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013.今日は月に一度のうさぎ狩り


 憂さ憂さ。


 さぁ、いきなりジェントルなジョーク入りました。

 さて、どんなジョークでしょうか?


 これだけじゃ分からない?


 今日は月に一度のうさぎ狩りです。


 あぁ、憂鬱だな。

 また、あのかわいいうさぎちゃんたちを殺さなくちゃいけないんだよなぁ。


 もうお分かりですよね。

 うさぎの“うさうさ”と“憂し”をかけているのです。


 分かりにくい?

 そんなの僕は知りませんよ。


 話を戻しますと、別にうさぎの肉じゃなくてもいいじゃないかと思う方もいることでしょう。

 現に、僕は焦げたゴムや雑草を食べていますからね。


 しかし、僕はうさぎちゃんじゃなきゃダメなんです。


 イノシシはなんだか顔が似ているからどうも受け付けないし、鹿は少食な僕では食べ切れずに腐らせてしまうのがオチですからねぇ。


 それに、うさぎちゃんなら、ぼっちの僕でも食べ切れられるんですよ。──そう考えると、やっぱりうさぎちゃんしかないなぁ。


 そこら辺にいる鳥ってあんまり美味しくないんですよ。

 それに卵を取ったら、追いかけてくるからね。

 本当、怖いよ。あいつら。


 ──ところで、君の友人であるキングは使わないのか?


 使うというのはちょっと語弊がありますね。僕は彼と友達なのですよ。──まぁ、たしかに二人だと楽になると思って、一度だけ彼と狩りに行ったことがあります。


 しかし、彼に捕まえてもらった獲物は軒並毒に汚染されていたのです。


 まぁ、スライムは丸のみしかできませんし、そもそも彼はポイズンキングスライムですからね。

 汚染されてしょうがありません。


 だから、一人で獲物を狩りに行くのはしょうがない。しょうがない。


 そうこうしているうちに、──いた! いた! いたー!!


 うさぎちゃんだ!!


 それに金色に輝いている!


 今日は運がいいぞ!

 星座占いで『今日は何もかもうまくいくでしょう』と言われた気分です。


 あっ、最近の僕の好みはこの金色に輝くかわいらしいうさぎちゃんなんですよ。 


 かわいすぎて、近くの南京錠付きの扉のある不思議な洞穴に養殖場を作って保護してしまうくらいです。


 僕がラッキーだと思っているのはそれだけではありません。


 かわいさ以上にお肉がとても美味なのです。


 焼いてもよし、煮てもよし、熱した油の中に放り投げてもよし、生で食べてもよし。

 とにかく何でもよしなのです。


 他のうさぎちゃんも美味しいのですが、僕はまだこのゴールデンうさぎちゃんを超えるうさぎ肉に会ったことが無い!


 前世では生肉は怖くてヴェルダンまでしっかり焼いたお肉しか食べられないと思っていましたが、今は違います。


 意外と生肉はおいしいのです。


 まぁ、運が悪いと、腹を下してしまうんですけどね。けれど、前世に比べるとそんなに酷い目には合わないので大丈夫でしょう。


 本当に菌さえなかったら、毎日でも食べたいんですけどね。


 あぁ、本当にオークに生まれてよかった!


 今、お前はやっぱりオークだなと思ったそこのあなた。

 ちょっと向こうで話しませんか。

 なーに、少しだけ僕がいかにうさぎちゃんを愛しているか語るだけです。


 だから、20分時間をください。


 長い? 僕のうさぎちゃんへの愛は1日以上語っても語りつくせませんよ。


 ──なら、養殖している奴らを食べればいいじゃないか?


 冗談じゃない!!

 かわいいうさぎちゃんを食べるなんて罪です! ギルティです!


 ただし、僕の食肉欲、──いや、僕の本能はお肉を食べずに一月を超えるとすさまじいので、しょうがなく食べているのです。


 1か月以上お肉を食べないと僕は精神的に病み、豚のように穴を掘ってしまい、しまいには適当に変な魔物を退治してしまうことがあります。


 よりによってこの期間に僕は色んな所でトラブルを起こしているので、しょうがなく食べているのですよ。


 たとえば、あの忌々しい黒蜥蜴を殺した時なんてそうです。


 ──これは言いすぎましたね。以後、気をつけます。


 だから、しょうがなく野生の方のゴールデンうさぎちゃんを狩るのです。


 ほら、ペットのミニブタは食べられなくても市販の豚肉なら食べられるってことありません?


 ──飼ったことすら無い?


