サヴァスストーリー「師匠を超えるために」3
「これでいいのか」
「あぁ、後はお前が合図するだけだ」
俺は茶髪の子ども――大竜丸の言う通りに罠を仕掛ける。
大竜丸が言うには、俺が合図をした瞬間、俺の槍が師匠の横腹を横切るらしい。
それにより動けなくなった師匠の代わりに、俺がEランクマスターになるという算段らしい。
俺はその作戦を信じて、師匠を(仕掛け罠の近くに)呼び寄せた。
「何だ、話とは」
「話とは大したことじゃありません。実は俺――今だ!」
俺がそう言うと、大竜丸が仕掛け罠を動かす。
俺の槍は予定通り師匠の横腹を掠めるのではなく、俺を狙っていた!
(えっ…)
俺が動けずにいると、師匠が俺を庇った!
「師匠!師匠!!」
俺が師匠を抱きかかえると、師匠の体は光になって消えていた。
「何でだよ!師匠は少し傷つけるだけだって、お前言っただろ!」
俺は大竜丸がいる仕掛け罠のほうを見るが、そこには誰もいない。
俺は嵌められたんだ!そう気付いた時には、何もかもが遅かった。
「嘘だ!師匠が消えるなんて俺は信じない!」
俺は叫ぶ!大竜丸に聞こえるように!
すると抱きかかえている師匠が(弱々しい声で)語りかける。
「もう…ダメだ。…諦めろ」
「ダメだ、師匠!話しちゃ!早く血を止めなきゃ!そうすればきっと――」
「自分のこと…くらい、…自分で…分かる」
師匠の体の光は遅くなるどころか、速くなっていく。
「俺は!師匠を超えたかっただけなのに!大竜丸は、師匠を倒せばEランクマスターになれるって言ってたのに!」
「お前は……だま……されたんだ、その…大竜丸に」
やっぱりそうだったのか。もっと早く気付いていれば、こんなことには…。
「私を……倒し…ても、E…ランク…マスター…には…なれない。二位で…ある…天命が…なる…だけ、だ」
なら、俺のしたことは無駄だったのか!
「師匠!師匠!」
「師匠…か。そう言えば…名前を…いって、…なかったな…」
「名前なんてどうでもいい!俺は師匠が生きていれば!」
師匠の体はもうほとんど消えていた。
「こう……りゅう……だ」
そう言った後、師匠はすでに俺の腕の中から消えていた。
高龍。師匠の名前を俺はその時、初めて聞いたんだ。
「やっと消えたか――Eランクマスター」
俺の横に(どこにいたか分からない)大竜丸がいた。
大竜丸は師匠が消えるタイミングを見計って出てきたのだ。
俺とは知能の差が違いすぎる。
大竜丸は俺の心に興味がないように、話し出す。
「あいつさ、邪魔だったんだ。だから助かった」
その後に続く言葉は残虐だった。
「だからさ。俺の仲間にならねぇ」と大竜丸は俺に手を差し出す。
俺はその手を振り払えなかった。
俺はその時、分かってたんだ。振り払っても意味が無いって。
今ここで振り払っても、俺には帰る場所が無いって。
それすれも分かっていたのだろう。手を取った俺に向かって大竜丸は笑っていた。
*
そして、現在。
俺は二人の少年と一人の少女を、天井に張り付きながら待っている。
それが俺の仕事だからだ。
「涙、上だ!」
俺がした上からの攻撃は、その言葉のせいで避けられる。
そのうえで、ソイツは俺を「蝙蝠少年」と呼んでくる。
俺は否定すると同時に少し楽しかったんだ。
もしコイツの仲間だったら未来は変わってたかもしれないのに…。
* * *
終わり




