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異世界もコネ次第!~王立貴族学園魔法学科へようこそ  作者: 武蔵野純平
第四章 ようこそ! 戦後のゴタゴタへ!

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第四十六話 論功行賞

 ――翌日の昼。


 黄金のグリフォン号は、王都へ到着した。

 空から見た王都は、大都会だった。


 街を東西に貫く大きな川が流れている。

 川にそって石造りの遊歩道が見え、沢山の人がくつろぎ、露店も出ていた。


「アルト、あれを見ろよ! あの塔が王都を守っているんだぜ!」


「へえ!」


 隣でサンディが解説してくれる。


 王都の中心に大きな金色に輝く尖塔が立っているのが見えた。

 この尖塔自体が王都防衛の魔道具だそうだ。


 巨大な街だが、外側をぐるりと城壁が囲んでいる。

 城壁の中はたぶん山手線の内側とか、そのレベルの広さだ。

 城壁の中には、住宅、商店だけではなく森も見える。


 街の西はずれ、城壁の外にある平地に、黄金のグリフォン号は着陸した。

 他の従軍した飛行船も次々に着陸する。


「サンディ、なんか凄いね……」


「ああ。俺も王都は圧倒されるよ。アルトは初めてだろう?」


「うん。だから、もう、びっくりだよ! ウチの実家、セーバー領とは比べ物にならないや」


 地上に降りると白銀の甲冑を着込んだ騎士と豪華な金ピカ馬車が迎えに来ていた。

 騎士がパウル王子にひざまずいて告げる。


「パウル王子! 王宮からお迎えに上がりました!」


「うむ。ご苦労である」


 分乗して馬車に乗り込む。

 俺はサンディとアメリア、アメリアのお世話係のマリエラと馬車に同乗した。


「ねえ、アメリア。これから王宮に行くのかな?」


「そうよ」


 アメリアに話しかけて見たが、何か他人行儀な感じだ。

 キスして以来初めて会話するからかな?

 照れている?


 まあ、なんだ。

 後でまたキスがしたいな。

 そんな不埒な事を俺は考えていた。


 馬車は城壁の門をくぐり、王都西側にある王宮に入った。

 王宮の門を馬車がくぐると、広大な庭園が広がっていた。


 整備の行き届いた青い芝生に、真っ白な石を敷き詰めた道路が幾何学模様を描く。

 噴水からは水が噴き出し、鮮やかな赤い衣装を着た宮殿の文官が忙しそうに行き来している。


「サンディ! 凄いよ!」


「ああ。俺も王宮は初めてだ! 別世界だな!」


 俺もサンディも下級貴族だから、王宮なんて来たことがない。

 アメリアを見ると落ち着いて窓の外を眺めている。

 さすが上級貴族! 名門ラファイエット=レビル家のご令嬢だ!


 王宮に着くと宿泊用の棟に案内された。

 俺の泊まる部屋で、直ぐにサンディに着替えさせられた。


「なあ、サンディ。同じ制服だから着替える事はないと思うけど?」


「バカ! 王様と会うのにシワの付いた制服で行く気か! キッチリアイロンをかけた制服と糊のきいたシャツに着替えるんだよ!」


「えっ!? 王様と会うの!?」


 それ聞いてないよ。


「今朝、マックスウェル先輩がブリッジでみんなに予定を伝えただろう?」


 まずい!

