表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

理不尽

作者: 玲瓏

「ぐっ…」


強い足蹴りをくらって俺は裏路地の隅に追いやられた。黒ずくめの“奴”は、俺に銃口を向ける。ガチャンと音がして、弾が装填された。きっと、俺は無様な顔を晒していたことだろう。立つことすらままならなくて、後退ろうとするもすぐに後ろの壁が俺を拒んだ。


“奴”は、一歩近づいた。そして、おもむろに喋りだした。


「猿と人間は、何が違う?」

低く、一言で人を圧するようなその声で喋り始めたのはそんなこと。俺を撃つ事はその問いよりもつまらないものなのであろうか。だがしかし、私はその男が与える精神的な圧迫感に声も出せない状態だった。

男は話を続ける。


「猿はな、好奇心より恐怖が勝るからだ。文明の利器とも言えるこの銃を猿に持たせたらどうなるだろうか。人間の真似事で発泡するまでは出来ても、すぐに驚き逃げるだろう。」


「そ…れが…どうした…」

俺がやっと絞りだした声も無視して“奴”は話を続ける。

「そうすると、人は、どうだろうか。人は、俺らは、銃を撃つこと自体を、怖いとは思わない。怖がるのは、これで人の命が失われるからだ」

「…」


「これを発明した時、初めて撃ったとき、そいつはこれを怖いと、思っただろうか?思ってないだろうな。だからこそ、今の世に残っている。むしろ、これによって起こることへの“好奇心”の方が強かっただろうな。」


黒いサングラスの奥では、まだ何を考えているのかよく分からない。


「自分が死ぬかもしれない状況に陥った際の自己防衛本能を、たかが好奇心が上回るなんて、笑えるだろう?」


笑うでもなく、怒るでもなく、ただ淡々と話す。


「まぁ、要は好奇心が恐怖心を上回るってことは、」


銃身を撫でていた人差し指の動きがピタリと止み、その指は引金に乗せられた。



「その時点で、死ぬ覚悟は出来てるってこと、だよな」



乾いた破裂音が響いて、腹に鋭い痛みが走った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 「好奇心は猫をも殺す」ということでしょうか。”俺”(主人公)は黒ずくめの”奴”の秘密を知ってしまったから消された、というシチュエーションにも思えます。
2012/01/28 00:59 退会済み
管理
[一言] 黒ずくめの男のセリフ回しがとても良かったです。 本当に悪役らしい、意思があってここにいると言っているようなそんなセリフでした。 しかし、これだけでは男の意図しているものが何なのかがイマイチ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