第五十二章・親友って…
まさか涙が負けるとは思わなかった。俺としてもびっくりである。
フレアは「剣の実力なら俺のほうが上だからな!」と言っているが、どう見ても剣の実力は同じだったけどな!
負けた涙にかける言葉を俺は何ももっていない。親友なのに…。
*
約束は約束だ!
俺はボスにお願いして、フレアたちが今住んでいる家のローンを払ってくれるようにお願いする。(てか、それが金のいる理由か!)
俺は話が終わると、(ギルドから出て行った)涙を追いかける。
*
「涙…」
俺がギルドから出ると、涙は(ギルドの前で)佇んでいた。ギルドの外に広がっているのは、『草の庭』だ。
「あっ。悠…」
涙は俺を見つけても立ち上がる気配がない。それほどまでに愛剣を折られたことがショックだったのだろう。
俺は立ったまま何も言えない。
そんな俺の心情を理解したのか、「ここに座れよ」と自分の隣に座ることを促す。
俺が隣に座ると涙が話し出す。
「俺は自分で自分のことを過大評価してたのかもしれない。剣で誰にも負けたことがなかったし、今度こそ悠を守れる力があると思い込んでいた。そのせいで俺は負け、レクイエムの刀身が斬られた!」
「そんなこと――」
涙は俺の言葉を途中でさえぎり、
「ないって皆言うんだ、最初はな。お前は強いんだ。相手はまぐれで勝ったんだって!けど違う…」
それは俺が転生する前も後もそうだった。
転生する前の悪魔の時は「期待の新人だ!」と言ってた上司も俺が他の悪魔に負けるとそう言った。負け続けると俺のことを馬鹿にもした。
俺はアヴィスがいなかったら、転生する道も無かったかもしれない。
転生した後は政治家の息子と期待されるので、俺は勉強を頑張った。中学の時にも陸上部に入り、俺は先輩に実力で負けた。最初は「次は勝てるよ!」と言ってたやつらもまた負けると何も言わなくなった。
悠も守る力をつけるために陸上部に残ることを決めなければ、俺は高校で陸上部には入ってなかっただろう。
これは悠の知らない話だ。親友の悠にも言ってない話だ。だから、悠に言っても意味がない。それは分かっているが…。
「俺は確かにフレアに負けた…!相手が剣だからって何の力も技も使わずに…。俺は負けたんだ!」
(ベヒモス戦の時に)悠を守れなかったときと何も変わらないじゃないか、これじゃあ!
そう言って、涙は大粒の涙を流して泣き出した。
そんな涙を見て俺は、「誰にでも負けるときはあるさ!」とフォローになっていないことを言う。
「へっ!?」
涙は――泣きながらも――笑い、「なんだそれ…」と言うのだった。




