうれしそうじゃないな。わたしの知り合いならそこにある大樹よりも高く飛び跳ねるくらい大喜びするのだが」


 かわいいふくれ顔ありがとうございます。


 それとあなたのお知り合いは大層過剰な反応をされるのですね。


 正気かどうか本当に気を付けてくださいね。


 腕を組まれたくらいで飛び跳ねるだなんておかしいですよ。


 その人は人間なのですか?


 ──いやぁ、前世でもこんな経験したことが無いからうれしいな(棒)。


 しかし、この状況を聞いてまだ「リア充爆発しろ」という台詞を吐く人はまったく分かっていない。


 この腕組みの恐ろしさを。


 まず、世の男性が一番感じたいはずのお胸の感触がまったく感じられません。


 彼女のお胸は鉄壁防御の鎧様がしっかりガードしています。


 だから、硬い鋼が押し付けられている感触しかありません。


 次に、彼女は僕の腕をがっちりつかんで離れようとしません。


 うれしい気持ちよりも痛い気持ちしかありません。


 腕が潰れそうです。


 よく考えれば、(故)純情オーク君が彼女を組み伏せていたときに彼女の鎧は傷一つついていないことに気づいておくべきでした。


 そう、彼はあの時点ではまだこのとてつもなくかわいい女騎士様を追い詰め切れていなかったのです。


 それなら、彼女からあの純粋でうぶなオーク君を引き離すべきでした。


 そして、ムフフでキャハハな展開がぼくを待っていたのです。


 しかし、今となっては僕が逃げたことはあながち間違いじゃありませんでした。


 むしろ、ドングリというマイスイートフードに執着するべきではなかったのです。


 彼女がドMでとてつもなく恐ろしい変態だと気づく前に逃げ出すべきだったのです。


 少しSなお方なら「そんな美少女騎士様はご褒美じゃないか!」とおっしゃられるかもしれません。


 しかし、この戦略兵器並みのパワーを持つおそろしい女騎士様をあなたは制御できるのですか?


 制御できるのでしたらお譲りします。


 ただし、あなたの命は保証しませんよ。


 とりあえず彼女が僕の腕を掴んであの衝撃発言をしたところに遡ることにしましょう。


 ******


「追いついたぞ。オーク殿。逃げるだなんてひどいじゃないか。こう見えても私は女性なのだぞ。少しはあのオークと私を賭けた奪い合いとかしてもいいんじゃないのか?」

「──ねぇ、少しおかしいんじゃないですか。オークに取り合いされるなんて女性からしたらもっともおぞましいことじゃないですか。むしろ罰ゲームじゃないんですか?」

「ほう、ゲームとは。オーク殿は意外と博識なのだな。まさか聖言語を知っておられるとは。ちなみにわたしの友人はその状況だとむしろ大喜びだぞ。だから罰ゲームでもなんでもない。──むしろご褒美だ」


 GAME如きの英単語を知っているだけで博識だなんて異世界って案外ちょろい世界なんですね。知識チートで異世界征服しちゃいましょうか(笑)。


 ──ジョークですよ。ジョーク。オークジョーク。


 ……って、あのGAMEが『聖なる言語』ですって?!


 それにオークに取り合いされるのが、友人すら喜ぶシチュエーションだって?!


 いくら最近の男子は草食系が多いからと言っても、あいつらに取り合いをされたいなんてありえませんよ!


 それにあいつら、あなたたちに“ビービービー”なことをするしか考えていませんよ。


 どうか、今一度、考え直してください!


 まったく、この女騎士さんはさっきから何言っているんでしょうか。


 いよいよ脳みそが壊れてしまったのでしょうか?


「そ、そういえば、あのオーク君はどうなったのでしょうか?」

「オーク殿もオークなのにあのオークをオーク君って。フフフフフ。まったくおかしなことをおっしゃられる。──もちろん、死んだよ。ところで、オーク殿には名前はないのですか?」


 やけにあっさりしているな! 


 さっきまではあんなに彼にくっ殺されたがっていたくせにいったい何を言っているんだ!!


 ちょっとはあの(故)純情オーク君のことを考えてくださいよ!


「──いえ、あったのですが、とある事情で捨てました。そんなことより逃がしてくれませんか?ぼくはさっさとねぐらに戻りたいのですが」

「──ほう。オークにしては積極性に欠けていると思っていたのだが、案外そうでもないのだな。どうせ、わたしをねぐらに連れ込んで“ドドドドドーン”なことをしたり、“ビリビリビリ”なことをするのだろ?」

「何を言っているんですか?! ぼくはあなたから逃げて早くこのドングリを暗くて涼しいところに保管したいんですよ」


 最近秋なのにちょっと暑いんですよね。


 そう思って油断していると、寒波さんが来るので、暦通り(ちなみにこれは村娘さん情報です。月に一度くらい暦を聞いています。何ひどいことはしてません。──少し脅しただけですよ)に冬支度しています。


 まったく温暖化を異世界にまで持ちこんでほしくないですね。


「そうか。わたしをドングリまみれにして、“ザザザザッ”なことをしたり、“ピロリロリン”なことをするのだな」

「いい加減その手の話につなげるのはやめてください。それに、こう見えてぼくは強いんですよ。ぼくがその気になるうちに離れてくださいよ」


 さっさとその気になって、“ギコギコギコ”な展開にしろ?


