第四話
――二時間後。
「じゃあサンディ! お先に!」
「おう、アルト! また後でな!」
やっと俺の順番が回って来た。
教室の左の扉から次の部屋に入ると、そこは十畳くらいの部屋だった。
真ん中にテーブルが置いてあり、テーブルの上には野球ボール位の水晶玉が置いてある。
テーブルの側に座るいかにも魔法使いと言う感じの黒いローブを来た女性が指示を出して来た。
「では、この水晶玉に手を当てて『光れ!』と唱えて下さい」
「はい。わかりました」
この人はなんかちょっと怖い感じだ。
取引先にいたおっかない女性上司って感じで、テキパキしていて仕事は出来そうだけど、怒らせると怖いタイプだな。
さっさと済ませよう。
俺は指示された通りに水晶玉に手を当てた。
「光れ! あっ!」
俺が『光れ!』と言った途端に水晶玉にヒビが入って半分に割れてしまった。
やばい。どうしよう……。
「す、すいません!」
「たぶん故障でしょう。あなたが気にする必要はありません。予備があるので……じゃあ、この水晶玉でやってみて」
おっかない人は新しい水晶玉をテーブルの上にのせた。
俺は同じ様に水晶玉に手に手を当て『光れ!』と唱える。
「ああっ!」
また水晶玉が割れてしまった。
おっかない人がおっかない顔で、じーっと割れた水晶玉を見つめている。
まずいな……。
弁償とか言われたらどうしよう……。
ぶっちゃけた話し俺は金がない。
父上が払ってくれたのは、王立貴族学園の学費と寮費だ。俺の小遣いは何かアルバイトをして稼がなきゃならない。
こんな高そうな水晶玉は弁償できないぞ。
「あ……あの……僕……お金なくて……」
「えっ? ああ。気にしないで大丈夫です。これは試験中の事故ですからね。あなたに責任はありません。さてと……じゃあ、次はこの水晶玉を試してみて」
おっかない人はバレーボールサイズの大きな水晶玉を持ち出して来た。
同じ様にテーブルの上に置く。
今度は大丈夫だよ……ね……?
バレーボールサイズの水晶玉に手を当てる。
「光れ! ああっ!」
大きな水晶玉は、真っ二つに割れてしまった。
「……」
「……」
俺とおっかない人は、無言で割れた水晶玉を見つめた。
やばいな、どうしよう……と俺が心配をしていると、おっかない人がテキパキと話し始めた。
「ふうう。良いでしょう。そこの扉を出て右へ。一番奥の部屋で待っていて下さい」
「はい。わかりました……」
なんだろう? ヤバいのかな?
こういう時にサンディがいてくれたらな。
あいつに色々相談できるのに!
扉を出ようとするとおっかない人に名前を聞かれた。
「あなた名前は?」
「アルト。アルト・セーバーです」