表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄昏の日常  作者: 灯些季
86/89

85.両手に花

舞台が終わって控え室に戻るとすぐに戸がノックされた。


誰だ?

開けると久々に会う先輩が笑顔で立ってた。


「総一先輩っ来てくれたんですねっ」

「舞台見てたよ。とても良かったよ。」

「ありがとうございます。」


先輩が大きい花束を渡してくれた。

俺には立派過ぎるくらいだけど。


「俺に?」

「ああ。だけど柾美の方が綺麗で花束が負けてしまったね。」

「あの〜〜そういうセリフは女性に言うものですよ。」


男の俺に言ってもなぁ。


「俺は君に告白したんだよ?もっと褒めたいくらいだけど?」

「あっっ……」


そうだ。この人は俺なんかを………

て、照れてきた。


「あらあらさすが私の子ね。やるじゃない!」


そうだ母さんいたじゃないか。

総一先輩は挨拶してるけど、母さん嬉しそうだ。


先輩の話しによれば舞台はかなり好評らしい。


正直、踊り終わったときは去年とかみたいに拍手が全然聞こえてこなかったから失敗したかとヒヤヒヤしてたけどな。



そのあと浩二と晃も来て少し不穏な雰囲気になりかけたけど

母さんの言葉で2人とも控え室を出て行った。


ん?

同性だし出てく必要なかったんじゃない?


「柾美愛されてるわねぇ母さんどっち選んでも応援するから安心なさい」

「はぁ?何を?」

「細かい事気にしないのっじゃあ浴衣の着付けしてあげる。」

「それくらい出来るよ」

「いいからっ」


母さんが出した浴衣の柄って女物っぽくない?


「晃手伝いお願いね」

「了解!」


晃が蒸しタオルを渡してくれる。


衣装を脱いで身体を拭くだけなんだけど汗かいたから有り難い。


「柾美、両腕伸ばしてくれる?」

「え?うん」


状況イマイチわからない俺の腕に浴衣が通されて後ろから羽交い締めされた。


「晃?何してるの?」

「覚悟なさい柾美っ」

「は?」


呆気にとられてるうちに俺の身体にどう見ても女物の浴衣が素早く着付けられてく。


色がピンクとか花柄とか有り得ないだろ!


「母さんっっ」

「今日1日娘でいてもらう約束よ?ちゃんと‘はい’って言ったじゃないの」

「いやいやあれは違うだろっ」

「違くないっなんなら私と力勝負で決める?」

「今体力消耗してるけど!?」

「1日ぐらいいいじゃんっ親孝行だよっ」


晃まで。

けど母さんと今勝負しても勝てる気がしないし。


「わかったよ……」


あっという間に浴衣を着せられて鏡の前の椅子に座らされた。


メイク直しか。

もう同級生にバレなきゃいいよ!


「ふふっ総一君と浩二君が惚れ直すくらい可愛くしてあげる!」

「はぁ〜〜好きにすれば?」


控え室を出ると浩二と総一先輩が何か話してる姿が見えた。

ケンカじゃないみたい。


「お待たせーー」


2人とも驚いた顔してる……ってなんで顔反らすんだ!

そこまで見るに耐えないのかっ!?


ああ、冷静に考えれば女装だもんな。

確かに気持ち悪いか。


「やっぱ俺着替えてくるよ。」

「「いい!そのままで充分だっっ!!」」


ハモるとは。

きっと母さんへの気遣いと祭りだからちょっとはハメ外していいって思ってくれたんだな。


「じゃ、見苦しいけど遠慮なくこのままでいるよ。」


そんなワケで右側に浩二で左側に総一先輩。

俺ってば両手に花じゃん。学園だったら実現しなそうだよな。


何故2人して俺と手を繋ぐ?

迷子防止……ってことにしとくか。


それにしても俺たち注目されてるよな。

俺はともかく2人とも美形だからか?


ま、総一先輩が学園よりも楽しそうだしいいか。

浩二はあまり機嫌良くなさそうだなぁ。


「柾美、焼きそば食べる?」

「いいですねっ食べましょう。」

「柾美、チョコバナナ買ってきたから食え。体力消費しただろ?」

「いつの間に?ありがとうっ」

「林檎飴もあげる」

「あ、ありがとうございます」

「かき氷抹茶食べれるよな?」

「渋い選択だな!」


律儀にツッコミ入れてるけどなんで2人してひっきりなしに食べ物奢ってるんだ!



「ちょっとまて!俺の餌付けはいいから自分の分買おうよ!ていうかさっきから奢られてばっかだし俺にも奢らせろ!」

「お前は今日まで頑張ったんだから甘えろっ」

「そんな可愛い格好の子に奢られたら紳士として恥だよ!」


いやもう、どう返すべきだよ?


「じゃああれだけ奢らせて!俺の良心痛むからっ」


別に何が何でも奢り返したいってわけじゃないんだけど、何度も買って貰うなんて落ち着かない。


近くに見えた屋台で2人分のたこ焼きを買って戻ってくれば

渋々といった顔で受け取られた。


「柾美の分は?」

「あれだけ食べたんだからいいですよ。」

「一個だけ食べない?」


先輩が俺の口の前にたこ焼きを差し出してきた。


これ拒否権ないですよね?

先輩の笑顔見ればわかるなぁ。


「じゃあいただきます」


うん。うまい。

先輩熱そうに食べてるなぁ。

お茶いるかな?


「お茶飲みます?あ、俺の飲みかけで悪いですけど」

「ありがとういただくよ」


美味しそうに飲むなぁ。

たこ焼きって喉かわくもんな。


「おまっ何やってんだ!」

「だって水分必要そうだし。浩二も飲むか?」

「いらねぇっ!そんな簡単に自分の物渡すな!」

「え?知り合いだし、病気じゃないからいいじゃん。」

「良くねぇ!このっ無自覚!」


なんで怒るんだよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