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023.衝撃! 恐怖のバカップルの秘密兵器

 

 回想も終わりましたし、本題に戻りますか。


 いやぁ、しかし、飽きないものですねー。

 仮面バカップルのくせにどうしてそんなにハグが好きなのでしょうか?


 僕には分かりません。


 ほら、僕に抱き着く人って大体悪意のかたま、ゴフン。一人を除いてみんな打算があるんですよねー。──まぁ、誰が打算がない人なのかは言わないんですけどね。


 ほら、言ったら言ったで、誰かが聞いていてそれをある方々に伝えるじゃないですか。そしたら、この森が怪獣大戦争以上の惨状になるでしょ? だから、言うのは差し控えさせていただきます。


 そもそも、オークになったらモテるっていうのもおかしいんですけどね(泣)!


 そんなに僕の前世の顔はひどかったのですか?


 ──いや、僕の前世の顔なんてあなたたちの知る由もなかったですね。これは失礼。


 さて、抱きしめあっている二人にそろそろ退場してもらいましょうか。


 なに、ちょっと遠くに飛ばすだけですよ。飛ばすだけです。


「時間もたっぷり上げましたし、心の準備はできましたか?」

「いったいなんのことだ? 心の準備? それはこっちの台詞だぜ!」

「こっちには秘密兵器がいるのじゃ! お前に何ができる?」

「秘密兵器? ──あぁ、いつものあれですか。そう、詐欺師に騙されて買ったアンティークな飾り物のことでしょ?」

「我らがいつも持ってきていた装備はいずれも王宮や勇者教会でも重要な代物なのじゃ! 決してアンティークな飾り物でも何でもない! 何しろ我は第七王女だからのう。それに勇者教会でも聖女序列七位じゃからのう。お金を出せば、いろんなものを貸してくれるのじゃ!」


 あぁ、かわいそう!


 お金を積み上げないと骨とう品が買えないなんて本当にかわいそう!


 それにさっきから、なな、なな、なな、ななばっかり言っているけど、本当に7っていい数字なのかな?


 ほら、ここに来てから7ってつく人はなんか微妙な人ばかりだからさー。 


 ほら、スケルトンとかこのロリとか……。


 ──今のところ、二人だけでした。


 すみません。この世の色んな7番目の方々にはお詫びを申し上げます。


 けれど、7もいい数字だよね。ほら、ラッキーセブンって言うし。うん、きっとそうだよ! それに彼らが7なのは偶然。そう。ただの偶然。


「何、可哀そうな子供を見るような目をして! あちしは18歳なのじゃ! 18歳!」

「8歳の間違いでは?」


 見た目はロリのくせに18歳? 年齢詐称もほどほどにしてください。


 しかし、この見た目で18歳なら別の意味でかわいそうですね。うん、本当に涙が出そう。


「なんじゃと! 我のどこをどう見たら、8歳に見えるのじゃ!」


「明らかに幼児体型」


「行動がわがままで年不相応」


「そして、一人称がわらわとかじゃなくてあちしって言っているところ」


「──最初の二つも十分腹が立つが、最後のこれはアイデンティティなのじゃ! アイデンティティ!」

「そうだ! これまで女性の間ではあちしと言う一人称な女性が流行ってないだけでこれからはミリアたんのような“あちし系女子”が流行るんだ!」

「わいは聞いたことあるが、あちしはなーい!」


 そもそも、〇〇系女子ってそんな使い方するんですか? 僕には分かりません。


「下賤な豚じゃからあちしの一人称に対してとやかく言うのだな。あちしは一切間違った使い方はしておらぬじゃろ?」


 なに言い訳じみたことを言うんですか?

 正直、どんなに言い訳されても僕にはこれっぽちも改善の余地はありませんよ。


「そんなことより秘密兵器はどこにあるんですか? 見た限り初心者用の装備しか身に着けていませんが」


「「お前(お主)に全部壊されたんだよ(のじゃ)!」」

「あれ? そうでしたっけ? けれど、あれって騙されて買ったんでしょ?」


 なんかすごい武器とかそういうのなら、僕に斬りかかるとガラス細工のように粉々になったり、僕のパンチ一つで木っ端微塵になりますかね。


 ──どれも粉々になっているので、対比になっていないじゃないですか! もっとすごい武器を持ってきてくださいよ!


「だから、重要な武器だって言っているだろ!」


 そ、それなら、粉々になるわけないでしょう?


