8話〜たどり着く〜
前田君の拳は以前よりもまして僕の身体を殴りつけていた。
それでも僕は何もしなかった。
いや、何も出来なかった。
なぜなら普通の人ならこんな時に何をするのか僕は知らなかったから。
でも日に日に多くなっていく身体の傷に妹と母が心配していたので、早めにこの事を解決したいとは思っている。
方法はまだ見つかっていないが。
こんな遠回しに遠回しにとひたすらに時間と体力を消費していたある日の事。
顔の痣が目立ち始めクラスメイトにまで心配され始めたその日、前田君のいつもの三人の気になる噂が流れてきた。
情報提供者は担任の高木大輔先生だった。
ちょうど課題のプリントを職員室に提出しに行った時に教えてもらった。
「桜花、ちょっと時間いいか?」
突然だったが、この後の予定もなく後は帰るだけだったので先生の話を聞くことにした。
「うちのクラスで噂になってることなんだが。クラスに問題児が三人いるだろ?」
クラスメイト全員の名前を覚えているわけではないけど多分、話からして前田敦君と石川秀樹君と渡辺茂君のことかな?
僕は別に問題児とは思ってないけど色々な所で彼らはそう言われていたからわかった。
「その三人が今度は街で問題になってる不良達とやり合おうとしてるらしいんだが何か知らないか?桜花もいつもその三人と一緒にいるだろ?」
ここで僕は一つ疑問に思うことが出来た。
「僕はその噂について今知ったので何もお答え出来ません」
先生は「そうかぁ〜」と少し残念な顔をした。
そんな顔をする先生に一つ質問をすることにした。
「先生、その問題児三人とまで呼ばれている人たちと僕も一緒にいたのに何故僕は問題児扱いされないのですか?」
「それは......」
「もしかして先生は僕が彼らにいつもされていることをご存知な上で学校に黙っているのですか?それは面倒だから、それとも彼らが怖いからですか?」
図星なのかはわからないけど急に先生は黙った。
これ以上先生を責めても仕方がないので「僕の勝手な妄想でしたらすみません」とだけ言って職員室を後にした。
話を戻すと前田君達は勝てるかどうかの戦いをしようとしているみたい。
三人の性格上力任せに行くと思うからその不良達の隠れ家的なものを見つけたらすぐに行ってしまうのだろう。
あと先生の言い方だと彼らはもうその隠れ家を見つけているらしいから前田君達は今現在その隠れ家に行っているということになる。
暗くなった窓の外を見て僕は走った。
といってもその場所を知らないのでは仕方がない。
誰か知っている人はいないかな?
学校を出て街の中をひたすら走っていた。
すると暗い細い道でうちの学校の女子生徒が大柄の男二人に囲まれて困っていた。
「やーねぇ、またあの不良達が女の子を囲んでるわ。怖いわー」
僕と同じく、この現場を見た女性はそうつぶやいた。
確かに僕は急いでいるけど、場所がわからな......ん?
てことは男二人は噂の不良達?
だったらこの二人にどこが隠れ家なのか聞けばいいのか。
ということで女子生徒を助けることにした。
「あのぉ、困ってるみたいですよ?」
男達は声をかけてきた僕を見るなり不機嫌になった。
「あ?テメェ何見てんだ、あぁ?痛い思いしたくなけりゃさっさとどっかいけ!」
「そうだ!邪魔すんな!」
話し合いで二対一となると確実に不利な状況。
でも僕は一歩も後ろに下がる気は無い。
血の気の多い男達なのでいつ拳が飛んでくるのかわからないから、先に女子生徒を逃がすことにした。
「そこの女の子、一旦逃げてもらえるかな?」
その言葉を聞いた彼女は一目散に僕の横を通って逃げていった。
「あ?何してくれてんだよ、俺らの獲物だったのによぉ。分かってんのか?あぁ?」
「彼女はあなた方の獲物ではありませんよ。強いて言うならあなた方が僕の......獲物?」
なんと言えばしっかりくるのか分からなかったため男の言葉を借りてみる。
このことで更に苛立った男達からとりあえずの拳が飛んできた。
けど自然と避けられる。
拳が遅く感じる。
僕は動体視力がいいのか。
その後、二人掛かりで僕を何度も殴ろうとしたが全て避けた。
「あんまり僕も問題行動とか起こしたくないんだけど...」
と言ったもののつい出てしまった右拳。
その拳は綺麗に男のみぞおちにめり込んだ。
あっ。
男は黙って後退りすると地面に膝をつきお腹を抑えていた。
やり過ぎてしまった。
加減をしたつもりだったのだけど。
ちなみにもう一人はと言うとその殴られた男を心配して駆け寄っていた。
ということで二人に隠れ家の場所を訊くとすんなりと教えてくれた。
場所はここから近くの森の入り口付近に建てられている廃墟になった館だった。
そこに向かって走り出す。
後ろからお礼の言葉が聞こえた気がした。
こんにちは、深沼バルキです。
五ヶ月ぶりの投稿です。
なんか...すいません。
ここまで読んでくださりありがとうございます。