第二十一章・俺の過去2
一つ、思い出した。
あの神社で俺と歌っていた、一人の少年。
同い年ぐらいの男の子。
もしかして――
俺はギルドの自室にある自分のベッドで目を覚ます。
「傷が治ってる…」
俺はベヒモスに突撃されて、致命傷になったはずだ。
(飛鳥・涙!)
二人を探すが、二人ともいない。
(まぁ、飛鳥がいたら驚くけど…)
女子が男子の部屋に長居するのはよくない。それを理解してるからこそ、傷を治して、出て行ったのだろう。
俺はワイシャツを着て、ネクタイを締め、ハンガーに掛けてあるブレザーを羽織り、自室から出る。
*
自室を出た俺は、大広間へと向かう。
そこでは、ボスが優雅にコーヒーを飲んでいた。
「やぁ、元気になったんだ。良かった」
「おかげさまで」
俺からすれば、その姿でコーヒーを飲んでいるのが、どうしても気になる。
「ボスって何歳なんですか?」
「!」
ブフゥゥ!
そう聞いただけなのに、ボスは盛大にコーヒーを吹いた。
「君ってデリカシーないとか言われない?」
「普段人と喋らないので、あまり言われたことがありません」
これは俺の、偽らざる本心だ。
「そうか、君って友達少ないんだったね」
「俺の二つ名にぴったりでしょう」
そう皮肉交じりに返す。
ボスはちょっぴり俺に哀れみの視線を向け、
「そうだね」
と考え出す。
俺は正直なところ、ボスの肉体年齢は止まっているのだと推測する。
昔の記憶に出てくる男の子がボスなら、あの時から何も変わっていないからだ。
「君は僕が何歳に見える?」
「五、六歳ですかね」
「そう見えるよね。けど僕は実年齢は百歳を超えてるんだ」
「百歳…」
齢十六年しか生きていない俺にとっては、百年は途方もない時間だ。
「そう」
若干六歳にしか見えない子が、実は百歳を超えていた。二次元にはよくあることだが、実際に目にすると、なんともいえない。
「不老不死なんですか?」
俺は知識を総動員して、そんなことを聞いてみる。
「!――まぁ、そうだね。僕の肉体的な時は止まってるから、老いることもなければ、死ぬこともないしね」
「長生きはいいことですよ」
今は人生百年時代と呼ばれる時代だ。長生きすることは悪いことではないだろう。
「けど、不老不死はいいことじゃないよ」
ボスは悲しそうにそう言った。
「それにしても、二人はどこに行ったんですか?」
一応ここまで来るまでに確認してみたが、人の気配は感じられなかった。
「あぁ、二人なら『始まりの試練』の洞窟に、確認に行かせたよ。また新しい竜が住みついているかもしれないからね」
「『始まりの試練』?」
飛鳥がそんなことを呟いていた気がしたが、よく分からない。
「そうか、君は知らないか」
ボスはどう説明しようか少しだけ考え、
「軽く言ってしまえば、ギルドに課せられる試練みたいなものかな」
「ゲームのチュートリアルみたいな?」
「それについてはよく分からないけど、ギルドを発足して、最初に戦うのが、ベヒモスみたいな竜たちだよ」
(そうなのか…)
だとしたらあの強さはおかしい。序盤で戦うとしたら、危険すぎる。
「けど、あの強さは…」
「それについては、神器「バルト」の話をしてからにしよう」
俺は、まるで授業を受けてる気分だ。