「それに秘密兵器とは助っ人のことじゃ! それもこの森とオークに詳しくてとびっきり強い助っ人じゃ!」

「助っ人? ──ひょっとして、あのオカマ野郎じゃないでしょうね? あれはやめてください。僕の精神衛生上害しかないので」


 あれ、何やら二人とも悔しそうな顔をしています。


 これはひょっとして……。なんか期待してもいいんですかね? いいんですよね?


「 ──オークの天敵と謳われる“オーク・イーター”から呼びたかったのだが、クラブマスターは呼べなかったんだ」

「キャラはどうしたのですか?」


 そう、もっとなんか腹立つキャラじゃありませんでしたか?


「そこはいいだろ! 俺様の話を聞きやがれ!」

「ここでエアギターをするのはやめてくれませんかね? 見ているこちらが恥ずかしいです」


 言われて直すキャラ設定なんてしても意味ないですよ。少なくとも最初から最後まで無理なく貫き通せるキャラ設定が重要です。


 ──これはあくまで僕個人の前世の頃から持ち続けている考え方です。まぁ、色々あったのですよ。別に大したことじゃないのでここでは言いませんがね。


 そう考えると、あちし系ロリも意外とすごいですね。


 一切キャラにブレがない。


 よほど教育がよかったのか、あるいは、かなりの頑固者であるかのいずれかでしょうね。


「──クラブマスターには借金をしておってなぁ。それも金貨3万枚」

「3万枚?!」


 3万枚と言ったら、日本円換算で3億円と同じくらいじゃないですか! そんな借金を一般庶民がしたら、一生返済するだけの人生になりますよ!


 やっぱりブルジョワって腹が立ちますね!


 だって、そんな借金してものんきにオーク狩りに……。──あぁ、すみません。今は初心者向け装備しかできないほど貧乏でしたね。これは申し訳ない。


「まぁ、勇者保険というものに入っておるから安心じゃ。勇者一人一人に生命保険が掛かっておってのう。それでもし死んだら、金貨10万枚は帰ってくる仕組みなのじゃ」

「どこから、そのお金が来ているんだ! それにあなたはそこのイキリのことを死んでほしいって思っているだろ! 明らかに10万枚で安心して借金しているだろ!」

「あちし系ロリとはなんじゃ! ──そ、そ、それに、そ、そんなことはお、思ってはおらぬ。あ、あくまで最後の手段というかなんという……「ちょっと詳しく聞こうじゃないか?」──冗談じゃ! 冗談!」


 やはり、仮面は仮面でしたね。

 簡単に関係は崩れゆくもの。


 それが仮面バカップルなのです。


 *お取込み中です。しばらくお待ちください。*


 はぁ、長かったです。


 別に実況でもしてよかったのですが、しんどいのでこれくらいにしておきます。さっきの一言だけで長いってことくらい分かるよね?


 さて、疲れているお二方にちょっと質問でもしましょう。


 こんなときは水でもあげるのがいいのかもしれませんが、「そんな汚物を王女のあちしが受け取れるわけが無かろう」みたいなことをそこにいるロリが言いかねないので、水はあげません。


 ──別に、いじめているわけじゃないですよ。


「ところで、秘密兵器は来ないですね。どうしたのですか」


 息を切らしたロリさんは「そういえばそうだった!」というような顔をしました。


 呼んだのはお前だろ? なんで僕に言われて気づくんだよ!


「──そ、それにしては随分遅いのう。いったいどこで道草を食っとるのじゃ? “アンドルセンの最高傑作”は」


 なんか僕の気をそらそうとしていますが無駄ですよ。僕はあなたが仮に純粋無垢な子供であっても騙されませんから。


 ──待てよ。


「アンドルセン?」


 何か怪しい名前が聞こえたのですが何でしょうか?

 そこはかとなく嫌な予感しかしません。


「──ほう。さすがにアンドルセンを知っとるか。やはり、王国の守り神の家系は侮れんのう。オークにまで知れ渡っとるとは。まったくあやつを後で褒めてやらんとな」


 あなたに褒められて喜ぶ人なんてこの世にいるのでしょうかね?


 ──すみません。この世にはあなたに救いを求める哀れな子羊がいましたね。それも、あなたたちのような愚か者に騙されている子羊たちが。


 いえいえ、別に某勇者教会のことを言っていませんからね。──って、全部言っちゃったよ!


 ヒュール、ヒュル。それにしても遅いですね。


 多分、あの人なのでしょうがただでさえ厄介なバカップルにあの人まで加われば、僕のイライラはマックスに達し、森の木々を切り倒しながら、うさぎちゃんを乱獲してしまいそうです。


 さっきのヒュール、ヒュルは何だ、ですって?