 すみません、僕もありませんでした。


 さぁ、気を取り直してこのときだけは野生のオークに戻って、かわいらしいうさぎちゃんを仕留めに行きましょう。


 ──勿論文字通りの意味ですよ。勘違いはだめです。ダメ。絶対にダメ。


 ブヒー!


 このゴールデンうさぎちゃんはすばしっこいのですが、ほぼ毎日女騎士さんを相手にしているぼくの敵ではありません。


 最近、確かにこの話では出番が少ないですが、──ほら、少々彼女とのやり取りにマンネリというものを感じまして。


 まぁ、彼女は今までのストーカーの中でもダントツな危険度なのですが、大体同じ方法で振り切れてしまうのですよ。だから、しょうもないんですよね。


 特に最近はあのおつむの小さい彼を連れていませんからね。

 もし、彼がいたら、今度はキング君を呼び出すのですが、まぁいいでしょう。彼女の話は。


 ブヒー! ブヒー! ブヒー!


 よし、捕まえました。

 あいかわらず、金色に輝くこの毛並み。

 とても美しい。


 この内側に隠されている極上のお宝(肉)のことを考えると、──あぁ、涎がドバドバ出てしまいます。


 さて、このうさぎちゃんを連れて帰って、ちゃんと血抜きをして、焼いて食べましょう!


 ──あらあら、これはオーク様ではございませんか。


 何でしょうか。この一見お淑やかに聞こえて、どこか棘を感じるこの声は。

 まるで聖母様が我が子に語りかけるように美しい声にうっとりしそうになりますが、妙に感じる棘がどこか怖くて仕方がありません。


僕は心の中に語りかけてくるような天の声に怯えて辺りを見回しましたが、誰もいません。


 ──まぁ、オーク様。私がどこにいるのかお気づきになられないからそんなにおどおどしていらっしゃるのでしょうか? まったくひどいですわ。あなた様なら、この私の愛を感じ取ってもらえると思っていたのに。


 違います。普通に天の声のように聞こえるあなたの声がとても不気味で怖いからです。


 ──本当にお気づきになられないでしょうか? ほら、ここ。ここでございます。


 だからどこなの? 天の声様!

 あなたのことはよく分かっていますよ。けれど、ここって言われても分からないじゃないですか。


 ──はっ、まさか天の声様はこのうさぎちゃんを奪い取ろうとお思いでしょうか?


 それは断じて許されません。たとえあなた様でもぼくは許しません。


 ──まぁ、そんなにきつくお締めつけになられて……。愛は感じますが、少々痛いでございますわ。


 まさか。いくらなんでもこんなことはないよね。


 ──何でしょうか。一瞬、私の方をちらりと見たくせに気づかないふりをなされて。いくらなんでもひどいでございますわ。早くお気づきになられる方がよくってよ。


 不気味だ。不気味。

 もう怖くてしょうがない。なんで僕の今月のうさぎちゃんが聖女様なんだよ!!


 *****


「ふぅ。てっきりキスをされると思ったのですが、まさかお池に放り込まれるとは思いませんでしたわ」

「いやいや、あなた様のキスは私のような下賎なる豚めにお授けになっていいものではございません」


 聖女様をお池にぶん投げたくせにキスを断るのは何事か?!


 それはダメなのです。僕の修行僧道から逸脱してしまいます。


 それに彼女は聖女様です。

 聖女様にそんなことをしたら、教会の皆さんにどんな目にあわされるのか分かったものじゃありません。


「いえいえ、あなた様はとても心の澄んだお方ですわ。前世の罪を悔い改め、神さまの試練を潜り抜けたあなた様なら、私は喜んであなた様にこの身を捧げましょう」

「僕は一生、独身で生きていくつもりですからそんなことはしませんよ」

「──あら、そう。それは残念ですわ」

「そんなに悲しまないでください。あなた様のお顔にそのような表情は似合いません」

「まぁ、ありがとうございます」


 ところで、僕がさっきからなぜ薄っぺらい台詞を吐いているのかと言いますと、彼女はぼくのことを英雄王だと勘違いしていることにあります。


 ──英雄王? 勇者じゃないのか?

 ──教会と聞いたら、例のあの教会だ! 

と思う鋭い方もおられることでしょう。


 しかし、彼女の宗教は例の勇者教会(笑)ではなく、叡智の女神“アスタシア”様を信仰するアスタシア教なのです。

 彼女はそこの親玉的存在の聖女をしているのです。


 ──親玉? 


