プロローグ
初めて書いてみました・・・下手な文章ですが、読んでもらえたらうれしいです。
一応、ラストまで考えているので、長くなりますが、自己満足で頑張ります!
このまま目が覚めなければ、どんなに楽だろう。
小鳥の声と暖かい日の光で、目を覚ます。あたりを見渡して、ようやくここが自分の部屋だと気づくまでに2秒。そして、昨日の記憶を思い出すのに2秒。5秒目には、今日の講義の時間にすでに遅刻していることに慌て出す、いつもの日常である。
新学期になり、希望した大学には入れなかったものの、興味のあった心理学の勉強ができる大学へ滑り込み、毎日が充実しているように思えていた。あいかわらず、一般教養の講義は、つまらないことばかりだが、今日の朝一番の講義だけは外せない。
ようやく座席に滑り込んだら、あきれたような顔で、「またかよ」と聞き慣れた声が聞こえた。やれ、この幼なじみは、大学生にもなってまだそんなしゃべり方しかできないようだ。心の中でそう思いながら、息を整えて静かにまつ。
「さて、今日の講義は、どんな話をしようか?」
マーティーン教授の講義は、いつもこの言葉から始まる。もちろん、講義内容を決めていないわけではない。学生の興味のある話題から、見事に講義内容までつなげることができるのだ。
「誰か、希望はあるかな?」
お決まりのセリフが続き、私は、満を持して、手を振り上げた。おそらく、この流れには“サクラ”がいるだろうと考えたからである。
「では、雁賀君」
「えっ・・・」
私の思惑が見事に外れたことよりも、私の名前を覚えていることに驚きを隠せなかった。この講義を聞いている学生の数は、有に二百人を超えている。出席だってとることはない。そのような講義で、入ったばかりの学生を把握しているものなのか・・・?
「はっはい・・。あ、あの、先生は、」
「ロボットですか?」
大きな講義室に響き渡る学生の笑い声で、私の顔はみるみる赤らみ、隣の幼なじみは、知り合いとばれないように、顔をひそめていた。
「あっ、なんでもないです・・」
と座ろうとする私にいつもと変わらない、やさしい声が聞こえた。
「そうですね。私はロボットかもしれません」
まんまとバカにされただけだと、さらに顔面の温度が上がるのを感じた後に、この機械的な教授は、続けざまに、単調に続けた。
「雁賀君、とてもよい質問をありがとう。私は、いままでに9回も同じことを言われたことがあります。そして君が十人目、こうなると、周りからは、私はロボットのように機械的に、動いているように視えているのでしょう。」
そう言いながら、ロボットの真似をしながら、更に教授は続けた。
「しかし、私は、人間です。少なくとも私は、そう信じている。けれども、小さい頃からロボットに憧れはありました。もしかすると、ひょっとすると・・・。幼い頃に夢見たロボットとの共通点をみつけることができるかもしれない。今日は、そんな話をしましょう。」
赤い顔の温度が下がり始めたころ、羞恥を感じていた心は、羨望へと変化していた。医療工学の進歩は、めざましくそれこそ「ロボット」といえるような、義手や義足の開発、脳波を利用した目を使わない視覚システムの導入と、人とロボットとの境界について領域の話かと思えば、ロボットと人間との境界、絶対に超えられない壁として存在する「恐怖の谷」について、用意してあったというプレゼン資料もさることながら、この機械的な教授の“引き出し”の多さに圧倒されていた。
「すごい・・・・・」
「さて、こんな話もあって・・・さらに研究が進めば、人間の脳だってSDカードに収まる時代が来るかもしれませんね。おっと少し時間をすぎそうなので、これは、また来週にしましょう。では、また会う時まで。」
次々と、教室をでていく学生を横目に、私は、呆然と座ったままであった。どのような感情かさえもわからない。ただ、大きく、教授の姿がそこにあり、まるで、近くにいるかのように思えた。そしてそれは、現実であった。
「雁賀君、初めて質問してくれる1回生は、君だと信じていたよ。そして、君の質問もわかっていたのだよ。よい質問をありがとう。」
「なんで、僕の名前を知っているのですか?」
不可解な言葉の羅列に反して、私の精神は安定していた。
「私の講義を受ける学生の名前ぐらいは、全員把握できるものだよ、教授というロボットはね。よければ、研究室に遊びにくるといい。歓迎するよ。」
呆然とする私を背に、高級な革靴の音が遠ざかる。
この時は、まだ、その後起こりえる未来を知る由もなく、この機械的で奇怪な教授が、「悪魔」であることを知ることになるとは思いもよらなかった。