095.正義の味方は遅れてやってくる
一応、前話の補足をしておきます。
たしか、奥さんに裏切られた男性の話の場面で、奥さんが夜な夜な森に忍び込んでいたと思われますが、その森は瘴気の出ない安全な森です。
瘴気の出る森はオークが住んでいたクロフグの森くらいなものです。だから、その奥さんの肺が特別強かったとかそういうわけではありません。
さて、この話で累計100話になりました。どうぞお読みください。
「出たな! 人の皮を被ったオークめ!」
「──なぁ、オーク殿。彼らにはわたしたちがお似合いに見えるらしい」
「どこをどう聞いたら、そう聞こえるんですか!」
そのポジティブなところは見習いたいところですが、さすがに、それを誉め言葉として受け止めちゃまずいでしょ。
「なぜ、この女は喜んでいるのだ? 普通、人の皮を被ったオークだと言ったら、誰だって嫌がるものだろ?」
すみません。この人だけは例外なんです。おかしいんです。
「さて、OHKの諸君。早くわたしにオーク殿を返してくれないか? 抵抗するのであれば、わたしも攻撃しないわけにはいかない」
「我々はこれまでオークに恨みを持って生きてきたんだ! そう易々と渡すものか!」
「第一、王国騎士であるお前がなぜ王国の法を守らない! 魔物は見つけ次第殺さなければならないだろうが!」
骸骨マスクさんたちの法が正しいと思えてしまうのですが、気のせいでしょうかね?
「困ったな。“キュルキュル”!」
「GYAOOOOO!」
レイラさんの声を合図に黒蜥蜴君は火を吐きました。
熱い! 熱い!
「どうして、僕に向かって火を吐くんですか! 僕が豚の丸焼きになってしまうじゃないですか!」
「──なぁ、“ボウボウ”」
「GYA?!」
「お前はなぜオーク殿に火を吐いたんだ?」
「GYA、GYAOOOO!」
相変わらず、何を言っているのか分かりません。しかし、レイラさんには分かるようです。
あれ? たしか、レイラさんは黒蜥蜴君に嫌われていませんでしたか?
どうして、黒蜥蜴君はレイラさんの言うことを聞いているのでしょうか?
「そうか。なら、さっさと消火しろ」
「GYA、GYA、GYAOOOO!」
すごい。嫌がっています。空を飛びながら、地団駄を踏んでいるように見えます。
「言うことが聞けないのか。しょうがない。お前は後で八郎に調理してもらおう」
「GYAO!?」
えっ! あのゴムって調理したら美味しくなるの! 気になります。とても気になります!
「なら、さっさとやれ!」
レイラさんの指示に応じた黒蜥蜴君は渋々自分の翼を揺らして火を消しました。
「ちょっと吹き飛んじゃ、ぶあおおお」
しばらくすると、黒蜥蜴君は翼を揺らすのを止めました。
あぁ、死ぬかと思った。
いくらなんでも、あんな強風受けたら、死んじゃいますよ。
もう嫌! さっさと僕を解放して!
「ねぇ、レイラちゃん」
あれ? いつの間にか、このシリアスな場面には似合わない扇情的なドレスを着たピンク色の髪の女性がいます。ふむ。このサイズは。
「あなたはパパビーナさん!」
「そうよ。オークちゃん。残念ながら、ウィードちゃんは連れて来れなかったけれど、私のお気に入りのオークをたくさん連れてきたわ! さぁ、やっておしまい!」
すると、どこからともなくたくさんのオークが現れました。そして、そのオークたちはOHKのみなさんに襲いかかりました。
「「「ぶおおおおおお!」」」
「いったいどこからオークの群れが現れたんだ!」
「来、来ないで! わたしは不味いから! ほら、そこに美味しいのがいるから!」
「どうして裏切るの! わたしたちは友人じゃなかったの?!」
いざ、危険な場面に遭遇すると、人って本性を現すと言いますが、これはひどいですね。仲間割れどころじゃありませんよ。この後、どうするんでしょうかね。少し気になります。
あと、このオーク君たちは僕と同じように紳士なので、“ピッピッピ”なことはしないと思いますよ。──たぶんね。
「さて、今のうちに運び出すとするか」
「ちょっと待ってください。僕はこのまま運ばれるのですか?」
「あぁ、そうだが」
「いくらなんでもオークを人前で磔にしながら、運びはしませんよね」
「磔にされた状態のオーク殿を愛でながら、運ぶ。よく考えたら、これはなんというご褒美だ!」
「ここに頭がぶっ壊れた人がいる!」
磔にされた状態で愛でられるのは、なんか怖いですよ!
「つれないなぁ。しょうがない。MDR99!」
「はい。ここに」
い、いつの間にいたんですか!
しかも、この人数。多すぎません? 100人くらいいませんか?
これは過剰戦力ですよ! いくら何でも、骸骨マスクさんたちがかわいそうです!
「オーク殿を運んでくれ。わたしにはまだ仕事がある」
「御意」
「ちょーっと待ってください。ま、まさか、磔のまま運ぶんじゃないでしょうね。えっ、どうして黒蜥蜴君と僕を縛り付けるんですか?」
心配する僕をよそに、レイラさんは黒蜥蜴君に優しく語りかけました。
「さぁ、“ポンポン”! 王都の屋敷に帰るのだ。さすれば、ご褒美をやろう」
「GYAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」
黒蜥蜴君は喜びながら、背中に縛り付けている僕など気にせずに、空を飛びました。
「ぴぎゃあああああ!」
次回は明後日更新予定です。




