第十章・元の世界へ!
タンタンタン、とかかとを三回鳴らす音が聞こえる。元の世界へと帰る音だ。
(やっと元の世界へ帰れる。あっ、部活あるじゃん)
そんなことを思っていると、既に飛ばされた前の場所に戻っている。
飛鳥は呆れた顔をしているが、そんなことは関係ない。早く部活へ行かなければ。
そう思い、部室までの道を歩こうとした俺の制服の襟首を飛鳥が掴む。
抵抗する俺だったが、飛鳥に引き戻される。
「大丈夫ですよ、急がなくても」
そう言って、飛鳥は俺に腕時計を見せてくる。
”うわっ、高そうな時計”と最初はそう思ったが、まさか人様に腕時計を見せびらかしたいわけでもないだろう。
(ん?もしかして……)
俺は飛鳥の腕時計の時刻を確認する。その腕時計に表示されている時刻は午後四時三十八分。ここまで歩いた時間を引いて考えても、一分も経っていない。
(デ○モンか!)
俺はそんなツッコミを入れるが、
(けど、デジタルからリアルに戻ったわけじゃないし…)
考えてもせんなきことだとは分かっているが、どうしても考えてしまう。
「何を考えているんです?」
その考えている俺へ、飛鳥が話しかけてくる。
「いや、時間の流れが違うと思ってな」
「そうですね。向こうの世界では一時間以上経っていたとしても、こっちの世界では三十秒も経ってないんですものね」
その通りだ。それが不思議でならない。
「まるでログ・ホ○イズンみたいだな」
「ログ・ホ○イズン?」
「いや分からないんならいいんだ」
アニメのことはアニメオタクにしか分からないことがある。アニメが始まった時代からそうなのだろう。
「とりあえず、俺はそろそろ部活があるから行くわ」
そう言って、部室への道を今度こそ歩こうとするが、
「だからちょっと待ってください」
と飛鳥に手をつかまれる。
「何?」
口には出さないが、ちょっとウザイ。
「これ渡しておきます」
そう言って、俺に渡したのは一枚のカード。
(まるでギフトカードみたいだ)
そのカードは薄く輝いている。
「忙しそうなので、詳細は省きますが、これは向こうの世界とこっちの世界を繋ぐカードです。
これを持って、かかとを三回鳴らすと、いつでも向こうへ行けます。失くさないようにしてください」
そう言い切ると、飛鳥は通学カバンを取りに、元来た道を戻るのだった。