 その時、俺はアメリアの顔ばかり見ていた。

 もう一回キスしたいなとか、考えていたのだ。

 ああ、青いリビドーが……。


「ええと……。そうだっけ?」


 サンディがねっとりとした視線を感じて、俺は視線を逸らしとぼけた。


「聞いてなかったのか? 夕方から王様に謁見。論功行賞だ」


「論功行賞? それ何?」


「今回の戦争で手柄を立てた人が褒められるんだよ。その後は、戦勝パーティーな。夜までこの部屋に戻って来られないからな。後、トイレは済ませておいてくれよ!」


「わかった」


 サンディにケツを叩かれて、トイレを済まして身支度を整える。

 何だかアメリアに叩かれ、サンディに叩かれ、俺のお尻は叩かれてばっかりだな。


 おかしいな。

 前世を合わせたら、二人よりもはるかに年上なのに。


「アルトー! セーバー! 騎士爵ー! 子息ー! 国王陛下のお召しー!」


「うわっ! あ、案内をー! 乞うー!」


 部屋の入り口に赤い服を着た宮殿文官が立ち、独特の言い回しで俺の名を呼んだ。

 俺も同じような言い回しで返事をする。


 これが作法の一つだ。

 学校の授業で聞いていたけれど、ちょっと面白い。


 赤い服の文官について、宮殿の中を歩く。

 後ろにサンディが従っている。


 謁見の間は、まだ閑散としている。

 どうやら身分が低い順、下級貴族から呼ばれるらしい。


 謁見の間は体育館位の広さがあり、正面奥が一段高くなっている。

 豪奢な椅子が置いてあるから、あれが王様の椅子――玉座ってやつだろう。


「こちらでお待ち下さい」


 赤い服の文官に案内されたのは、謁見の間の右奥だった。

 次々に人が入って来て、文官が位置を割り振っていく。


 俺が案内された場所は、パウル王子派閥の場所だった。

 人が埋まった所で最後にパウル王子が入って来た。


 アメリア、マックスウェル先輩、ジャバ先生、コード夫人、お世話係のマリエラといつものメンバーが揃っている。


「国王陛下! ご入来!」


 最後に国王陛下が入って来た。

 皆が礼法に則り、頭を下げる。


 その中を赤いマントをはおり、王冠をかぶった王様がゆっくりと玉座に進む。

 チラリと見た王様は、顔色の悪い疲れた中年男性だった。

 目元がパウル王子と似ている。



 王様が玉座に座ると論功行賞が始まった。

 王様の側に立つ大臣が大声で、戦争の経緯や戦果を説明する。

 隣に立つジャバ先生に小声で聞いてみる。


「凄く盛り上がりますね。いつもこうなのですか?」


「今回は勝ち戦ですからね。負けていた時はお通夜みたいですよ」


 なるほど。

 そう言う物か。


 最初に総大将ダラス将軍が呼ばれた。

 ダラス将軍の戦功は総指揮官として戦を勝利に導いた事だ。

 大臣が戦功を読み上げて、最後に国王陛下から言葉がかけられた。


「ダラスよ。誠に大義であった。褒美は何を望む?」


「はっ! 金を頂けると嬉しゅうございます」


「よかろう」


 金糸の入った赤い服を来た侍従が、大きな革袋をダラス将軍に渡した。

 あれに金貨が詰まっているのかな?


「ありがたく」


 ダラス将軍は恭しく革袋を受け取った。


 次に呼ばれたのはパウル王子だ。

 別動隊としてパルシア帝国軍を討ち破った事が戦功として読み上げられた。

 パウル王子も金を希望して、革袋を受け取った。


「セーバー騎士爵家が一子! アルト・セーバー!」


「えっ!?」


 突然、俺の名前が呼ばれた。

 なに? なに? 聞いてないよ?


 俺が棒立ちになっていると、パウル王子、マックスウェル先輩が手で『早く行け!』と合図を送って来る。


 いやいやいや!

 待って下さいよ!


 こんな人が沢山いる所で、それも国王陛下の前へ出るなんて、無理無理!


「アルト! 何をやっているの! 早く行きなさい!」


 アメリアがわき腹を突きながら小声で叱って来る。

 俺も小声で返す。


「無理だよ! こんな大舞台!」


「何を言っているのよ! 学校で謁見の作法はやったでしょ!」


 いや、そんな事を言われても……。

 まさか、俺がここで呼ばれるなんて思ってもみなかった。


「セーバー騎士爵家が一子! アルト・セーバー!」


 やばい! また、名前が呼ばれた!


