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異世界もコネ次第!~王立貴族学園魔法学科へようこそ  作者: 武蔵野純平
第二章 ようこそ! 魔法の世界へ!
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第十二話 初めての魔法発動!

 王立貴族学園。

 ラブラドル王国の中央部キャムの街にある貴族子弟が通う学校だ。

 男女共学、全寮制で十三才から十六才まで三年間をこの学校で過ごす。

 俺――アルト・セーバー――も十三才になり、王立貴族学園へ入学した。


 朝八時からお昼まで、一コマ一時間で四コマ授業がある。

 一年生は全学科共通の授業だ。

 国語数学の様な日本の義務教育と同じ様な授業もあれば、社交ダンスや乗馬の様ないかにも貴族といった授業もある。


 午後からは自由時間で、それぞれ自由に過ごす。

 だが、俺の所属した魔法学科は別だ。

 一時間のお昼休みを挟んで、午後から魔法学科の授業が始まる。


 魔法学科の教室へ向かって長い廊下を歩く。

 左手窓越しに満開の桜の木が見え、風に桜の花びらが舞い散っている。


 今日は俺のお世話係になってくれたサンディが一緒だ。


「なんでサンディも一緒に魔法学科の授業に出るの?」


「いや、それがさ。ハインツ先輩から自分の授業が無い時は、極力アルトの側に居る様に言われてさ」


 ハインツ先輩はお世話係の心得をサンディに叩き込んでいるらしい。

 サンディが一緒に来てくれるのは正直ありがたい。

 魔法学科は、王子様や侯爵令嬢と一緒で目茶苦茶緊張するからな。


「ありがとう。助かるよ!」


 廊下の突き当りに着くと金色の立派な扉が自動で開く。

 中には既にパウル王子、マックスウェル先輩、アメリアお嬢様がいた。


「遅くなりました! 失礼します!」


「まだ時間前よ。お座りなさいな」


 俺の挨拶にパウル王子は鷹揚に肯き、アメリアお嬢様は飲んでいた紅茶をテーブルに置き品良く俺に隣の席を勧める。

 俺は素直にお嬢様の言葉に従いアメリアお嬢様の隣に腰を下ろす。


 魔法学科の教室は、教室と言うよりサロンだ。

 フカフカの絨毯に柔らかいソファーとローテーブル。

 そして紅茶の良い香りが漂っている。


 部屋の隅に立っていたハインツ先輩が、サンディを手招きしてお茶道具の使い方を説明し始めた。

 授業でも世話係がいるのは、上級貴族が多いからだ。


 パウル王子の世話係は、マックスウェル先輩――侯爵子息。

 マックスウェル先輩の世話係がハインツ先輩――騎士爵。

 俺の世話係がサンディ――騎士爵。


 そして今日はアメリアお嬢様も世話係を連れている。

 俺がチラリと世話係の子を見るとアメリアお嬢様が視線に気が付いた。


「この子はマリエラ。子爵家の三女で私の幼馴染なの」


 お世話係だけれどアメリアお嬢様と楽しそうにお喋りをしている。

 マリエラさんは、ダークブラウンの長い髪の大人しそうな女の子だ。

 アメリアお嬢様がはっきりモノを言うタイプだから、こう言う大人し目の子が合うんだろうな。

 いやあ、制服の女の子がキャッキャッウフフしているのは、良いねえ~。


 サンディが慣れない手つきで俺の前に紅茶を入れてくれた所で、先生が入って来た。

 俺がおじいちゃん先生と呼んでいたジャバ先生だ。今日も白地に青のペイズリー柄のローブを着ている。


「さて! 今日から魔法学科の授業を始めます。午後に授業があるのは魔法学科だけです。何故かわかりますか?」


 ジャバ先生はゆっくりと俺達を見回し、ひと呼吸おいて言葉を続けた。


「魔法は学ばなくてはならない事が沢山あるからです。魔法の道は、真理探求の道です。先生も魔法の真理に辿り着こうと日々探求をしています。皆さん、一緒に魔法の探求をしましょう。さて、魔法の授業は堅苦しい物ではありません。授業中は気楽に発言をして下さい。質問しても良いし、議論も大いに結構!」


 こうして魔法の授業が始まった。

 まず基本の魔法は四つだ。


 火魔法

 水魔法

 土魔法

 風魔法


 この火、水、土、風が四属性魔法と呼ばれ、四属性魔法を使う魔法使いが一番多い。

 魔法使いの内部にある魔力とこの世界に漂うエレメントを反応させて魔法を発動させる。

 エレメントって何だろ? 質問してみるか。


「ジャバ先生。エレメントとは何でしょうか?」


「ふむふむ。アルト君は、なかなか良い質問をするね。エレメントとは目には見えないが、そこかしこに存在する魔法に反応してくれる物質の事です」


「……目には見えないけれど、存在しているのですか?」


「その通り! 見る事も、手に触れる事も出来ぬ。しかし、エレメントは確かにそこに存在しているのです」


 ジャバ先生は空中を指さした。

 ふうむ……原子とか分子とか……そう言う物がこの世界にはあると言う事なのかな。


 ジャバ先生の話しは続く。


 他にも雷のエレメントと魔力を反応せる雷魔法や氷魔法など多種多様な属性魔法が存在している。エレメントとの相性が良ければ、属性魔法が発動しやすいが、相性が悪ければ魔力があっても属性魔法は発動しない。


 そして属性魔法とは別系統の魔法も数多く存在する。

 神への信仰心と魔力を反応させる聖魔法。

 邪な心と魔力を反応させる闇魔法。

 人のイメージと魔力を反応させる無属性魔法。


 大雑把に説明すると魔力と何かを反応させると魔法が発動すると言う事だ。

 そして魔法使いとエレメントとの相性や魔法との相性によって、行使出来る魔法が決まる。相性の良し悪しは水晶玉テストでわかる。


「ジャバ先生。僕と相性の良い魔法は何でしょうか?」


 俺は水晶玉テストで水晶玉を何回も破壊して、最後に特大水晶玉でテストをして貰った。あの時、水晶玉から七色の光が発せられた。

 ジャバ先生は淡々と俺に告げた。


「アルト君とエレメントの相性は不明です」


「えっ?」


「水晶玉テストで、あんな光は見た事がありません。ですからどの魔法と相性が良いのかさっぱりわかりませんでした」


 そ、それってどうなんだ?