 あんなオークに“ピー”されたい願望を持った人なんて絶対に“ピッピッピッピー”です。


 僕はその手の人は苦手な元祖純情オークなので、やめてくれませんかね。


 お願いだからー(焦)。


「奇遇だな。わたしもこう見えてとっても強いのだ。何しろ私のおかげで人族の2000年にも及ぶ(わだかま)りが無くなったのだからな」


 それって絶対にあなた対策で仲良くなっただけでしょ?!


 っていうか2000年もの間のぎすぎすした関係が収まるってどういうこと?強すぎない?


 魔王とかいるんじゃないの?


 異世界って大体みんな魔王がいるから団結するはずなんですけど?!


「さぁ、遠慮なくわたしを連れてムフフでキャハハなことをしてくれ!」

「そうですね。なら、連れて行けばいいでしょ」


 あっさり諦めたな! というあなたたちに言います。


 見た目は銀髪の美女、中身はド変態の化け物に殺されるくらいなら、僕はどんなことでもしますよ。


 靴をぺろぺろ舐めたり、──とにかく何でもしますよ!


「やけにすんなり応じてくれるのだな。それでは遠慮なくついていくとしよう。──あぁ、お父様、お母様。オークに“ピー、ドカン”される親不孝なわたしをお許しくださいませ」


 ねぇ、この人本当にヤバくない?


 十字架のロザリオを取り出してなんかぶつぶつ言っちゃってるよ!


 もういやだ。許してください。神さまー。


「さて、そこで突っ立ってないでさっさと案内してくれたまえ。早くしないと夢の“ズバババーン”なことができないではないか」

「はいはい分かりましたよ」


 僕は屠殺場とさつばに向かう豚のような顔をしています。


 もう逃げきれそうにもないので、僕は諦めたのです。


「では」


 そう言って、彼女は突然僕の腕に彼女の腕を組みました。


 彼女は突然僕の腕に彼女の腕を組みました。


 あまりにも衝撃的だったので、2回も言ってしまいました。


 人生初の出来事ですが、これほどうれしくないことはありません。


 あぁ、僕はこのままこの変態女騎士に“ギャー”なことをされてしまうのか。


 言っておくがこの状況で僕がまだ「する」側だと思っている諸君。


 それは間違っている。


 彼女は自分の“ピッ”を満たしたいがために純情オークたちにわざと弱いところを見せつけ自分の欲望のおもむくままにぼくたちをいじめようとするんだ!


 こんな変態見たことが無い!


「むぅ。なんだかうれしそうじゃないな。わたしの知り合いならそこにある大樹よりも高く飛び跳ねるくらい大喜びするのだが」


 かわいいふくれ顔ありがとうございます。


 それとあなたのお知り合いは大層過剰な反応をされるのですね。


 正気かどうか本当に気を付けてくださいね。


 それよりも、いやぁ、前世でもこんな経験したことが無いからうれしいな(棒)。


 ──あっ、気づいたら最初の場面に戻っている!


 ──まずい。まずい。まずすぎる!


 このままでは本当に彼女をねぐらに連れ込んでしまう。


 何としてでも彼女から離れなくてはなりません。


 ご褒美?


 そんなことありません! むしろ、恐怖体験ですよ、これは。


 ──そうだ!


「あっ、あんなところにUFOが!」

「な、なんだって。あの聖言語の中でも超有名な円盤型の飛行船が?! どこだ? どこだ!?」


 彼女がバカで助かりました。このまま逃げ切れそうですね。


 しかし、聖言語というのは一種の害悪ですね。


 まさかこれほどまで彼女がバカに見えてしまうとは。


 この言語を生み出したのはいったい誰なんでしょうか?


 僕?


 そんなわけないでしょう。


 オーク歴23年のぴちぴちの青年ですよ。


 さてさて、大事なドングリちゃんたちを早く匿わなけれ、ば……。


「何逃げようとしているのだ。──さては逃げようとしたんじゃないだろうな。勇者様の中でもその台詞はたしか逃げるときの常套句だと聞いている。そんなに逃げたいというなら……」


 今までで一番強く僕の腕を掴んでいる!


 それに、あの台詞が逃げ出すときの常套句になっているだと?!


 ──たしかに思い出してみると、あの人も使っていましたね。


 しかし、彼は魔物では……。


 ──あぁ、そうでした。そんな人とは僕は会っていませんでした。そうでした。


 まさか魔王軍第7大隊大隊長様(笑)がそんなバカな台詞を言うわけがないですよねー。

 

 ──いやいや、だからぼくはそんな人とは会ったことがありませんから!


「ほ、本当に見えたんですよ。ほらあの辺に」

「それは本当なのか?! どこだ? どこだ!?」


 いやぁ、これほどまでおめでたい頭だとは思わなかった。


 ひょっとすると、あの大隊長様(笑)の方が賢いのでは?


 ──いやいや、だからぼくはあんな人とは会ったことがありませんから!!


 今のうちに出来る限り遠くまで逃げておきましょう。


「だ、か、ら、逃げるなって言っているだろう!!!」


 なんですかあの咆哮は。ドラゴンでも出せませんよ!


 僕は全速力で森を駆け抜けます。


「あははは。“チロリロリン”をする前の準備運動か?これはなかなかいいことを考えるじゃないか。さて、一緒に“ボッカーン”なことをしようではないか!」


 彼女も僕はと同じくらいの速度で追いかけます。

 ま、まさか、(故)純情オーク君のときのあの爆発は全力ではなかったのですか!!


「そんなの嫌に決まっているじゃないですかー!」


 もう、いやー! 誰か助けてくださーい!


次回、004.オークでも食中毒を起こしますよ

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