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異世界もコネ次第!~王立貴族学園魔法学科へようこそ  作者: 武蔵野純平
第三章 ようこそ! パルシア戦役へ!

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第二十三話 古代竜のおなら

 軍議から三日、俺の初陣から四日が過ぎた。

 敵パルシア帝国軍に動きはなく、カルソンヌ城を挟んで睨み合いになっている。


 俺たちは宿営地に停泊する黄金のグリフォン号でのんびりと生活している。

 戦争中なのにこんなのんびりしていて良いのだろうか? とも思うけれど、待機中はこんな物なのかもしれない。


 ずっと気を張っていても疲れるだけと割り切って、遠慮せずだらけている。

 今日もワイバーンデッキにアメリアお嬢様とサンディと来ていて、ワイバーンと遊んでいる。


 アメリアお嬢様がワイバーンを好きなんだよね。

 自室にいるとワイバーンデッキに行こうと誘いに来るのだ。


 今も例のワイバーンにじゃれつかれている。


 俺は昨日の軍議が気になってサンディに聞いてみた。


「なあ、サンディ。結局、短期決戦と長期持久戦のどちらが正解かな?」


 軍議の内容はサンディに話してある。

 サンディはしばらく腕を組んで考えてから話し出した。


「難しいな……。敵は兵十万、こちらは五万が集結中だろ。単純な兵数比で考えるなら、カルソンヌ城や地形を上手く使って守り持久戦が良いに決まっている。けど……」


「けど?」


「パルシア帝国軍には飛行船がないし、魔法使いもほとんどいない。兵数の差は、ひっくり返せると思う。獣人の姿も見なかったしね。パルシア帝国軍は歩兵中心だから、野戦は厳しいと思うよ」


「ふーん、そう言う物か……」


 上空から見たパルシア帝国軍の兵数は圧倒的だった気がする。

 気がすると言うのは、初陣で緊張していたからイマイチはっきり思い出せないのだ。


 それでも飛行船+魔法使いの優位性はわかる。

 上空から一方的に敵を叩けるのだ。相手としては堪らないだろう。


「なあ。何でパルシア帝国軍には、飛行船がないの?」


「パルシアでは、ガスがとれないのさ」


「ガス?」


 サンディが飛行船の説明を始めた。

 この世界の飛行船は、地球で言う所の硬式飛行船に近い。

 木や魔物の骨でフレームを組んで、丈夫な魔物の皮で外殻を覆う。

 葉巻型の船体の中には、大型の魔物の胃袋で作ったガス袋が沢山が詰め込まれているそうだ。

 そのガス袋の中に空に浮かぶ為の特殊なガスが詰まっている。


「このガスが空気より軽いから、飛行船は空に浮かぶのさ」


「へえ。そのガスがパルシア帝国にはないのか?」


「ああ、そうだ。ガスは地中から吹き出すのだけれど、このガスがとれるのはラブラドル王国近辺の数か国だけだ。飛行船を持っているのは、ガスがとれる国だけさ」


 そう言う事か!

 それでパルシア帝国には飛行船がないのか。


「それでガスの名前は?」


「古代竜のおなら」


「えっ!?」


「だからガスの名前は『古代竜のおなら』だよ。古代竜がおならをして、それが土に埋まったって言い伝えがあるんだ。笑えるだろ?」


「ふふ。なんか酷い言い伝えだな」


「ああ。最悪だ」


 俺とサンディはしばらく『古代竜のおなら』で笑った。

 しばらくするとサンディが真面目な顔で昨日の会議の事を話し出した。


「なあ、アルト。会議の事は気にするなよ」


「……」


「役立たずとか言われたんだろ? そんな事はない。アルトが敵の魔法使いを退けたから、カルソンヌ城は守られた。オマエはちゃんと戦った。立派だよ!」


「ありがとう。サンディ」


 サンディの言葉を聞いて、内心モヤモヤしていた嫌な気持ちがスーッと消えてなくなった。

 側で自分を見てくれている人がいるのはありがたい。


「けどな……アルト……」


「?」


 なんだろう?

 サンディの声が低くなった。

 目付きも険しい。


「次は……次は迷うなよ! やらなきゃお前がやられるぞ」


 敵の女魔法使いを逃がした事か……。

 側で見ていたサンディには、わかっちゃうよな。

 確かに俺は一瞬躊躇った。その隙に逃げられたのだ。


「相手が女性だったからさ……」


「戦場で性別は関係ない! アメリアお嬢様を見ろよ。昨日は何の迷いもなくパルシア帝国軍の兵士を攻撃しただろう? 女でも戦場に出て来るヤツは、戦闘力があるんだ。油断したら、マジでこっちがやられるぞ」


「そうだな……」


「絶対殺せとは言わない。相手が貴族なら捕虜にする事もあるからな。けれど戦闘能力を奪うまでは、手を緩めちゃダメだ!」


「わかったよ、サンディ。次は躊躇わず魔法を撃つよ」


 頭ではわかっていても覚悟を決めると言うのは難しい物だ。

 サンディは騎士の家系だからだろうか、荒事の覚悟が出来ている。


 俺は田舎の貧乏貴族の息子だし、前世は普通の会社員だった。

 殴り合いのケンカすらろくすっぽしたことがない。


 だが、ここまで来たら……覚悟を決めるしかない。

 次は……迷わない!


 伝声管からマックスウェル先輩の声が聞こえて来た。


『アメリアとアルト・セーバーに竜が届いています。受け取りに来なさい』


 何だ?

 聞き間違いか?

 竜が届いた?


「行きましょう!」


 アメリアお嬢様がさっさと歩きだしたので、サンディと二人で慌てて後を追った。


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