 大丈夫なのか?


「心配いりません。アルト君の魔力量は規格外、使える魔法は無限大です」


 そんなどこかの安いアイドルみたいな煽り文句はいらないですよ!


「では、次に魔力を感じ取ってみましょう。水晶玉テストの時の感覚は、みんな覚えているかな? 体から何かが水晶玉に吸われていったね。あれが魔力です」


 それは良く覚えている。

 生まれて初めての感覚だった。


「体内にある魔力をこうして指先からゆっくりと放出するイメージをして下さい」


 ジャバ先生は、空中を指さす様にして目をつぶった。

 するとジャバ先生の指先の空間が……空気が揺らいだ様に見えた。蜃気楼の様にユラユラと揺れて見えたのだ。


「さあ、では、やってみて下さい」


 パウル王子もアメリアお嬢様も目をつぶり指先に集中している。

 だが、先生の様に空気の揺らぎは起こらない。


 俺もやってみるか……。

 目をつぶって……。

 空中を指さして……。

 魔力を……放出……。


「ふむふむ。アルト君良いですよ。出来ていますよ。そのまま続けて」


 おお! 成功したか!

 これはかなり感覚的な作業だな。

 俺はそんなに難しく感じない。

 魔力量が多いと言う事もあるかもしれないな。


 そう言えばさっきジャバ先生は、イメージと魔力を反応させて魔法を発動させる事も出来ると言っていたな。

 すると頭の中にイメージした物を魔力で作る事も出来るのだろうか?


 こう……魔力を粘土みたいな感じでとらえて、頭の中でイメージした物を魔力で生成する……みたいな事も出来るのか?


 例えば……そうだな……。

 青い縞々パンツとか……。



 ドサドサドサドサ!

 ドサドサドサドサ!

 ドサドサドサドサ!

 ドサドサドサドサ!

 ドサドサドサドサ!

 ドサドサドサドサ!

 ドサドサドサドサ!

 ドサドサドサドサ!



「おお! これは一体!」

「ちょっと! アルト君!」

「ええっ!?」


 何だ?

 人が集中しているのに騒がしいな。



 ドサドサドサドサ!

 ドサドサドサドサ!

 ドサドサドサドサ!

 ドサドサドサドサ!

 ドサドサドサドサ!

 ドサドサドサドサ!

 ドサドサドサドサ!

 ドサドサドサドサ!



「アルト! ストップ! ストップ! うわあ!」


 サンディの声も聞こえる。

 ストップ? 何だろう?

 ゆっくりと目を開く。


「あれ……? あああああ!?」


 俺の目の前には大量の青い縞パンがあった。

 青い縞パンの山が出来ていた。

 その縞パンの山にサンディが埋もれている。


「サンディ。何やってんだ!?」


「何じゃねえよ! アルトが突然魔法を発動させて、下着が空から降って来たんだよ! 止めようとして近づいたら、縞パンに埋もれたんだよ!」


「えっ!? 魔法を発動!? 縞パンが降って来た!?」


 そんなバカな!

 俺とサンディがやりあっていると、ジャバ先生が縞パンを拾い上げた。触り、閉じ、広げ、引っ張り、品質を確認している。


「ふむふむ。なかなかに見事です。脳内にイメージした物質を魔力で再現したのですね」


「えっと……先生……やはり僕の魔法が原因でしょうか?」


「ふむふむ。そうですね。この事象を分析すると、一つにこの莫大な量の下着を生み出したのは、アルト君の莫大な魔力が原因ですね。もう一つ気になる事は……」


「気になる事は?」


 何だろう?

 ジャバ先生は何が気になるのだろう?

 先生はじっと下着を見つめている。


「ここまで完全に下着が再現されていると言う事は、脳内で精緻! かつ! 具体的に! 下着をイメージしたのでしょう。いやあ、お見事です! 完全に下着を再現しています。ところでこれは女性用ですね?」


「……はい」


「ふむふむ。女性用下着の生成魔法として、国家魔法登録局に登録申請をしておきましょう」


「いえ! そんな登録はしないで下さい! お願いだからやめて下さい!」


 国家魔法登録局がどんな所か知らないが、そんな不名誉な魔法の登録は止めて貰いたい。下着生成で名を残した魔法使い何てカッコ悪い事この上ない。


「いやあ。良い物を見せて貰いました! それでは、しばらく休憩にしましょう!」


「アルト君! サンディ君! ちょっとよろしいかしら!」


 休憩の間、俺とサンディはアメリアお嬢様から説教を食らう羽目になった。

 授業中に下着の雨を降らせるなど、もっての他であり、貴族の子弟としてあるまじき行いだそうです。


 下着の山は没収で、アメリアお嬢様のお世話係マリエラさんがどこかに持ち去ってしまった。

 後で女子生徒に無料配布するらしい。


「なあ、サンディ。それはそれで興奮するよな」


「ああ。みんなあの青い縞パンを履くんだな」


「あなた達! 反省してないでしょう!」


 こうして前途多難な魔法学科の授業は続くのであった。


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