第二十七章・サヴァス
ゲートに入ってから、二十分は経ったと思う。
今日は誰も腕時計を持ってきていないから、時間が分からない。
「お前ら何で腕時計――着けてきてないの?」
俺は一番後ろを(やむなく)歩きながら、二人に尋ねる。
すると飛鳥はスマホを出して、
「今日は急いでいたので、着けるのを忘れました。ですが、私はスマートフォンがあるから大丈夫です!…あっ、圏外だ…」
スマホが圏外になっているのを見て、肩を落とす。
「当たり前だろ。未知の空間に電波が届いているはずがない」
「そうと分かってても確認してしまうのが現代人の性だ」
(俺は現代人じゃないのかよ!)
俺はそうツッコミながらも、何も言えずにいる。
今時の高校生で、(確認したことはないが)携帯電話を所持していない高校生なんてほとんどいない。
日本国民の九割が所持しているほどだ。
(持とうか悩んでいるけど…)
今のアニメでも、(ものによるが)スマホを持っているキャラクターはいる。
それは分かっているが、やはり持つ気がおきない。俺は大人数がしてることをしたくない、少人数のタイプなのだ。
そんな俺の考えをよんだのか、
「まぁ、無理はするな。自分のペースで考えていけばいいさ」
とはにかみスマイルで微笑む。
(自分のペース、ねぇ…)
*
歩いていると、広い場所に出る。
「ここが、目的地のはずだが…」
涙は周りを見るが、そこには誰もいない。
「おかしいな…」
涙は何か考えてるようだが、横にいないなら――
俺はそっと上を見る――そこには蝙蝠の翼をつけた十三歳ぐらいの男の子がいた。
蝙蝠少年は俺のほうをチラッと見て、ニヤッと笑い、
「涙、上だ!」
俺が言ったのと同時に、天井から落ちてきた。
「!」
涙は俺の声が聞こえたらしく、よけてくれたので、少し安心する。
「ふぅーん。避けるのか、『氷の魔剣士』」
蝙蝠少年は涙のことを知っているらしいが、俺はどうしてもこれが言いたい。
「お前はカブトプスとオムスターか!」
決まった、渾身のツッコミ!
俺が自分のツッコミに酔いしれていると、
「何それ?」
蝙蝠少年にキョトンとされてしまう。
(まぁ、そうだよな…)
これは分かる人にしか分からない、『ポ○モン不思議のダンジョン 探険隊シリーズ』の名シーンの一つである。
(ぺラップが、プクリンを守るシーンが印象的なんだよな!)
これは分かる人間にしか分からない。
そんな俺を無視して蝙蝠少年は、
「『氷の魔剣士』『光の姫』知ってる?」
他の二人に聞いている。
聞かれた二人は、
「「しらなーい」」
とどっかのCMのテンションで言っている。
(俺さえ、俺さえ分かればいいんだ!)
俺は二人の薄情な反応に、涙を飲んでいたが、ふと気づく。
「蝙蝠少年、お前がさっきから言ってるのは、何なの?」
俺が素直に尋ねると、
「蝙蝠少年言うな!俺はサヴァスだ!!」
と怒り出す。
「コスプレ蝙蝠少年。そんなことはどうでもいいから、何か答えろよ」
「俺の話聞いてる!?後、コスプレじゃねーし!」
(俺のボケについてくるなんて、コイツやるな!)
俺は素直にサヴァスを感心していた。
「いや、それはコスプレ――」
「まだいうか!」
俺たち二人がそんな漫才のようなことをしていると、
「はい、ストップ!」
俺とサヴァスの間に飛鳥が割って入る。
「飛鳥、今いいところ――」
「黙りなさい!あなたのせいで話が進まないでしょうが!」
飛鳥が一喝して終わらせる。
*
「つまりそれが二人の二つ名なわけか」
「やっと分かりましたか」
飛鳥の説明を受け、俺はやっと理解する。
「ちなみに、ボスさんは『異界の宇宙人』と呼ばれているそうですよ」
飛鳥の補足が入るが、今はどうでもいいだろう。
「で、コイツを倒せばすべて終わりっと」
話はそれたが、それが目的である。
「やっと終わったのかよ」
なんだかんだいいつつも、サヴァスは律儀に待っていたらしい。
「さぁ、始めようぜ!」
今、戦いの火蓋がきっておとされるのかも、しれない。




