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HART/BEAT Experience -T-  作者: 赤川
第4章
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4章 第1話 「前回までのお話と今回の裏」



 叢瀬勇御むらせゆうご、14歳。都心に近い関東某所の学校に通う義務教育過程中の学生だ。

 176センチと高身長。体重も85キロと耳を疑うような数字だが、その大半が筋肉である。しかし、格闘技を嗜む為にその体型は一見細身でしなやか。そして非常に柔軟。

 限りなく人類の理想形に近い体型は衣服でも隠しきれるものではなく、ある世界的な彫刻家にモデルを頼まれるも、ギリシャ語が分からなかったので曖昧に断っていたりする。その巨匠は現在、強烈な印象を持つモデルを逃がしてしまったことで、己の向かうべき道を見失ってしまっているが。

 顔立ちは女性的な面があり、平たく言うと『精悍な顔つきをした美少年』だ。だが鋭く切れる目付きと時折見せる狂暴な微笑が少女性を打ち消していた。

 サラサラで腰の強い直毛は適当に遊ばせているが、後ろの髪だけ伸ばして刀の柄巻き紙で縛ってある。

 姉がやらせている事で、何かしら意味があるのだとか言っていたが、細かい事を弟は聞かなかった。


 中国地方、島根の出身。実家はかなり歴史のある家で、姉と勇御が使う武術(技術)は家の流儀が基礎となっている。

 両親は物心ついた時にはおらず、家族は生家の祖父と姉、それにたくさんの兄弟弟子きょうだいでしと家のお手伝いさん(?)達。

 12歳の頃に姉に会いにアメリカへと渡り、そこで巻き込まれた事件をきっかけに現在はある民間警備会社でアルバイトをしている。

 この歳にして実戦を多くこなし、宇宙人との遭遇や戦闘に遭っても物怖じしないのはこのような背景があってのことだった。


 遠い星からの逃亡者、ディナとイファと出会い4日目。

 敵から逃げて地球に落ちて来たディナとイファを助ける為に敵性宇宙人〝ニーコッド〟と交戦。乗って来た船が爆発した彼女達を保護した。

 翌日、言語の違いからコミュニケーションに四苦八苦するする勇御のもとに警視庁公安部外事3課の捜査官、長尾圭滋ながおけいじ相麻夏生そうまなつおが接触してくる。

 それは、謎の墜落物(ディナのUFO)の情報を求めて国内で非合法活動を行う外国人を取り締まる為だったが、ディナを追って来たニーコッドの船の攻撃に巻き込まれた事で宇宙人の実在を知る。

 攻撃して来たニーコッドの船は勇御の攻撃により撃墜。勇御を迎撃に来た機動兵器も撃破され、イファを手に掛けようとしたニーコッドの翠の髪の女は拘束される。その後、長尾達に引き渡された。

 家を破壊された勇御は居候ともども路頭に迷―――わず、一先ず姉の家に身を寄せる。姉のレクチャーによってディナ、イファとのコミュニケーションを可能にした勇御は彼女達の来歴と現在の境遇を聞く。

 それは太陽系以外の恒星系と、そこにある惑星の文明の話。彼女達を襲った災厄の話だ。


 ディナ達の住んでいた〝ウル恒星系連合〟は、その最終意思決定を始めとしてあらゆるものの制御を中央システムと呼べる物に託していた。

 しかし、そのシステムは暴走。連合を守る防衛力として人工的に創られた種族、〝ニーコッド〟もまたシステムの一部として暴走を開始。連合の惑星を攻撃した。

 戦いをニーコッドに依存し、長すぎる時間を戦争から遠ざかっていた人々に抗う術は無かった。

 生き残った人々、その一部は船団を組み宇宙に脱出したが、システムとニーコッドが彼らを追う。

 その脱出船団から逸れた小さな少女とその庇護者が抱える秘密は、勇御はまだ知り得なかった。


                          ◇


 この4日、地球の天体マニア達は興奮の最中にあった。

 今や数多の地球人が宇宙へ目を向け、通信ネットワークは個人にまで浸透し、情報は世界規模で共有される。

 未確認飛行物体、つまり〝UFO〟が地球に飛来して来たという事実は、かなり確度の高い情報として知れ渡っていた。


 『エイリアン襲来キター!』

 『mjk!? いや落ちつけ!』

 『日本の××市に墜落。政府は隠してるけど』

 『また陰謀説かよ』

 『痛い子湧きだした。カタセさーん来てくれー!』

 『国際ステーション落ちたんじゃないの?』

 『アメリカはとっくに知ってて隠してましたが』

 『というか米がエイリアンと組んで世界制服』

 『>世界制服w』

 『実はもうエイリアンに支配されている。買え』

 『サングラスで見破るんだ!』


 ある天文系ネット掲示版より抜粋。

 もう天体だかSFだかサスペンスだかワケがわからない事になっているが、ここ数日一連の事件がエイリアンの襲来説に信憑性を帯びさせていた。

 3機のUFOの飛来。現在の技術レベルを遥かに超えるロボット兵器の、白昼の大規模破壊行為。映像は〝OureTube〟(通称OT)のような動画投稿サイトに上げられ、既に事実の隠蔽は不可能だった。