 決まっているじゃないですか。僕の口笛ですよ。口笛。下手だと思ったら吹いてみてくださいよ。僕の場合はこれ以上出ませんでした。改善する努力はめんどくさいのでしません。


「さて、まったく来ないようですし、あなたたちの方はさっさとどこかに飛ばしておきましょうか。──ところで、どの方角に行きたいですか? 生憎決められた場所に飛ばせるほど器用じゃないので」

「やめてくれ! それだけはしないでくれ! いくら、南国でバカンスしたいと思っても、お前の空中旅行はひどいから!」

「ほうほう。南国ですか」


 前は東の方に飛ばしましたからね。

 今度は南に行きたいのですね。

 分かりますよ、その気持ち。


 ところで、これまで誰も飛ばしたことはないっていなかったか? 


 えっ、そんなこと言いましたっけ?


 一応、人型の魔物は飛ばしたことないって言っただけで人は飛ばしたことはないと言った覚えはありませんが? 


 まぁ、彼らが魔物に見えるのでしたら、僕の言い間違いだと認めますよ。さぁ、あなたは彼らがどっちに見えますか?


「そこ! まともに聞くな!」


 何ですか? 南国に行きたいって言ったのはあなたでしょうに。


「そうですか? 高評価を受けているはずなのですが……。僕の知り合いを試しに吹き飛ばしたところ感謝されましたよ。『クックック、貴様のおかげで吾輩はさらなる高みへと上り詰めたのだ!』とどや顔で言われましたよ」


 あのときはひきましたね。


 言っておきますが、某K君に身代わりで挑んだ卑怯者の大隊長(笑)なんてここ最近、何度も吹き飛ばされに来ていますよ。


 僕の前にのこのこ現れるくらいなら、彼の目の前に出て殺されに行ってもいいでしょうにね。僕には彼の考えていることなんてよく分かりませんよ。


「そいつは頭がおかしいだけだ!」

「そうじゃ! あちしもあんな思いは懲り懲りじゃ!」

「あなたたちは死なないからいいじゃないですか。普通の人なら即死ですよ」

「「分かっているならやめろ!」」

「えぇ、いやだなー。──そういえば、僕は今、とても穴が掘りたい気分なのであなたたちのために穴を掘ってあげましょうか?」


 ほら、うさぎちゃんはサキュバスさんへの賠償で差し上げちゃったでしょう?


 だから、今すぐうさぎちゃんを捕まえて食べなくちゃ僕は発狂しそうなんですよ。


 というわけで、穴が掘りたくなってもしょうがないよね!


「「それ、完全埋める気だ!」」

「そうですよ。当然じゃないですか?」


 安心してください。顔はちゃんと土の中から出しておきますから。それにどうせ誰かが助けに来ますよ。だって、貴方たちは某いかれた勇者教会のお偉いさんなんでしょう? あっ、また、全部言っちゃった!


「とにかくアンドルセンはすぐにでもこちらに来るはずじゃからのう。オークのにおいに気づいたらすぐ飛んでくるというのに。なぜなのじゃ?」


 ──うん、なんか今変なことを言いませんでしたか?


 オークのにおいに気づいたら一目散にやってくるアンドルセンさんなんてあの人しかいないじゃないですか! これは急がないとまずいことになりますね。


「さて、方角は決めましたか? ──あぁ、そうだった。彼は南国で彼女は北極でしたね。そこで頭を冷やしてくるんですよね?」

「「そんなことはする必要はない(のじゃ)!」」


 ド、ゴーン!


 今、なんか爆発しませんでしたか?


 最近は爆発する頻度も減って少しはこの森もまともになったのかなって思っていたのに、全く変わっていないじゃないですか!


「ふふふっ。いよいよこちらに来るからのう! 楽しみにしておれ!」


 すると、まるで土石流が来たのかというくらいすさまじい音が響き渡りました。僕は咄嗟に目を閉じてしまいました。


 目を開くとそこには人が一人通れるくらいの道ができていました。


 なんか見覚えのあるフルプレートの鎧ですね。


 ──はぁ、やっぱりか。ここはいっそのこと新しいアンドルセンさんが出てきてもよかったんじゃないでしょうかね?


「──なんだあなたか」

「残念そうにしていることについてはあとではっきり説明してもらおうじゃないか!」


次回、024.お空に飛ぶのが先か? オークが捕まるのが先か?


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