第二十六話 ドラゴンの名前、朝青龍は却下で
俺はドラゴンの乗り方、操竜術をボルグさんに教えて貰う事になった。
ボルグさんはワイルド系ハンサムな三十代で、普段は海軍勤めらしい。
「じゃあ、早速始めるかな! お世話係もドラゴンの世話の仕方をちゃんと覚えておけよ!」
「「はい!」」
なんか教え方が厳しそうな気がするが……。
俺、大丈夫かな?
最近は貴族にも慣れて……いや、俺も一応は騎士爵家の人間だけれども、貴族学園は偉い人、高位の貴族家が多すぎるからな。
貴族にも慣れて爵位でビビったりはしなくなったけれど、ボルグさんは別の『圧』を感じる。
暑苦しいの『あつ』かな~、ちょっと熱血が入っているよな。
「じゃあ、最初はドラゴンに食事を与える。ドラゴンの食事は魔力だ。ドラゴンは完全無欠な生命体だから、人間や動物のような食事はしない」
ほうほう。
魔力が食事なら助かるな。
魔力が豊富な俺は、ドラゴンの食事代はタダみたいなものだ。
俺とサンディは直立不動でボルグさんの説明を聞く。
「ドラゴンは辺りに漂っている魔力を鱗で吸収している。だから本来ドラゴンに魔力を与える必要はないが、ドラゴンとの絆を深める為に魔力を与える。見ていろ! こんな風に!」
ボルグさんは自分のドラゴンに近づくと首の付け根に手をかざした。
ほんのりと魔力の動きを感じる。
「あっ……鱗が光っている!」
「そうだ! こっちに来て近くで見ろ! こうして首元のこの鱗から魔力をゆっくり流してやるとドラゴンが魔力を吸収する。この光っている鱗だ」
近づいて見るとボルグさんが魔力を流し込んでいる鱗は並び方が回りの鱗と違う。
「鱗の並び方……鱗の付き方が、逆になっていますね?」
「そうだ! 良く気が付いたな! ここが竜の逆鱗と呼ばれる箇所だ。竜の急所でもある。この逆鱗から魔力を流してやるんだ」
逆鱗は美しく光っている。
ボルグさんのドラゴンは気持ちよさそうに目をつぶって、ボルグさんの魔力を受け入れていた。
やがて首を伸ばしてゲップをした。
「GEPU!」
「ゲップをしたら魔力を流すのを止める。ゲップはドラゴンが満足した証拠だ」
満腹になると眠くなるのはドラゴンも人間も同じらしい。
ボルグさんのドラゴンは、食事が終わると猫のように丸まって眠ってしまった。
「よし! アルトやってみろ!」
「はい!」
自分のドラゴンに近づいて見る。
デカイ……。
マックスウェル先輩やアメリアお嬢様のドラゴンよりは小さいけれど、俺のドラゴンも人間よりは遥かに大きい。
ちょっとビビるな……。
俺が近づいて来たので、ドラゴンが首をかしげくりくりした丸い目をしばたいている。
「キュウ?」
「魔力をあげるよ! 体に触らせてね」
「キュウ!」
どうやらOKらしい。
ドラゴンは立ち上がって逆鱗が触りやすい体勢になってくれた。
首元の逆鱗に触れてゆっくりと、川のせせらぎのイメージで魔力を流し込む。
自分の目に魔力を流し込み視覚を強化すると、俺の手からドラゴンの逆鱗へ魔力が流れて行くのが見えた。
白い半透明な魔力が逆鱗に流れ込み、逆鱗が青く柔らかい光を放つ光景は神秘的だ。
サンディに見せてあげられないのが残念だ。
「ゲプウ!」
「お腹いっぱいになったか? 良かったな!」
俺のドラゴンは猫のように丸まってうつらうつらし始めた。
「ボルグさん。終わりました!」
「よし! 良いだろう! 次は名前だ! 自分のドラゴンに名前をつけろ。これで絆が更に深まる」
「名前ですか……」
ドラゴンの名前ねえ……。
どんなのが良いのだろう?
前世日本の実家で狩っていた犬はジョニーだったな。
父親がプロゴルファーのジョニー・ミラーにあやかってつけた名前だった。
俺はそのミラーさんの事は知らなかったが、偉大なプロゴルファーだったのだろう。
じゃあ、歴史上の偉人にあやかってドラゴンの名前をつけるか?
信長? 秀吉? 家康?
ホトトギスがこの世界から絶滅しそうだからパスだな。
世界の偉人は?
ジンギスカンとか?
羊がこの世界から絶滅しそうだからパスだな。
それにドラゴンの名前がジンギスカンじゃ呼びづらい。
朝青龍……。
そのまんまだな。
確かに青いドラゴンだが、モンゴルつながりは止めよう。
「えーと、名前はアオにします」
正直、あまり良い名前が思い浮かびそうにない。
それならシンプルにドラゴンの色にちなんだ、見た目そのままの名前で良いや。
漢字にすると碧かな?
「ア……オ……。変わった名前だな。まあ、呼びやすそうだから良いだろう!」
あ、しまった!
漢字を考えていたせいか、この国の言葉じゃなくて、日本語の青色のアオにしてしまった。
まあ、良いか。二文字で呼びやすいし。
「アルト! 早速、オマエのドラゴンに名前を教えてやれ!」
「はい!」
猫のように丸まってウトウトするドラゴンに話しかける。
「ねえ。君の名前を決めたけど良いかな?」
「キュ?」
ドラゴンは首を上げてまん丸の目で俺を見た。
大きな目に俺の姿が映っている。
「君の名前はアオにしたよ。どうかな?」
「キュウー!」
どうやら気に入ってくれたらしい。
俺に頭をこすり付けて来た。
「これからよろしく! アオ!」





