第九十二章・キール&デス
俺たちが外に出ると国民が逃げていた。
色んな家が燃えていた。
「くっ!どうなってるんだ!?」
俺の目の前では白樺の木で作られた家が燃えている。
マリエスがこの光景を見て呟く。
「広範囲の火の魔法――すごい…」
敵を褒めてどうする!
「それにしても、術者はどこにいるんだい?」
俺も周りを見るが、術者はどこにもいない。
逃げている人の中には広場で見た親子連れや俺にアヴィスの像の話をしたおばあさんもいる。
「とりあえず今は避難誘導だ。涙・テリー・マリエス」
「それなら僕も手伝いましょうか?」
そこにシルクハットを被った金髪碧眼の少年が現れる。
「助かる。君は――」
「この人がキールですよ。Aランクマスターの!」
マリエスの言葉に俺は警戒心を高める。
「どういうつもりだ?」
「こうするんですよ、ファイア!」
キールの手の平から現れた火の玉が逃げている親子連れを狙う。
俺は走って、
「やらせるか、ウォーター!」
水で火の玉を消す。
「大物が釣れた、今だ姉さん!」
虚空から(俺に向かって)ナイフが飛んでくる。
「危ない、悠!」
それを涙が「レクイエム」の刀身で飛ばす。
カンッと音が鳴ってどこかへ飛んでいく。
「大丈夫か、悠!」
「問題ない」
俺たちがキールのほうを見ると、
「ハローエブリワン。僕の名前はキール・ワトソン。今宵――『孤独の破壊者』である村木悠を倒しに来たものです。そしてこちらは僕の姉さん。名前は言えませんが、コードネームはデス」
「……」
デスはキールの横に綺麗に着地する。
「Aランクマスターのキールに四天王のデスか。厄介な相手だな」
「涙、知ってるのか?」
「あいつらは大竜丸のギルド――『ドラグノフ』に所属してるからな。嫌でも知ってるさ。あまり言いたくなかったんだけどな…」
だから秘密にしてたのか…。
「あいつらが出てきたってことは一筋縄にいかない。どうする悠、避難する人たちのほうは…」
「避難する人たちはテリーとマリアスに頼む。二人とも頼んだぞ!」
「分かったよ」
「分かりました」
二人は避難する人たちのところへ向かう。
それを黙って見過ごしたキールとデスは、
「僕が村木悠をやる。姉さんは『氷の魔剣士』――滝沢涙をお願い」
「分かったわ、キール。あなたも無理しないでね」
「大げさだよ姉さん。僕と姉さんで負けるはずがない!」
キールはシルクハットを押さえながら――「テレボート!」と言って、俺と一緒に転移した。




