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異世界もコネ次第!~王立貴族学園魔法学科へようこそ  作者: 武蔵野純平
第一章 ようこそ! 王立貴族学園魔法学科へ!
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第一話

とりあえず頭の中にある物を出してみました☆彡

「コネを作って来い!」


「は?」


 俺は父上の言葉に驚き少々無礼な返事をしてしまった。

 父上の目は、本気と書いてマジと読む位に強く光っていた。


「『は?』ではないぞ、アルト! 学校はコネを作る絶好のチャンスなのだ!」


「えーと……。そ、そうなのですか?」


「一に王族! 二に侯爵! 三四が辺境伯で五に伯爵だ! コネを作って来い! これは家長としての命令だ!」


 呑み込みの悪い俺に父上が顔を寄せて強い口調になる。

 書斎のデスクに身を乗り出して、顔を真っ赤にして『コネ! コネ!』だ。

 参ったな……。コネとか言われてもね……。


 俺はアルト・セーバーと言う。


 元々は日本人だ。東京で会社員をしていた。

 ある日会社に行こうと通勤電車に乗ったら強い胸の痛みを感じて倒れてしまった。

 どうやらそれで死んだらしい。


 いわゆるブラック企業でコキ使われていたから、たぶん過労が原因の心臓麻痺とか……恐らくそんな死因だろう。

 まあ仕方がない。俺は何にも取り柄が無くて、人の言われるままに働くしか能の無い人間だった。

 だからブラックでも何でも言われるままに働いてしまった。

 波風立てずに言われた通りに……悲しいかな小市民人生……。


 それで……俺は死んだ訳だが……気が付いたら異世界の貴族――ラブラドル王国のセーバー家三男に転生をしていた。


 セーバー家は貴族と言ってもド田舎の騎士爵で下級貴族だ。

 領地はあるけれど三つの村で合わせて五百人いるかいないか位。

 ベルバラみたいな映画に出て来る様な華やかなお貴族様じゃなくて、地元ベッタリの土豪って感じだな。


 もちろん俺自身の見た目も日本人から大きく変わってしまった。

 ヨーロッパ人っぽい雰囲気で、瞳の色は淡いグレー。

 髪の毛が黒いのは日本人っぽくて気に入っている。


 今年で俺は十三才になる。

 この国の貴族は十三才になると王立貴族学園へ入学が出来る。


 とは言え全ての貴族が王立貴族学園へ通う訳じゃない。

 なんと言っても金がかかる。

 だから父上や兄上達は王立貴族学園を出ていない。


 だけど、俺はセーバー家始まって以来の神童、領地の期待の星として王立貴族学園へ入学する事になった。

 田舎って事もあるだろうけど、この領地では二桁の計算が出来る人間は数える程しかいない。

 この異世界の教育レベル、文化レベルは低い。


 明日、俺は王立貴族学園へ向けて出発する。

 生まれてこの方自分の領地から出た事が無いので楽しみにしている。


 ところが父親から『コネを作って来い!』と生々しい要望……いや命令を受けている。

 いきなりそんな事を言われてもね……。

 前世でサラリーマン経験はあるけれど、上司にゴマをするのは苦手だったからなあ。


 俺が戸惑っていると父上の隣に座る長男のフランク兄さんが説明してくれた。


「有力な上級貴族や王族とコネが出来るメリットはわかるかい?」


「……いえ」


「街道の整備に国の予算を付けて貰えたり、領内の開発に支援――国にお金を出して貰える」


「……」


「つまり! アルトが王立貴族学園で王族や有力貴族の子息と仲良くなれば、ウチの領地にお金が落ちてみんなが幸せになる!」


 長男のフランク兄さんは二十才で、将来はこのセーバー家の跡を継ぐ。

 そのせいか父上と同じく真剣な顔で俺に詰め寄って来る。


「その理屈はわかりました。それで、父上や兄上のコネはどうなのですか?」


「……こんな田舎でどうコネを作れと?」


「コネなんてどこへ行って、どう作れば良いのかわからないよ……」


 なんだよ!

 自分達が出来なかった事を俺に押し付けているのか!

 都合が悪くなると目をそらすのは良くないですよ! 父上! 兄上!


「いいかいアルト。ウチはラブラドル王国でも東の端にあるド田舎だ」


「そうですね」


「だから他の貴族はもちろん王宮との交流もほとんどない」


「確かにそうですね」


「だから! アルトが王立貴族学園に入学するのはコネを作るチャンスなのだ!」


「ウチはその為に借金もしたからな!」


 父上と兄上のダブル攻撃は夜遅くまで続いた……。



 ――翌朝。


 俺は領地に行商に来ている商人と一緒に出発する。

 沢山の村人も見送りに来た。


「では行って参ります」


「アルト様! お元気で!」


「アルト! これ持って行けよ!」


 小さな頃からよく遊んだ近所の農民の子供が木の実を渡してくれた。

 カシューナッツみたいな味がする俺の好物だ。


「ありがとう! 行ってくるよ!」


 俺は行商人と二人で街道を進んだ。

 街道と言っても人がすれ違える程度の細い道だ。

 馬車など通れないので徒歩だ。


 ここから徒歩で1週間かけて大きな街に出て、そこから馬車を乗り付いで王立貴族学園がある街まで移動する。


 山沿いの細い道を歩きながら昨晩の兄の話しを思い出した。


『街道の整備に国の予算を付けて貰えたり……』


 なるほど。

 こんな細い街道では行商人が時々回って来るだけだよな。

 この世界の事はまだ良く分からないが、きっと都会もあるだろうし、俺がまだ見た事が無い様な珍しい品もあるだろう。

 そういった品を扱っている都会の大商人もいるのだろう。


 だが、この細い街道じゃあな。

 馬車に乗った商人が来ようったって来られない。

 かといって父上の領地には街道を整備する予算も人手もない。


(有力者とのコネか……)


 異世界の田舎貴族に転生してノンビリと生活していた俺の人生が急に世知辛く感じられた。


※ウチはラブラドル王国でも西の端

⇒『東』に修正しました。


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