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異世界もコネ次第!~王立貴族学園魔法学科へようこそ  作者: 武蔵野純平
第三章 ようこそ! パルシア戦役へ!

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第三十四話 西軍への奇襲

昨日3話更新しています。

「よし! アオ! 行こう!」


「キュウ!」


 今夜は新月、星明りだけの暗い夜空にアオが飛び立った。

 飛行船『黄金のグリフォン号』を一周して、見送りのクルーたちに手を振る。


「今日で終わらせてやる!」


 これからパルシア帝国の西軍を叩く。

 この戦争を終わりに出来る。学校に戻れるのだ。


 ああ、学校に戻ったらアメリアにケーキをおごらないとね。

 キングスホール寮の食堂って訳には行かないよな。

 するとキャムの街で美味しいケーキの店を探さないと……サンディに頼もう。


 思考が散漫になっている。

 集中しなくちゃ。


 アオが高度を落とし街道の上を猛スピードで飛ぶ。

 やる事は前の二回と同じ。

 この先にある西軍の野営地に低空高速侵入して、フレイム・エクスプロージョンを放つ。


 いたっ!

 見張り!


 街道の先に白い布を頭に巻いたパルシア帝国軍の兵士が見えた。

 

「ロール!」


「キュ!」


 アオにきりもみ回転を命じ、膝にグッと力を込める。

 上下が入れ替わり地上の状況が目に入る。


 見張りの数が多い!

 四人?

 いけるか?


「ストーンショット!」


 両手を広げて広範囲にストーンショットをばら撒く。

 多数のショットガンを撃ち込むイメージだ。


 だが、敵の見張りがとっさに大楯に隠れるのが見えた。

 敵の反応が良い!


「××××! ××××!」


「ピー! ピー! ピー!」


 襲撃を告げる見張りの声と笛の音が暗闇に響く。


 まずい!

 仕留められなかった!

 見つかった!


 どうする?

 引き返すか?

 あと少しで野営地だが……。


 判断を迷っていると野営地が見えた。

 敵兵士たちがテキパキと動いている。


 クッ! ままよ!

 このままアタックだ!


 野営地に突入しようと思った瞬間、前方と両側から火炎放射器のような激しい炎が襲って来た。


 魔法使い?

 火魔法ファイヤーか?


 魔力障壁を、前、左、右と三方向に展開する。

 これで火魔法はレジスト、帳消しになる。

 だが、炎は魔力障壁を突き抜けて来た。


「なに!?」


 何が起こったか理解できなかった。

 身体強化した視界の隅に、箱状の魔道具を操作するパルシア帝国軍兵士の姿が見えた。


 次の瞬間、視界が炎で真っ赤に染まった。


 ギギ! バリン!


 体の周りに張っていた物理障壁が弾け飛んだ。

 炎が俺とアオを容赦なく焼く。


「グッ! ガッ!」


 息が……苦しい……。

 喉と鼻を焼かれたらしい。

 息を吸いこもうとするが、上手く吸い込めない。


 体中に痛みが走る。

 全身を焼かれたのだろう。

 体に力が入らない。


 俺はアオから落下してしまった。

 頭から地面に叩きつけられ、激痛が走る。


「グッ! オッ……フッ……」


 目を開こうとするが、既に左目は開く事が出来ないでいた。

 四つん這いになり立ち上がろうとするが、力が入らない。

 ふと右手を見ると焼けただれ、無数の水ぶくれが出来、腫れ上がっていた。


 周りで声が聞こえる!


「××××××!」

「××××!」

「××××××!」


 パルシア語?

 敵陣の中に落下してしまったのか?

 辛うじて見える右目で辺りを伺うと、大きな箱状の魔道具を持った兵士たちが、俺を包囲している。


 まずい……また火炎攻撃が来る!


「ま、魔力障壁!」


 今度は大量の魔力を使い分厚い魔力障壁を展開する。

 俺が魔力障壁を展開すると同時に、敵は大きな箱状の魔道具から火炎を放射した。


「ああああ!」


 まただ!

 炎は魔力障壁をすり抜けて、俺の体を容赦なく焼いた。


 一体どうなっている?

 魔力障壁を展開したのに!


 地面を転がり、火を消そうともがく。

 体のあちこちでブスブスと火が音を立てる。


「××××××!」

「××××!」


 だめだ。

 パルシア語の声が近づいて来た。

 包囲されている。


 こりゃ……助かりそうにないや……。

 殺されるな……、俺……。


 覚悟は決めたはずだった。

 だが、殺す覚悟は出来ていたが、殺される覚悟は出来ていなかった。


 その事に気がついて、俺は後悔した。

 火傷の痛みと息苦しさの中、もう一度アメリアに会いたいと思った。


「ごめん……ケーキ……約束守れそうにないや……」


 もう、力が出ない。

 俺は生きる事を諦めた。


「キュイー!」


 耳にアオの声が響いた。

 ハッとして顔を上げると、アオがパルシア帝国軍相手に暴れている。

 ブレスを吐き、カギ爪で引き裂き、翼で風を起こし、敵を吹き飛ばしている。


 ボルグさんとの訓練を思い出した。

 こう言う窮地に陥った時の訓練もやったじゃないか!


「アオー! 脱出だー!」


「キュー!」


 俺の声に反応してアオがこちらに飛翔して来た。

 低空を滑空して来る。


 ボルグさんとの訓練通りに、俺は魔力を全身に行き渡らせて身体強化を行う。

 滑空するアオと並走するように駆け出した。


 アオの後ろ脚がすぐそこにある。

 これにつかまれば……。


 後ろから弓が射られて、背中に矢が突き刺さる。

 身体強化のお陰で深くは刺さらないが、それでも激痛が走る事に変わりはない。


 アオが後ろ脚をグッと伸ばした。

 俺はその後ろ脚に飛びつく。


 成功した!


 アオは俺の体を後ろ脚の爪でそっと包むようにつかんだ。

 同時に体にグンとGを感じる。

 一気に高度が上がっているのがわかる。


 危地を脱した……。


「アオ……。黄金の……グリフォン号まで……たの……む……」


 俺は完全に意識を失ってしまった。

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