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第七十八章・桜田一
「お前と会ったのは中学一年生の時だ。小学生の時にはお前は俺以外の親友がいたからな」
「小学生の時の親友?」
「桜田一って言うんだ。覚えてないか?」
桜田?思い出そうとすると靄がかかる。
「ダメだ。思い出せないよ」
「そうか。まぁそうだろうな」
「そいつは今、どこにいるんだ?」
「死者の里。ここドラグナル王国から西にある森――死者の森の先にある里だ」
「死者って。幽霊でも出るのか?」
「一は今、幽霊だよ。正しくは霊体って言うんだけどな」
なるほど。つまり既に亡くなっているってことか。
「……」
「お前が気にすることじゃないさ。それに思い出してやったほうが一も喜ぶだろ」
「親友のことを忘れるなんて最低だな、俺」
「誰にだって忘れたい過去はある。それは俺だって」
「それにあの時のことは、俺にも飛鳥にもボスにも責任はあるし…」
涙の最後の言葉は、俺には聞こえなかった。