「あなたねえ! 早く行きなさいよ! しっかりなさい!」


 痺れを切らしたアメリアが俺を突き飛ばした。


 俺はよろよろと国王陛下の前に進み出た。

 会場の視線が一斉に集まる。


 だめだ。

 もう帰りたい。


「むっ? 君がアルト・セーバーか?」


 髭を生やした立派な体格の大臣が俺に聞いて来た。

 威圧しているつもりはないのだろうけど、大臣から威圧感が……。

 俺は頭がクラクラしながら、なんとかカミカミの返事をする。


「ひゃ、ひゃい!」


「学校で習った通りにすれば良い。では、そこにひざまずいて、国王陛下に礼をとりなさい」


「ははあー!」


 俺は何とか学校で習った礼法通りに行動した。

 国王陛下の前で片膝をつき頭を深々と下げる。


 大臣が俺の功績を読み上げ出したが、俺は心臓がバクバク言って大臣の言葉は耳に入って来ない。

 周りはかなり盛り上がっているが、小心者の俺には地獄だ。


 ううう、胃が痛い。

 早く終われ。


「アルト・セーバーよ。誠に大義であった。褒美は何を望む?」


 国王陛下が俺に声を掛けた。

 褒美?

 えっと?

 何て答えれば良い?


 まずい!

 パニックった!


「うあああ! えええううう!」


 俺は意味不明の唸り声を発して、オロオロと視線を彷徨わせた。

 アメリアとサンディが、しっかりしろと言っているのが口の動きでわかった。


 そんな事を言うなら代わってくれ!

 すると大臣が助け舟を出してくれた。


「あー、アルト・セーバー。まず、落ち着いて! 自分の欲しい物を正直に言って構わないよ。ダメならダメで、そう言うから。何でも欲しい物を言いなさい」


「ひゃい!」


 また、かんだ!

 だけど、さっきより少し落ち着いたぞ。

 大臣さんありがとう!


 欲しい物……。なんだろう?

 アメリアが欲しいですとか言ったら、きっともめる。

 これは言わない方が良いな。


 えーと、他に欲しい物……服とか食べ物とかは、パウル王子のお陰で困っていないし……。

 他に何かあったかな……。


 うーん……。


 そうだ!


「道路をお願いします!」


「えっ!? 道路!?」


 大臣が驚いて声を上げ、国王陛下と顔を見合わせている。

 まあ、学生が『道路が希望』とか言ったら驚くよな。

 大臣が問い質してくる。


「アルト・セーバー。道路が希望と言うが、本当にそれで良いのか? 宝物庫にある剣であるとか、いわゆるお宝でも良いのだぞ?」


「道路でお願いします! あの……私の実家……セーバー騎士爵領は、王国の一番西にあるド田舎でして……。近くの大きな街へ出るにも、人一人が通れる獣道を歩かねばなりません」


「なるほど。君の実家に道路を通して欲しいのか」


「はい! 商人の馬車が通れるような道路をセーバー騎士爵領に通して下さい! お願いします!」


 セーバー騎士爵領を旅立った日。

 あの細い道を歩きながら、夢見たんだ。


 いつか商品を満載した商人の馬車が、セーバー騎士爵領に来るようになれば良いと。

 そうすれば父も兄も、領民のみんなも喜ぶだろう。


 国王陛下と大臣が、しばらく小声で相談していた。

 やがて国王陛下が羊皮紙にサインをして、大臣が俺に羊皮紙を差し出した。


「アルト・セーバーよ。親思い、領地思い、誠に結構。そちの希望をかなえよう」


「ありがたく!」


 俺は大臣が差し出す羊皮紙を、両手で丁寧に受け取った。

 そこには『セーバー騎士爵領にて道路普請を行う』と書いてあった。


 ああ、これで、俺が王立貴族学園へ入学した目的は達成したな。

 父は借金をして学校に入れてくれたけれど、これで恩は返せた。


 良かった!


 俺は緊張でクラクラしながら、みんなの所に戻った。


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