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異世界もコネ次第!~王立貴族学園魔法学科へようこそ  作者: 武蔵野純平
第一章 ようこそ! 王立貴族学園魔法学科へ!
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第六話

 一人はさっきの部屋で水晶玉テストをしていた怖そうな女の人。

 もう一人は白地に青のペイズリー柄のローブを着たおじいちゃんだ。


 おじいちゃんが話し始めた。


「ふむ。今年は三人か。豊作! 豊作! では、お一人ずつ詳しい結果をお知らせいたしましょう」


 どうやら水晶玉テストの結果を教えて貰えるらしい。

 俺が何でここにいるのか、やっとわかるのか。


「最初はパウル王子から……」


「うむ」


 パウル王子は座ったまま鷹揚に肯いた。


「パウル王子は、水属性と火属性の魔法に適性がございます。おめでとうございます」


「ほう! 二つの属性に適性があるか!」


「はい。ただし魔力の量はそれ程多くはございませんでしたので、おそらくは初歩的な水魔法と火魔法なら使える様になるかと存じます」


「ふむ……では、水を出したり、火を付けたりと言うレベルか……。それでは王国の役には立たんの……」


 ははあ。

 どうやらあの水晶玉テストが何なのかわかって来たぞ。

 どんな魔法が使える様になるか?

 どの位のレベルで使える様になるか?

 それがわかるらしい。


 パウル王子は水と火の魔法が初歩レベルで使えると言う訳だ。

 派手な戦闘用の魔法と言う訳にはいかないのだろうけど、魔法が使えるだけ凄い!

 パウル王子はがっかりしているみたいだけれど、それでも千人に一人の割合だから凄い事だ!


 おじいちゃんが直ぐにパウル王子にフォローを始めた。


「いえいえ。十分に王国の役に立ちますぞ。王族は生き残るのが責務でございますから、万一の場合に水が飲め火を起こせると言う事は生存確率が大きゅうなります」


「むっ……確かにな……」


「殿下お一人だけでなく、国王陛下や王族の皆様方の生存確率が上がるのでございます。それに……初歩と云えども魔法は魔法でございます。王族が魔法に親しまれる事は王国の将来にとって大きなプラスでありましょう」


「そうか! そうであるな!」


 パウル王子のご機嫌は直ったようだ。

 おじいちゃんの言う通りで、王族が魔法について見識があれば色々と良い影響が出るだろう。それに魔法が使える王子なんてカッコイイ!


 おじいちゃんはお嬢様に話し始めた。


「次はアメリア侯爵令嬢……」


「先生。私は生徒で教えを乞う立場です。アメリアとお呼び下さい」


「ほぉっ! これは大変結構なお心がけですな! では、アメリアの適性をお知らせします。アメリアは風属性と水属性に適性があり、わずかではあるが土属性の適性も見られます」


「わずかですか……」


「左様。土属性魔法はアメリアの努力次第ですな。魔力量は中級。精進なされば優秀な魔法使いになられるでしょう」


「ありがとうございます!」


 凄いな!

 俺は魔法についてはまったく分からないが、おじいちゃん先生の言いぶりだと相当な有望株だ。


 パウル王子も感嘆している。


「素晴らしい! 三属性に中級の魔力量とは! さすがはラファイエット=レビル家! 魔法の名門だ!」


 アメリアお嬢様は、スッと立ち上がると制服のスカートの裾をちょいとつまんで優雅に礼をした。


「お褒め頂き光栄です! 殿下!」


 おおっ! 何と言う優雅さ!

 まさにザ・貴族って感じだ。

 アメリアお嬢様の後ろにバラの花が見えた。

 俺の様な田舎の下級貴族とは別次元だ。


 おじいちゃん先生がくるりと俺の方を向いた。

 俺の番か!

 俺は水晶玉を割ってしまった。あれで何かわかるのだろうか?


「さてと。君はアルト・セーバー君だったね。私と会うのは初めてだ」


 そりゃそうだ。

 俺はド田舎の自領から外に出た事はないのだ。


「はい。何分にも王国の東の端にある騎士爵の三男ですので……王都に出て来たのも初めてで……その貴族の世界に知り合いもおりませんで……」


「ああ! なるほど! それで今まで君とは面識がなかったのだね。ふむふむ。君は試験で水晶玉を割ってしまったそうだね? 三度も?」


「はい……申し訳ありません……」


「ああ! 気にしないで結構! さて、それでだ……」


 それまで優しい感じだったおじいちゃん先生が、真剣な表情に変わった。

 パウル王子やアメリアお嬢様の背筋が伸びる。

 俺も緊張しておじいちゃん先生の言葉を待っている。


「水晶玉が割れた……ふむ。ここから導き出される答えは何であろうか? 水晶玉の故障? 元から割れていた? それとも……」


「それとも……?」


「水晶玉を割るほどの魔力があった……とか」


「あり得ません!」


 アメリアお嬢様が立ち上がった。真剣な表情でおじいちゃん先生に議論を挑みだした。


「試験で用いられた水晶玉は標準的な魔力検知用の水晶玉です! あの水晶玉で上級魔法使いクラスの魔力までカバーされています!」


「ふむ。アメリア嬢は正しく認識している事と間違って認識している事がある」


「間違って……! 一体何を間違って認識しているのでしょうか?」


「このアルト君は上級のワンランク上、つまり特級魔法使い用の水晶玉も割ってしまったのだ」


「特級魔法使い……魔導士クラス! それこそあり得ません! 魔導士クラスの魔法使いは、先生も含めて王国に数名しかいません!」


「そう。その通り。正しい認識だ」


「それは恐らく水晶玉の故障の可能性が高いと思われます」


「ふむふむ。まさにその通りかもしれん。アメリア嬢の論や良し! しかし……」


「しかし?」


「時にその高い可能性がひっくり返る事がある」


「そんな……!」


「特に魔法の世界ではな」


 おじいちゃん先生は最後にいたずらっ子の様に俺に向かってウインクをした。

 俺はかなり動揺をしている。


 どうもこれまでの話しの流れから行くと……ひょっとして俺は……魔法使いに……なれるのか?

 それも……結構凄い感じの?

 ちょっと期待が膨らんでしまう。


 しかし同時に不安でもある。

 周りは金モール――パウル王子にアメリアお嬢様だ。貧乏騎士爵家の三男坊の俺がやっていけるのだろうか?

 どう考えても不釣り合いだ。


「さて、アルト君! 議論も大切だが、立証する事はさらに大切だ。わかるね?」


「は、はい。わかります。しかし、立証と言われても僕にはどうやって良いのか……」


「なーに、簡単だ! よっこらしょと!」


 おじいちゃん先生は何もない空間から巨大な水晶玉を取り出し床に置いた。

 これも魔法なのか?


 しかし、なんてデカイ水晶玉だ!

 水晶玉の高さが人の高さイコールで……そう、運動会で使う大玉転がしに使うサイズだ。

 俺が目を丸くしているとおじいちゃん先生が俺の側に来た。


「アルト君。この水晶は伝説級魔法使い用だ。割れる心配はない……と思うから安心したまえ」


 逆に不安だ!

 そこはビシッと『心配ない!』と言い切って欲しかった。


「では、この特大の水晶玉に手を触れて『光れ!』と唱えれば良いですか?」


「そうだ! それで君のテスト終了だ!」


 よーし! それなら一丁やってやろうじゃないの!

 俺は腕まくりをして、水晶玉に触れようとした。


「ちょっと待って!」


 アメリアお嬢様からストップが掛かった。


ちょっと疲れたから今日はここまで。

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