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025.クインブル氏と楽しいランチ

十万字突破!

コツコツ書いていくとこんなに字数が貯まるんですね。

これ以外の小説でもちゃんと書けるといいんですけどね。

 

 どうも、オークです。


 まさか、あの変態女騎士さんが秘密兵器だとは思いませんでしたね。


 まぁ、彼らを吹き飛ばした後、いつものように彼女に絡まれそうになりましたが、持ち前の“逃げ力(逃げる能力、略して逃げ力)”を発揮し、僕は無事に彼女から逃げました。


 あのときに、本気になれば彼女より早く逃げられることを知れてよかったですね。もっと早く気づけばよかった!


 さて、無事にうさぎちゃんを食べて、心が満たされた僕は客人を迎える準備をしています。


 ──客人? 誰のことだよ。

 ──ひょっとして、女騎士様? それとも、聖女様?

 ──ここはあえて、オカマのクラブマスターで!


 何言っているんですか? 

 髭がたっぷり生えたドワーフのクインブル氏ですよ。


 えっ、失望した?


 彼は僕の知り合いの中では比較的付き合いやすい人ですよ。──もちろん、友人としてだよ。


 ほら、クインブル氏以外は基本的にゲリラ部隊みたいに突然現れますからね。


 そんな人たちのためにわざわざテーブルクロスをそこら辺の丸太にかけたり、グラスを用意する必要なんてないでしょ?


 うむ、これでよし。


 後はクインブル氏を待つだけですね。


 ──ところで、魔物を狩りたくないお前に魔石なんてあるのかって思う人もいますよね?


 安心してください。クズノキ君からもらったデュラハンの魔石があるじゃないですか。──あぁ、もうあれはもう渡しちゃったんですね。


 いえいえ、それ以外にもハントクラブの坊主たちに、黒髪のイキった少年少女たちからそれなりに巻き上げたものもありますよ。


 だから、僕は心置きなく彼をもてなせるのですよ。


 ──なんかひどい?


 それは、こっちの台詞ですよ。賠償をもらったら、自由に使っていいでしょ。


「おーい! オーク!」

「クインブル氏!」


 噂をしていれば、来ましたね。

 さて、これから彼とのしょ、──ゲフン、ゲフン。──ランチを楽しむことにしましょう。


 ******


「おぉ! 相変わらずいいものばかりじゃないか。それに、ついでにと言った魔石も十分すごいじゃないか。ペガサスに、ゴブリンキング、リッチーの魔石もあるじゃないか。──どうして、そんなに謙虚でいられるのか?」

「アハハハハハハ、まぁ僕からしたら大した敵ではありませんよ」

「そっか、強いもんな。お前さんは」


 ──言えない。

 どれもこれも僕が賠償金代わりにもらったものだなんて……。

 上機嫌にお酒を飲むクインブル氏には言えない。


 それに何ですか!

 色々なんか強そうな魔物の名前が聞こえるのですが……。

 彼らは僕より弱いくせに、どうしてそんな魔物が倒せるのですか?


 ──えっ、僕が強い?


 アハハ、そんなこと言わないでくださいよ。

 僕は普通のオークですよ。普通の。


「ところで、最近、お嬢との関係はどうなんだ?」

「オジョウ? 誰のことですか? 僕はオジョウなんていう人知らないんですが」


 なんかそんな名前の動物はいたような気がしますが、人なら知りませんね。


「レイラ嬢のことだよ!」

「あぁ、そうでしたか。──特に何も変わっていませんよ」

「──そうか」


 何か言いたそうな顔をしてお酒を飲んでいますが、「──そうか」だけじゃ僕にはまったく分かりませんよ。


「どうせなら、あなたにもらってほしいですがね」

「アハハ、俺には彼女の思いをどうこう出来るほどの力なんてないさ」


 彼はグビっとお酒を飲み干して、こう言いました。


 うーん。なんとしてでも貰って欲しかったのですがね。うまくいきませんか。何しろ恋愛対象がオーク限定ですからね。ぼくならそんな変態さんとは関わりたくありません。


「ところで、ミリア姫は知らないか」

「ミリア姫?」


 誰ですか? その名前。


「第7王女だよ。この森のことしか知らないオークには分からんかも知らんが、ここの国の王女様なんだよ」

「──あぁ、あのあちし系ロリですか?」


 よりによってあのおバカ姫のことを聞きますか?

 僕は最近、彼女に嫌な目にあわされてご機嫌斜めだったのです。


 できることなら、そのことについて訊いてほしくなかったのですね。しかし、彼に彼女の愚痴を言うのはどうも憚れました。クインブル氏が真剣な眼差しで訊いてくるものですから。


「アチシケイロリとは知らんが、何か知っているのか? 最近、彼女が行方知らずなのだが」

「知りませんね」


 言えない。

 北極に向けて飛ばして今頃はホッキョクグマとランデブーしているんじゃないかって。

 そんなこと絶対に言えない。


「そうだよな。彼女はあくまで極悪卑劣なオークをお嬢と一緒に狩りに行くと言っていたが、まさかお前のことなんてないよな」

「ソウデスヨネ。ボクハソンナ極悪卑劣ナオークデハアリマセンカラ」


 いやいや、僕が極悪卑劣なオークなわけないでしょ。


 ほら、うさぎちゃんを殺すときだって生きるために必要なたんぱく源だから涙を流して、しょうがなく殺しているだけです。別に心当たりがあって片言になったわけではありません。ただの偶然です。


「──そっか。それは残念だ……。彼女は理想的な女性なのだがなぁ」


 ?!


