50.大胆?
放課後、俺は誠と図書室まで向かった。
あれ……保?
机に何冊か本持ってきてて真剣に読んでるよ。
「あいつ本好きなのか……」
「新聞部だし情報収集じゃねぇ?」
どんな本読んでるんだ?
気になって誠と覗きこんだけど……意外だな。
だって怪談話読んでるんだぞ。
机に積まれた本のタイトルも妖怪物やらファンタジー物やら。
これは情報収集じゃないだろ。
「神宮寺って柾美と気が合うかもなぁ〜」
うーん…
誠の中で俺はファンタジー好きに確定されたらしいな。
「柾美ちゃん!?いるなら声掛けてよぉ〜」
「悪い。真剣だったからつい。」
「じゃあな柾美。後で正樹が迎えに来るから。」
「ああ、ありがとう。」
誠も正樹も予定あるのに悪いな。
「あのさぁ光から聞いたけどとんだ災難だったんだね。」
「ああ。」
「まっ思ったより遅かったかもねぇ」
「どういう意味だよ」
「浩二ちゃんがセフレ全員と手ぇ切った辺りに何かあるって思ってたんだけどねぇ〜」
そうだ、あいつはモテるんだ。
「それよりさぁこういうのの事とか詳しく知りたいから僕の部室行かない?」
それって妖怪とか……いや違うな。
陰陽の事か。
保なら夜の校舎に行く事ないし、世話になってるし……いいかな?
「この間の取材の後みたいな事しない?」
「あればじょ〜だんに決まってるじゃんっ」
「どうだか」
その辺はイマイチ信用していいか分からないな。
「何かしようとしたら、俺が何持ってるかわかってるよな?」
「僕だって命は惜しいから大丈夫だって〜」
明るく言われても説得力ないけど?
まぁ、ここだと他の人もいるし。
俺は読書部を早退して
保と新聞部の部室に向かう。
途中で職員室に寄って新聞部の部室の鍵を借りてきた。
「個人情報とか扱ってるから?」
「そういう事〜。」
保はさっそく借りて来た本を近くの机に置くと
椅子に座る。
俺も座ろう。
そうだ、正樹に新聞部の部室に行くってメール送っておかなきゃ。
「それ全部読むのか?」
「もちろんだよ〜」
ファンタジー系の分厚い本5冊くらいって保は結構読書家か?
「なんで?」
「んーー柾美ちゃんの剣みてかっこいいなぁって思ったんだっ!」
なるほど。
けど、俺たちと一般に知られてる陰陽師っていうのは違う事は説明しなきゃな。
「あのさ、俺の一族の陰陽術って少し特殊なんだ。なんていうか……少し魔法みたいな物だと思った方がわかり易いかも。」
本来は陰陽師ってのは呪術者というよりも
占い師としての方が目立ってるっていうべき?
「昔からの言い方をすれば、物事の吉凶を探ってそれに対して術をおこなって
良くない事を防ぐのが基本だよ。
そこから魔物とか悪霊退治に繋がるわけなんだけど。」
「ねぇっ柾美ちゃんて式神呼び出せる!?」
詳しくない?
あ、調べたんだ。
「契約してる式神はいるんだ。けど今は修行中ってワケだから親父に取り上げられてるけどな。」
「うわーー残念。」
見たかったのか。
実際にあいつがいればずいぶん助かるけどな。
「じゃあっ剣出せるのなんで?もしかして浩二ちゃんも出来る!?」
目キラキラしてるなぁ〜
こういう好きなんだ。
嫌ってなくて良かった。
「それは一族のオリジナルで、重要な事だから詳しく言えないんだ。悪い。」
「そっかぁ…」
「浩二のは後で本人に見せてもらえば?あいつだけの武器だし」
「へぇ―――ん?あれ?それって……」
何考え込んでる?
そんな難しい事言ったかな?
「やっだぁ――っ柾美ちゃんてば大胆!!」
「は?」
なぜ嬉しそうに!?
「だってだって浩二ちゃんを婿養子決定!って宣言したじゃん!!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!?」
どう解釈したらそうなるんだ!!
「そこに行き着いた理由教えろっ!」
「だって柾美ちゃん達の武器は一族のトップシークレットでしょ?」
「ああ」
「それを浩二ちゃんは知ってるし使ってるでしょ?」
「そうだけど?」
それがどうしてっっ
ん?まさか……
「それって浩二ちゃんは柾美ちゃんの一族って言ってるようなものじゃん!」
やっぱり。
「あのさ浩二は例外なんだ。俺って見習いだから弱いんだ。だからそのサポートみたいなもん?
あいつ戦えるし、頼りになるんだ。」
保、そんなにガッカリする事か?
「ふーん。ま……可能性はあるよねぇ。」
なんの可能性だ!
気になるけど聞くの怖いから追求は止めとこう。
「けどさぁ浩二ちゃん変わったんだ。顔つきが優しくなったし、雰囲気が柔らかくなってきたんだよ。」
「へぇ…」
やっぱり優しくなってきたの気のせいじゃなかったんだ。
「僕ねぇ、浩二ちゃんが変わってきたのは柾美ちゃんのおかげだと思ってるんだ。
だから柾美ちゃんの特集してみたくなったんだ。」
武田先輩との試合もあったばかりだし良いタイミングだったかもな。




