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黄昏の日常  作者: 灯些季
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77.抱き枕

どうして親父か母さんじゃないんだ。


だって爺ちゃん……まてよ、浩二なら喜ぶかもしれない。


あぁ……見慣れた風景じゃん。

2ヶ月振りだよな。


駅に降りたのは俺と浩二だけ。

田舎の、いわゆる寂しい駅。

駅前は普通に民家だ。


そして爺ちゃんの姿はどこにも見えない。

ってことはあそこか。


「浩二こっち」


駅の横の喫煙所に行くと気持ちよさそうに煙草をふかしてる。


「爺ちゃん、帰ってきたよ。」

「おおっ柾美かっ元気そうだなっっ」

「爺ちゃんこそっまた日焼けしただろっ」


俺と大して背が変わらない爺ちゃんは小麦色の肌で元気に笑う。


髪も見事に白髪だし俺たち兄弟には優しい普通の老人に見えるが、

現役の頃は泣く子も黙るくらいかなり荒ぶってたらしい。


「親父から聞いてると思うけど友達で、俺の修行の相棒の上原浩二だ。」

「はじめまして。しばらくお世話になります。」

「あの上原のせがれか。うむ!なかなか良い力を持ってるな!」


浩二驚いてる。

爺ちゃんのそういうの見抜く目は凄いんだよな。


「じゃ、行くぞ」

「待って!俺たち後ろに乗るんだよね?」

「ああ。荷物なら儂の隣に乗せてやるから安心しろ。」


まったく!

なんで人を助手席に乗せないんだよ!

あ−−でも浩二を座らせても会話困りそうだし、

俺が座れば浩二が1人ぼっちで後ろは悪いし。


そんなわけで

俺と浩二は爺ちゃんの車の後ろ、つまり農業用トラックの後ろに乗ってるんだ。

屋根がないから風は涼しいし、日差しが容赦なく照りつけるけど問題はそこじゃなくて


揺れる―――!!

少しはゆっくり走ろうよ!田舎道はデコボコしてるんだよ!


だから座席の後ろにしがみつく俺。

隣の浩二はといえば


「これ全部爺さんが作ったのか!?すげぇ!」


畑で取れたての野菜に感動してるよ。


俺はそれどころじゃない。

別に車が苦手じゃないんだ。爺ちゃんのトラックの後ろが嫌なんだ!!


「車苦手か?」

「そうじゃなくてこの車がっひいっっ」


情けないけどしがみつくしか出来ない。


「大丈夫か?」


あ、浩二が片手で抱きしめてきたけど安心するかも。


「家着くまでこのままでいさせて」

「ああ」


両手で浩二に抱きついてみたら落ち着いてきた。

抱き枕にさせてもらおう。


「おい、着いたぞ」

「え?ああ……ありがとう。」


俺は少し眠ってしまったみたいだ。

うん、いい抱き枕だ。


身体を起こすと懐かしい玄関が見える。

ってなんで爺ちゃんこっち見てるんだ?


「なっなに?」

「ずいぶん仲良いな」

「だって爺ちゃんの車苦手だ!現実逃避だよっ」

「そうじゃなくてお前がそこまで頼れる相手みつけられたんだな。」

「え?う、うん」


そういえば友達と一緒にいる姿なんて見せた事なかったな。


ボストンバックを持って玄関に向かう。


実家はいたって普通の家だ。


ただ現代にしてはちょっと古、いや和風ってくらいかな?


爺ちゃんが使ってる離れの座敷とか、

陰陽専門の書物や道具がある蔵とか少し変わった物はあるけど普通の家なんだ。


「すげぇ……映画とかドラマでさつ、いや、立派な旧家だな。」


殺人事件の舞台にぴったりだとか思っただろ!

口に出さなかっただけマシなんだろうか?


「普通の家だろ?」

「普通かよ……」


だからっそんなに珍しがる家じゃないってば。


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