 僕が言いやすかっただけです。それに僕からしたら親玉にしか見えませんしね。


 気分を害された方にはすみません。


 僕が悪かったです(棒)。


 長く語ると、それこそ次の機会まるまる使っても語り切れそうにないなので今日のところは簡潔に説明しますが、とにかくその女神さまは元々も人間だったそうです。彼女はその人生の中に“英雄王”というすごい力を持った戦士と出会ったのです。


 彼は、紳士でとても強くて立派な方だったのですが、残念なことに放蕩癖がありまして、あちこちの町で“ボンボンボン”や“ピーピーピー”をしていたそうです。そのため、彼を愛していた彼女の怒りを買って、彼はオークに身をやつしてしまったという奇妙な伝説があるのです。


 ──あれ、アスタシア様って、英雄王がほかの女の子と仲良くしていたから嫉妬しちゃったんじゃないのかな?


 それを聖女である彼女の前で言うと、いろんな意味でヤバいことになるので、勘弁してください。

 マジで。


 それと言っておきますが、目玉の首飾りをかけている方にそんなことを言ったら、とんでもない目にあいます。


 ここで、実際にそんな目にあったCさんの例について紹介しましょう。


くれぐれもどこぞの大隊長と勘違いしてはいけません。

ほら、綴りが違うでしょ? ──知らないけどきっとそうだよね。うん、絶対そうだよ。


 彼は一度、アスタシア様のことをバカにしたことがあります。


 それを聞きつけた信者たちが彼の住む城に攻め込んで、彼をひっ捕らえて、一晩中アスタシア様がいかに素晴らしいのか延々と聞かされたそうです。

そのことをまるで、神に出会ったかのように答えるのです。


 あのあと、どこからともなく放たれた謎の吹き矢に打たれてから正気を取り戻した彼が悶えながら、僕に泣きつく様には正直引きました。

 魔王様ではなく赤の他人である僕に泣きつくのですから。


 引いてもしょうがないでしょ?


 ──まぁ、普通、拉致されて一晩中教義について聞かされたら怖いですよね。本当に怖い!


 あのときほど彼がかわいそうになったことはありません。


 とにかく僕はそのことがあってか、アスタシア教の信者の方々が怖いのです。


──そういえば、さっきから彼女との出会いに対する経緯について話していませんでしたね。


ここでさっさと話しておいて本題に入りましょう。


 彼女は小さい頃に僕にオークに襲われそうになっているところを助けてもらったことをきっかけに僕のことを英雄王と勘違いしたらしいのです。


 そのため、彼女は僕により英雄王らしくあるために、この丁寧すぎる言葉使いをするよう調、──教

育されたのです。


 ただ、かわいらしい女の子なのですが、少し愛が重いのが難点です。


 ──言っておきますが、彼女はストーカー4号ではありませんよ。

 彼女は僕の可愛い友人です。──ただ、少し愛が重いところは直してほしいです。


 ちなみに、4号は気持ち悪いです。

 少なくともこれまでの方々とは少しベクトルが違いますね。


 まぁ、後々出てくるでしょうからお楽しみに。


「さて、これからアスタシア教会に行きませんか? 歓迎しますよ」

「いえいえ、下賤なオークであるわたくしめにそんな手厚い歓迎をなされるのはいけません。ということで、帰らせてくれませんか?」

「無理です。一度、アスタシア教会に立ち寄ってからにしてください」

「僕はうさぎが食べたいんです。これ以上、うさぎを食べないと気が狂ってしまうんです」

「そうですか。──なら、私のこの身を捧げますので、それでお許しいただけないでしょうか!」


 どうしたら、そう聞こえるんですか?

 僕にそんなことを言ったら、本気になっちゃいますよ。


「やめてください! それだけは……」


 ──うん? 何か嫌な気配を感じるのですが……。


「おう、オーク殿。そこで何をしているのだ? ──あれ? あなたはたしかアリシア様ではないか? ここで何をしているのか?」


 な、なんで女騎士様がいるんですか?!

 どうして浮気した旦那を見つめる妻のような目をするのですか? そもそも、僕はあなたの旦那でも恋人ではありません!


「あらら、レイラ様ではありませんか。ここで何をしておられるのですか?」


 あれ? 聖女様もなんか目が怖いですよ。


 お二人とも笑みを浮かべていますが、少し怖いですよ。子供が泣いてしまうくらい怖いですよ。

 ほら、スマイル。スマイル。


 ──あれ? ひょっとして今から修羅場パート突入ですか?


次回、014.女騎士様と聖女様

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