第三十五章・魔女の館
(はぁ、はぁ、はぁ。やっと着いた…)
私は肩で息を切らしながら、(悠さんが連れ去られた)その建物を見ます。
なるほど。魔女の館と呼ばれるのが分かるほど、古風な場所です。ところどころにコケが生えているのが気になりますが…。
ここでアリーは私が走っている間に、優雅に紅茶でも飲んでいたのでしょう。(なぜか当たっている)
許さない!私は今も紅茶を飲んでいるであろうアリーを倒すために、意気揚々と入っていきます。
*
意気揚々と入った私でしたが、そこには誰もいませんでした。
(誰もいない…)
そこでは、机の上に(ソーサーに置かれている)ティーカップがあるだけです。
(温かい…)
ティーカップに触ると、まだ温度が感じられます。ここで誰かが紅茶を飲んでいた証拠でしょう。
(悠さんの姿もない…)
確か、アリーはここに連れて行ったはずですが、ロックプリズンの檻はどこにもありません。
憚られたかなと私が考えていると、「ロックプリズン!」と外から大きな声が聞こえます。
「!」
外に出ると、アリーが魔女の館を「ロックプリズン」で囲っていました。
私が魔女の館に入るのを、どこかで待っていたのでしょう。
(どうやって、私の場所を…)
私はここまで全速力で走ってきたはずです。気付かれるはずは――
「まさか――」
『そうそのまさかですよ、『光の姫』』
アリーはどういう方法か分かりませんが、こちらを見ています。そうでなければ、こちらの顔が見えるはずがありません。
(考えられる方法は一つです。あの蜂のモンスターの中に使い魔を潜ませ、私の位置を把握していたのでしょう)
それ以外に方法があるとは思えませんし、いちいちモンスターの確認もしていません。
私の考えていることが分かったわけではないでしょうが、
『聡明なアナタなら分かったはずでしょう、私がどうやってアナタの場所を把握したのか』
とアリーは言います。
方法は分かりました。ですが、今はどうやって脱出するかです。
私は周囲を確認してみますが、岩の部分に隙間は見あたりません。
(岩の隙間から抜け出すのは無理ですか…)
いい案だと思ったのですが、無いのなら仕方ありません。
「本気でいきます!」
私は『モードチェンジ』を開始します。
*
私はクッキーを食べながら、自分が作ったロックプリズンを見渡す。
今回の出来は上出来だ。一ミリの隙間もない。まさに蟻の子一匹通れない。
(これで彼女も――)
もう出られない、そう思っていたときだ。
ピシッ、ピシッ
どこかから岩の割れる音がする。
(ウソ、でしょ!?)
私が見ている間も、岩の亀裂がでかくなっていく。
「そんな…」
次の瞬間には、ボロボロに壊れた隙間から誰かが出てくる。
「『光の、姫』…!」
私は誇張したわけではない。全身をドレスコートに包み、その後ろには二枚の白い翼――そう、天使の翼がついていた。
(あの剣で、私の岩を!?)
その手には、白く輝く剣を持っていた。
「私のモードチェンジ――『シャイニングモード』です」
私はその姿に疑問がよぎる。
「アナタは天使なの?」
「転生する前は、天使でした」
飛鳥は昔を思い出したのか、少し悲しそうに笑うと、
「聞くことはそれだけですか?なら始めましょうか、私とあなたの戦いを」
ここに天使と魔女の戦いが始まる!!




