099.ある女性からのお願い
どうも、オークです。
なぜか魔王討伐に協力するよう命令されました。
ほんと、魔物に魔王退治を頼むなんて聞いたことありませんよ。そんなに勇者の質が悪いんですか? いや、クズノキ君がトップだったら質が悪くて当然だわ!
とにかく、今はそのことについて深く考えないことにしましょう。
今は屋敷に帰って、庭駆け回る犬さんを見つめています。
今は明日の出立のための準備をしておくべきでしょうが、生憎、荷物は趣味の悪い服装と犬さんとかの腰につけた腰布くらいですからね。いや、犬さんは物ではありませんでした。
とにかく、レイラさんやミカエラさんたちのように身支度に忙しいわけではないのです。
しかし、いつ見ても不思議ですね。見た目は人なのに、やっていることが犬みたいなんですよ。
別に人の行動をとやかく言うつもりはないのですが、珍しいものを見た気分ですよ。
「どうしたの? オーク君。私の娘ではなく、メイドを見つめるとは……。少しは反省した方がいいんじゃない?」
な、なぜお母様がここに! まさか、誰かが僕が犬さんを見ていることを漏らしたのでしょうか?
「いや、何を反省すればいいんですか! それに、どうしてここに来られたのですか?」
「娘以外の女性を邪な目で見たことを反省しなさい」
「僕が犬さんを邪な目で見るわけがないでしょうが! 僕は彼女の行動を観察していただけです!」
「それは本当かしら?」
うっ……。そんなに見つめないでください。悪いことをしているつもりはないのに、していると思ってしまうじゃないですか!
「本当はあなたの娘さんも邪な目ではなく、観察対象として見ていました」
「それは構わないわ。あの子が不思議な行動を取るのを愛でるのも良いからね」
「観察対象として見ていいんですか!」
「それよりあなたに会いに来た理由を申し上げます」
「はぁ……」
「どうか娘と結婚してください」
「お気は確かですか?」
「あの子はとてもいい子なの。ただ、男の人に耐性がないだけなの」
「いや、オークが好きな時点でだいぶおかしな子だと思いますよ」
「しかし、何度もお見合いしても上手くいかなかったわ」
「それは前にもどこかで聞いたような気がします」
「しかし、あなたはオークであるはずなのに、とても紳士的な人で、あの……。どうして急に抱き着こうとしたのですか?」
「本当は手を握りたかったのですが、生憎、折れてしまって、しょうがなくハグしようと思ったのです」
それに、生まれて初めて僕のことを紳士であると認めてくれた女性ですからね。嬉しさのあまりつい抱きしめたくなりました。
「とにかく、あの子にはあなたしかいないの。どうか結婚してくれないかしら?
「ごめんなさい。無理です」
「どうして? あの子は私に似て、とても美しいわ。それに、家事も一通りこなせて、お金も稼げるわ」
「いや、家事をしているところなんて一度も見たことありませんよ」
「そんなことないわ。あの子はやればできる子よ」
「彼女の家庭的な一面を僕は一度も見たことないんで、できると言われても、信用できませんよ! そもそも、オークと娘を結婚させて良いんですか! 法律で禁止されているんでしょ!」
すると、お母様は少し考えました。そして、笑顔で答えました。
「うちのエドワードを使えば、何とかなるわ」
「いや、エドワードさんに余計な苦労をかけるだけじゃないですか! あの人、いつか死にますよ!」
「とにかく、結婚してほしいの。孫の顔が見たいの」
「いや、あなたにはお孫さんがいるはずです。エドワードさんにはお子さんがいるんでしょ!」
「レイラの子供が見たいの!」
「それなら、そうとはっきり言ってくださいよ」
「じゃあ、結婚するのね!」
「そんなわけないでしょうが!」
「どうしてなの……」
その涙目はずるいですよ。つい頷いてしまうじゃないですか!
ここは冷静に彼女を諭しましょう。
「仮に僕と彼女が結婚して、子供ができたとします。その子はオークですよ。それで良いんですか!」
「安心して。聖水をしっかり飲めば、瘴気が取れて、普通の人の子になるの」
「そんなことがあって良いんですか!」
「そうやって子供を作った女性なら、何人も知ってるわ」
「それでも嫌です。僕はあの人だけは絶対にお嫁さんにしたくはありません!」
「そう。なら良いわ」
お母様は突然、にこやかな笑みを浮かべました。
「あの子には後で男を落とすための方法を教えておきましょう。あの子があなたを落とせば結婚するのよね?」
そして、お母様は屋敷の中へ入って行きました。
「えっ、ちょっと待って! 何を教えちゃうんですか! 僕は何をされても、絶対に屈しませんよ!」
次回は明後日更新予定です。




