12/306
第十二章・滝沢涙
教室。
俺はいつも通り、手前の扉から教室へ入る。
席が前にあるので、手前の扉からのほうが近いのだ。
「おはよう、悠」
そんな俺に朝の挨拶をしてくれる少年が一人。
「おはよう、涙」
俺の後ろの席に座っている親友――滝沢涙その人だ。
(今日も元気だな、涙は)
一時間目の授業の準備をしながら、何気なくそう思う。
中学生からの付き合いだが、俺は涙が落ち込んでいるところを見たことがない。
そんなことをボッーと考えていると、後ろからトントンと肩を叩かれる。
「一つ質問があるんだけどさ」
「ん?何?」
涙が俺に質問するのは珍しい。周りの目があるのか、小声で話してくる。
「ボスさんには会えた?」
(?!)
なぜそれを、と言いそうになり、慌てて口を塞ぐ。
そんな俺を見て、涙は少し笑う。
「動揺するってことは会えたんだな」
涙はそれで話は終わりと言うかのように、一時間目の準備を始める。