 そして、人々が更に空へ目を向け始めたその時、新たな星々が地球に接近しつつあるのを目撃する事は、恐ろしく簡単だった。


                             ◇


 軍対軍の、国対国の戦争の構図が小規模に、限定的に、局地的なモノに代わり―――つまり対テロへと変わり―――、戦闘における要求はよりコンパクトで高い戦闘能力を持つ者、つまり兵士単位での強化、という発想へ還っていった。

 それも既存の〝戦車〟等ではなく、よりスムーズに人間の活動環境下での行動を可能にする、兵士の装備としての兵器。分かりやすく言うと、戦闘用の装甲外骨格エクソスケルトンやパワードアーマーのような兵器が求められたのだ。

 要求される仕様としては、人間の活動領域での運用を考えると最低でも5メートルはある〝歩行戦車〟では大きすぎる為、最大でも全高2メートルから3メートルが望ましく、最低でも5.56ミリ鉄鋼ライフル弾に対する耐久力は有し、かつ人間の持つ柔軟性と運動性を可能な限り妨げない事が求められる。

 敵地への潜入任務や戦闘車両を投入出来ない戦場地形における特殊部隊用装備として、第二次大戦の頃に提唱されて以来、大国は次の世代の兵器として開発を進めている。

 アメリカ合衆国でも当然その研究開発は行われている。世界屈指の技術力と国防予算はここでも惜しみ無く投入されていた。

 SOCOM(アメリカ特殊作戦軍)主導、DARPA(国防高等研究計画局)開発、ボーグマン(巨大複合企業)生産の『強化外骨格による機械化歩兵システムの開発』計画。

 それは、古典アメリカコミックのタイトルから取り、


 通称、『アイアンマン計画』と呼ばれた。


「その性質を考えれば特殊作戦軍以外に選択肢もあるまい。中国は既に人数を投入しているとの情報も上がって来ている」

 〝丘〟の上より下界へ、地味な背広の男は電話口に淡々と語る。

 相手は中将。特殊作戦軍の司令官だ。

『既にエイリアンの兵器は回収したと聞いたが?』

「今こちらに向かっている。が、それを他国が奪取に動いている動きがある」

 時刻は夜。

 広大な庭を照らす灯りが窓から差し込み、男のシルエットを浮き彫りにする。

 中肉中背で特徴の無い男だ。重厚なデスクには電話があるというのに、携帯を使って電話している。

「他国にあの兵器を渡すことは阻止しなければならない。在日米軍を動かしてでも、全て手に入れるのだ。分かるだろう、デッカード」

 『デッカード』、そう呼ばれた男は僅かに沈黙する。

 背広の声に抑揚は無い。だが僅かに、事態に焦れている色が科白に滲んでいた。

『言いたい事はわかる。だが大統領は強硬な手段には―――――』

「CIAがどこぞと折衝しているらしいが……相手が日本なら事後承諾で良い。後からでもどうとでもなる。今は時間が何よりも大事だ。結果を出して致命的な事態を回避すれば大統領は何も言わんよ」

 部屋の外は少々騒がしい。人間が急ぎ足で行き交う音だ。切迫した空気が部屋の中まで伝わってくる。

「デッカード、中将……これは単に国益の問題ではない。事によっては国家の存亡にもかかわる事態だ。私は大統領と国民を、アメリカを守らねばならないのだよ。それは君も同じだろう。それに大統領も、国家の安全にかかわる情報は速やかに、あらゆる手を使って収集するようにと―――――」

『……わかった』

 電話口からの迷いは僅かに。だが実直な男の返答だ。

 腹が決まったからにはその動きは速やかだろう。背広の男は既に目的のモノは手に入ったと確信する。

「最優先で作戦グループを送る」

 2日前に墜落した未確認飛行物体。そして先日、日本に現れた異星人の兵器と思しきロボット。更にもう一つ。

 CIAのレポートにあった異星人らしき人物。

 何としても、我が偉大なる合衆国が手に入れなければならない。

 その時、分厚い木製の扉を叩く音が。

「長官、大統領がお呼びです。執務室までおこしください」

「ああ、分かった」

 窓の外では軍用のヘリが引っ切り無しに出入りしている。

 中肉中背、背広の男は暗闇から赤絨毯の廊下へと出て行った。



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