「ひょ、ひょっとして、あなたが求婚した王女様って……」

「そうだ。ミリア様だ」


 ──えぇ? 何言ってるんですか?

 理解ができません。


「あの人って、たしか亜人とかそういうのは嫌いな人では……」

「そうだな。──しかし、そういうところが逆に萌えるのだよ」

「──すみません。僕にはどうしてそこで萌えるのか理解できません」


 あんな個性の闇鍋さんなんて到底付き合いきれませんよ。


 ──いや、彼はあの女騎士さんを拾ってくれそうな唯一無二の人物です。彼の好みなど常人である僕には到底理解できるものではないのでしょう。


「そうか。ならいい」


 なんかさみしそうにお酒を飲んでいます。

 そんなに残念だったのですか?


 僕は彼女を吹き飛ばして満足していたのに。


 ──別に幼女をいじめる趣味とかそういうものはありませんよ。


 僕はただ正当防衛のため、しょうがなくそうしているだけですよ。


 それにしてもクインブル氏。

 大丈夫ですか?

 もう、2杯目ですよ。

 本当に大丈夫なんですか?


「──さて、俺から友人であるお前さんを思っての提案だ」

「なんですか。急に」


 お酒をしばらく飲んでいたところを見ると怪しくてしょうがないのですが……。


「どうかお嬢と一緒にく「嫌です!」なぜなんだ!」

「なぜとかそんな話じゃありませんよ。ぼくは彼女が怖くて怖くてしょうがないんですよ。普通、危険な夜に重装備をした女性が求婚してきたらどう思いますか? それも武装した女性ですよ!」

「貴族なら、OK!」

「ダメでしょうが!」


 どうしてにこやかな笑みでそう言えるんですか?!


 普通、武装した女性に求婚されるなんておかしいじゃないですか!


「うぇへへ。貴族の女と結婚したら、甘やかせてもらえるんだぞ。メイドさんもついてくるんだ。──さーて、結婚したら何をしようかな。うぃひひひ……」


 あまりにも彼の変わりようにしばらく僕は閉口しました。

 さすがに、これ以上クインブル氏をトリップさせたままじゃダメなので、僕はクインブル氏を正気に戻そうと頭をバシン、と叩きました。


「──痛いなぁ……。いきなり、何すんだよ!」

「ちょっと頭を叩けばあなたの悪い癖が治ると思って」


 それと現実を見て欲しかったのです。

 ほら、貴族の女性と結婚して何かいいことありますか?


「癖? そんなわけないだろ! 俺はいたって正常だ!」

「正常なら、たとえ貴族だったとしても亜人撲滅派の王女に求婚しますか?!」

「実は彼女以外に3人に求婚したんだわ。それも未婚の王女様」

「嘘でしょ!」

「ホント。──だから、ミリア様の場合、消去法でついでに告っちゃえって思って、告白したってわけ。だからと言って、惚れたことには嘘はねぇがな」

「──マジですか」

「マジ。まぁ、振られたからここにいるんだけどね」


 自嘲気味にクインブル氏はそうぼやきました。 


 しかし、クインブル氏。あなたがここにいるのは正しいことですよ。


「考えても見てくださいよ。この国のほとんどの人があの勇者教会を信仰している人間なんですよ。そんな彼らの王女様が突如、亜人と結婚でもしたら革命がおこりますよ。革命」

「革命? そんなわけあるか。勇者教会の教えなんてここ百年くらいでかなり曖昧なものになっているんだぜ。まともな信者なんて1割にも満たないと思うぜ。──大体はなんちゃって信者だ」

「あなたが狙っている貴族の女性はどうですか? まともな信者ばかりでしょう?」

「いや、そうでもない」


 ──何言ってんだ? こいつ。


 そう思っている僕を尻目にクインブル氏は語りだす。


「実はな、勇者教会の礼拝をこっそり見に行ったことがあるのだよ」

「へぇ、そうなんですか。それがどうかしたんですか」

「そこにはな、空席のベンチがたくさんあったのだよ。ほら、まともな信者なら日々の礼拝なんて欠かさないはずがないだろ? どう考えても、勇者教会の教義が理解できない人がいるとしか考えられない!」

「そうじゃなくて、めんどくさいから行かないだけじゃないのか!」

「ふふふっ。実はな、最近、亜人大好きな貴族女性による秘密結社があるのだ」

「そんなのあるんですか」

「妙に食いつくな。どうしてなんだ? お前にはレイラ嬢がいるじゃないか。それだけで十分だろ? むしろ、俺に彼女をくれ!」

「ぜひそうしたいところですよ!」

「まぁ、これ以上彼女について話してもしょうがない。とにかく最近は亜人との結婚には寛容になりつつあるんだよ」


 いや、僕は亜人じゃなくてオークですけどー。 魔物ですけどー。


「というわけで一緒にレイラ嬢のところへ行こう!」

「いやです!」

 

 ******


 結局、僕たちはダンディな追いかけっこが唐突に始まったため、ランチはお開きになりました。


 勿論、僕は逃げ切ることができました。


 彼は下戸なので、少し速く走ると酔いが回ってしまってトンデモないことになっていましたね。


 詳しくは述べませんが、かなりひどいことになりました。以上。


 ──言っておきますが、僕は介抱なんてしていません。したら、とんでもない目にあうじゃないですか。


 それに僕は怒っていますからね! まったく望んでもいないのに無理矢理僕を彼女とくっつけようとするなんて裏切りですよ! 万死に値します!


 とにかく、僕は友人に裏切られてショックを受けているので今日のところはこれでおしまいです。


次回、026.愛しの村娘さん

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