72.好きな人
寮の部屋に戻った俺は、正樹に生徒会室での事を話した。
「すごいっっ生徒会に!?」
「うん。驚くよな?あと園田先輩が族に入ってるのも意外だよなぁ。」
「あれ、知らなかった?有名だよ。」
「マジで!?」
「紫苑って結構大きいしあの外見で総長だからね」
はい?
ま、まて、それってチームで一番喧嘩強いってこと!?
「信じられない!!」
「本当だよっ」
人は見掛けによらないなぁ……
「あ、あとさ……総一先輩に告白された」
「なんて返したの!?あと浩二君は知ってる?」
「こんな事言えるわけないじゃん。正樹だけだよ話したの。返事は返せなかったよ。」
「そうなんだ。柾美は生徒会長の事どう思ってるの?」
どう……か。
「先輩として親しみは持ってるけどそれ以上はないなぁ」
「じゃあ浩二君は?」
「へ?頼りになる相棒だけどなんで浩二?」
「気にしないで。なんとなくだよ。」
正樹が1人でブツブツ言ってるけどほっとく方が良いかな。
「2人とも可哀相〜〜。でもしょうがないよね」
「何がだよ?そういう正樹は好きな人いるの?」
「えっっ」
あ、赤くなった。
いるんだ。
「俺の知ってる人?」
「うん。近くにいるよ」
近く?
「もしかして浩二?」
けっこう気が合うし、楽しそうだもんな。
「そんなわけないじゃん」
「違うの?じゃあ誠?」
「別に僕達のクラス限定じゃないよ」
他のクラスはあまりわからないなぁ……
「まさか成次?」
いつも喧嘩してるから違うかな?
「そっそうだよっ」
「へっっ!?」
思わず変な声出しちゃたじゃないか!マジか!
「僕、あいつに酷いこと言っちゃって……だから普通に話すの怖いんだ。」
「前は仲良かったんだよな?」
「中等部の最初の頃の話しだよ。」
正樹の話しによれば
一学期の最初に正樹は先輩方に絡まれていた。
たしかに容姿は可愛いし背も低いし、喧嘩とか強そうに見えないし、いいカモだろうな。
そこを助けたのが成次。
それからクラスは違うのに何かと気にかけてくれて、一緒にいる事も増えたらしい。
「僕のそのときのルームメイトに成次の事が好きだって聞かされたんだ」
放課後の教室で雑談してたはずがそんな話しになって、
成次とは友達以上なのか聞かれた。
正樹は言われて初めて成次の事が友達以上に好きだと気付いた。
「僕は口に出せばその気持ちを認めてしまう事になる気がしたんだ。
同性だし、あいつに嫌われたくないし、ルームメイトとも友達でいたかったから全力で否定してたよ。」
つきまとわれてウンザリしてるから早く誰かと付き合ってくれれば良いって思ってるって。
で、それを成次に聞かれたと。
成次はかなり怒って暫く顔を合わせる事がなくなった。
数日後にルームメイトと成次は付き合って、
正樹は引っ込みがつかないまま現在に至ると。
「バカだよね。もっと素直になってれば良かったのに。」
「それで会うたびに喧嘩?」
「………うん」
俺は正樹のそばに行くと頭を撫でる。
「な、なに?」
「これ浩二にやってもらうと気持ちが落ち着くんだ。辛い事話させて悪かったな。」
嗚咽が聞こえてきた。
「僕、僕っ酷い事してるのにっまだあいつの事好きなんだ……」
「うん。」
泣き出してしまうと止まらなくなったみたいだ。
暫く頭撫でてよう。
そういえば……
成次ってこの前正樹が浩二と付き合ってるんじゃないかって掴みかかったよな?
あれ、それって……




