第九章・『孤独の破壊者』
『孤独の破壊者』。
それはかつての俺がそう呼ばれていたらしい。
圧倒的な攻撃力を持ち、結界で身を固め、一人で行動することが多く、全てを破壊する。首には赤色の宝石を組み込んだペンダントを下げていた、と。
「ボスさんに聞いた話では、その赤色の宝石の中にいるのは、『孤高の悪魔王』と呼ばれる存在らしく、一体で三千もの悪魔を葬ったそうです」
「そんな悪魔が……」
悪魔の存在については知っているが、所詮は物語での話だ。実際に悪魔に会ったことは一度もない。
会えるのなら会いたいが…。
「その悪魔に名前はないのか?」
「名前?」
「そう。例えばソロモン七十二柱の悪魔たちみたいな」
「名前ですか…」
(そう言えば、ボスさんから名前を聞いた気がする……)
飛鳥はふと考え、そして思い出す。
「確かアヴィスだった気がします!」
「アヴィス?」
「はい。それが『孤高の悪魔王』の名前なんです!」
「そ、そうなんだ」
飛鳥にそう強く断言されたら、何も言い返せない。
「では、早速ペンダントを探しに行きましょう!」
そう言うと、椅子から立ち上がった飛鳥は、俺のことなど気にせず、どこかへ行こうとする。
「ちょっと待った!」
それを俺は必死に止める。
「何ですか?」
そう言って振り返った飛鳥に、俺は言う。
「早く(元の世界に)戻りたい」
その言葉を聞いた飛鳥は、なんともいえない顔になっていた。